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カレー肉談義

インドから帰国して、10日ほど経った。当初予定していた作業以外に、新規の仕事の打診をすでにいくつかいただいていて、ありがたいことだなあと思う。進行スケジュール的には、だんだん余裕がなくなってきたけれど(苦笑)。

というわけで、今日は午後から夕方まで、依頼された原稿の一つを書いていた。夕食は、昨日のうちに買っておいた食材を使って、ビーフカレーを煮てみた。牛肉は概して高いので自炊ではあまり使わないのだが、昨日は安いカレー・シチュー用の牛肉が手に入ったので。作ってみると、牛肉、やっぱりうまい。牛肉だけのことはある(笑)。

とはいえ、自炊のカレーに使う肉の種類で一番気に入っているのは、カレー・シチュー用の豚バラ肉。煮込んでも柔らかく仕上がるし、脂の旨味がたっぷりルーにしみ出るような気がする。コスパもいいし。自炊ではなく、外食で食べるカレーだと、欧風カレーならやっぱり牛肉。インドカレーならマトン派だ。マトンカレーのおいしいインド料理店は、ほぼ間違いなく当たりだと思う。

……とりとめのないカレー肉談義をつらつらと書いてしまった。仕事に戻ろう。

旅先で飲むコーラの味

僕は普段、缶コーヒーとかを除くと、コーラなどの清涼飲料水の類はほとんど飲まない。ところが、海外に旅に出かけると、結構頻繁に口にする。これには一応、僕なりの理由がある。

ある程度の長い期間、異国での旅を続けていて、一日三食、ローカルな食事ばかり続けていると、何だかんだで、だんだん疲れてくる。たとえば、初めて訪れた土地の食堂であまりよくわからないまま料理を注文して、想像していたのと全然違う材料や味の料理が出てくると、結構ヘコむ。そういうハプニングもまあ旅の一部なのだが、いつも毎食ごとにそんなチャレンジをくりかえしていると、それなりにストレスもたまってくる。

でも、食事の時に何か一つでも自分の知っている味のものがあると、それに関しては想定内の味ということで、ストレスなく、ほっとした気持で味わうことができる。それはたとえばコーラだったり、大きな街ならファストフードチェーンの味だったりするだろうか。いずれにしても、食事の時に「チャレンジしなくていい、想定内の味のものを口にできる安心感」というのは、長旅の中でメンタルを安定させる上で、結構重要なことだと思うのだ。少なくとも僕にとっては。

別に、ちゃんとした日本食とかでなくても全然構わないのだ。自分の知っている想定内の味をちょっとでも口にできれば、それで十分。1杯のコーラで気持をリフレッシュさせて、再び現地の味にチャレンジしていく。そんな食事のくりかえしを、僕は自分の旅の中で続けているように思う。

土壇場で荒行

昨日は朝の4時半起きで、電車と新幹線を乗り継いで、福島へ。現地にある大学で3人の方に取材。梅雨時の割に天気がよくて助かったが、なにしろ遠いので(苦笑)、なかなか疲れる。

それでもどうにか首尾よく取材を終え、在来線の最寄り駅までダッシュして飛び乗ったはいいものの、福島駅で乗り継ごうとした新幹線は満席で、結局そこから1時間待ち。新幹線の中で食べようと考えていた駅弁は駅構内では売り切れ。トホホな気持ちですきっ腹を抱えつつ東京駅まで戻り、八重洲のエリックサウスでミールスを瞬殺(笑)。

そして今日は、起きてすぐに都議選の期日前投票に行き、それから昨日取材した分の原稿を3本、ガリガリと一気に書き上げる。普段ここまで急いで書くことはあまりないのだが、何しろ、あさってから2カ月インドだし、明日はいくつか予定もあるので、今日書かないわけにはいかない。机の前でよれよれになりつつ、「そもそも何でこんなタイミングで取材引き受けちゃったんだろ?」と、今さらながら自問自答。

出発前の土壇場での荒行。やれやれである。

清澄白河で深川めし

先週の土曜は、夜から渋谷で「タレンタイム」を観る前に、清澄白河のあたりを少し散歩した。

清澄白河の駅で降りたのは、たぶん初めてだと思う。まったく土地勘もイメージもなかったのだが、背の高い建物があまりなくて、空が広々と見えるなあ、というのが第一印象。昭和の頃の雰囲気を残す街並には、どこかしらモダンな香りも漂っている。少し前にオープンしたブルーボトルコーヒーは、清澄白河の名を世間に知らしめるきっかけになったが、それ以外にも感じのいいコーヒー豆の焙煎屋さんが、この街にはあちこちにある。ベーカリー、洋菓子店、ワイナリー、ビアバー。古い建物をうまく改装して造られた、新しめの店も結構多い。

映画を観る前の腹ごしらえに、たまたま通りがかった深川釜匠という店に入って、深川めしを食べる。深川めしには、アサリやネギを煮込んだものの汁かけごはんタイプのものと、アサリの炊き込みごはんタイプのものがあるそうだが、この日食べたのは炊き込みごはんタイプ。「うそっ?!」というくらい大量のアサリが混ぜ込まれている。ボリュームたっぷりだけど、あっさりしていて、とてもうまかった。卓上に無造作に置かれているサランラップの箱が謎だったのだが、聞くと、深川めしを食べ切れなかった人が、余った分をラップに包んで持ち帰れるようにしているそうだ。

知らない街を歩くのは、やっぱり面白い。今度来る時は、汁かけごはんタイプの深川めしも試してみたいな。

人の物差し、自分の物差し

昔、飲み会の席で「一番好きなラーメンの店は?」という話題になった時、ある人が都心の高級中華料理店を挙げたので、その理由を聞くと、「あの有名俳優のナントカさんの行きつけの店だから」という感じの答えが返ってきた。

その人は、ナントカさんのおすすめコメントをテレビか雑誌で見て、店に足を運んだのかもしれない。きっかけとしては別に悪くないとは思う。ただ、その時の答えはどちらかというと、自分がその高級中華料理店を好きな理由を、ナントカさんの物差しを拝借することで立派に見せようとしているように感じられた。虎の威を借る狐、みたいに。

似たようなことは、僕も、世の中の人も、多かれ少なかれ、やっているのかもしれない。何かを選ぶ時に、人の物差しを参考にする。自信のなさを、人の物差しで補強する。でも、そればっかりでは、つまらなくないだろうか。自分自身の物差しで、好きなもの、嫌いなもの、正しいこと、間違ってること、一つひとつ決めていく方が、絶対に楽しいと思う。最初から確固たる物差しを自分の中に持っている人などいないのだから、試行錯誤しながら少しずつ精度を上げて、その過程を楽しんでいけばいいのに。

友人のラダック人のツェワンさんは、近所の主婦たちが料理を習いに来るほどの料理上手で、特にカレーは絶品なのだが、「好きな料理は?」と聞いたら、「スガキヤの坦々麺は、うまいですよね。あれは、うまい」としみじみ言っていた。それでいいんだと思う。