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カレーはいつでも

毎年、インドで長逗留した後に帰国すると、「しばらくはカレーとか食べたくないんじゃないですか?」という意味のことを割とよく言われる。たいていは「そうですね〜、しばらくはノーサンキューですね(笑)」みたいな感じで軽く返すのだが、実のところ、インドに長い間いた後でも、僕はカレー味の食べ物が嫌になるということはない。

帰国直後は、インドではほぼ食べられない牛肉とか、ラーメンとか、しばらくご無沙汰していたものを優先して食べたりはするが、カレーはカレーで目の前に出されたら、まったく抵抗感なく食べられる。日本のカレー屋さんのカレーは、本場仕様のものから個性的なものまで、日本人向けにきめ細かくアレンジされている場合が多いので、現地の食堂で食べる味とはかなり違うと思うし。

家にいる時、おひるに冷凍ごはんをレンチンして、無印良品のレトルトカレーをかけて食べることが割と多いのだが、気がつくと3日連続くらいでおひるにカレーを食べ続けていることもある。そんなわけで、カレーはいつでも、ウェルカムである。

人並みに戻る

帰国して、3週間が経過。インドにいる間に4キロ減った体重は、2キロほど回復した。

食事の方は、帰国直後のようにやたらめったら肉を食いまくる(笑)という状況よりはだいぶ落ち着いて、普通の飲み食いで十分足りるようになった。家での自重筋トレも以前より少し軽めの負荷で再開して、無理のない範囲で続けている。各部の筋力はもうひと息、以前の水準にまで近づけたいが、体重や脂肪のつき方は、「動ける」状態を維持しつつ普通に過ごすなら、今くらいがベストなのだろうとも思う。筋肉だけ、あと500グラムほど上乗せしたい感じ。

帰国直後に一度会った知人と先週また会ったのだが、「この間よりもだいぶ元に戻りましたね!」と言われた。「帰国された直後は、頰から首筋のあたりとか、肉が削げ落ちちゃってた感じで、正直かなり引きました」とも言われた(苦笑)。4キロ減という数値以上に、身体の維持に本来必要な分の脂肪や筋肉もごっそり持って行かれてた、ということなのだろう。

ともあれ、身体はだいぶ人並みに戻ってきた。来週か再来週あたり、焼肉とか食べに行きたいな。

失われた季節感覚

インドから戻ってきて以来、周囲の他の人から「最近暖かくなってきましたね〜」とか「今日は冬に逆戻りしたみたいに寒いですね!」とか話しかけられても、うまく答えられずにいる。暖かいんだか寒いんだか、自分でも正直よくわからないのだ。

1月中旬から2月中旬までは、厳寒期のラダック。最低気温はマイナス20℃、最高気温でも氷点下。そこからデリーに移動すると、一年で一番寒い時期とはいえ、最高気温が26℃。そこからさらに暑いアムリトサルを経由してダラムサラに移動すると、まさかの吹雪に見舞われ(苦笑)、シムラーでもみぞれ混じりの冷たい雨。で、またデリーに戻ってくると、上はTシャツ1枚で過ごせるほどの陽気。行く先々の天気や気温が乱高下すぎて、季節感覚が結構ポンコツになってしまっているのだと思う。

まあ、風邪とか引いてるわけではないので問題ないといえばそれまでだが、いろいろまともな状態に戻れるのは、いつになることやら。

本づくりの縁

一昨日、昨日と、「LADAKH LADAKH」の色校戻し作業。昨年夏のラダック取材から始まったこの本の制作も、どうにか校了にまで漕ぎ着けた。肩の荷が下りてほっとしたのと同時に、僕自身にとって一番の愉しみである本づくりの作業が終わってしまったので、ちょっと寂しくもある。

今回の本づくりでは、いつにも増して、大勢の方々に協力していただいた。以前別の仕事を通じてご縁のあった方もいれば、まったく別のきっかけで今回新たにご縁のできた方もいる。一冊の本を作る過程で、こんなにもたくさんの縁が繋がり合うというのは、考えてみると不思議なことだ。

僕という人間は基本的にまったく社交的ではなくて、人付き合いもどちらかというと苦手なのだけれど、本づくりを通じて繋がっていく縁で、いつも大勢の人々に支えてもらっているのだと、あらためて気付く。少しでも良い本を、一冊でも多く作って、そうした縁に報いていかなければ、と思う。

「Toilet Ek Prem Katha」

デリーから成田までのエアインディアの機内で観た3本目のインド映画は「Toilet Ek Prem Katha」。アクシャイ・クマール主演、ヒロインはブーミ・ペードネーカル。インドという国ならではの、トイレにまつわる問題を扱った作品だ。

父や弟と一緒に自転車店を経営しているケーシャヴは、ふとしたことで知り合った隣町に住む女性、ジャヤに一目惚れ。やがて両想いになった二人は、互いの家族を説得して結婚にまで漕ぎ着ける。しかし、ジャヤが嫁いだケーシャヴの家には、「不浄だから」という宗教的な理由で、トイレがない。村の中のどの家にもない。村の女性たちは、用を足す時に使う水を入れた金属製の壺を持って早朝に集まり、村はずれの茂みまで歩いて行って用を足すのだという。驚きあきれるジャヤのために、ケーシャヴはあの手この手で何とか解決しようとするが……。

観終わってまず思ったのは、さすがにちょっと冗長すぎるのでは、ということ。前半にケーシャヴとジャヤが出会って恋に落ちて結婚するまでのくだりもかなり長かったし、トイレ問題が勃発してからケーシャヴがあれこれ策を労するドタバタも、やっぱり長い。インドでは特に田舎でトイレの普及がいまだに進んでいないという社会問題に関して、作中でもいろいろ考えさせられる場面が多かったのだが、そこにもっと凝縮した形でまとめた方がよかったのでは、と思った。

この作品の後に作られた「Padman」は、同じくアクシャイ・クマール主演で、これもインド特有の社会問題である女性用生理用品をテーマに扱った作品だが、両者を比較すると、やはり「Toilet Ek Prem Katha」の方はちょっと残念な出来かな、と思う。