かれこれ十数年前、とある雑誌の編集部で一緒に働いていた友人のライター、木村早苗さんに、最近の自分についていろいろとインタビューしていただきました。収録は吉祥寺にあるスコティッシュバー、ウィグタウンにて。
ここ最近受けたインタビュー取材の中では、抜群に良いクオリティの原稿でした。よかったらご一読ください。
かれこれ十数年前、とある雑誌の編集部で一緒に働いていた友人のライター、木村早苗さんに、最近の自分についていろいろとインタビューしていただきました。収録は吉祥寺にあるスコティッシュバー、ウィグタウンにて。
ここ最近受けたインタビュー取材の中では、抜群に良いクオリティの原稿でした。よかったらご一読ください。
最近は、自宅に籠って書き仕事をしていることが多い。先日、来年の出版が決まった自分の本の原稿ではなく、その前に片付けなくてはならない、インド関係の本の原稿。僕一人で書くわけではないので、著作と呼べる類の本ではないけれど。
この本の原稿には、写真やら地図やら、いろんなパーツが各ページに挿入されるので、1ページずつレイアウトラフを描いて、それぞれのパーツをどこに入れるのかを決め、それによって本文の文字数の上限がどのくらいになるのかを計算する。で、計算した文字数に合わせて文章を書く。編集と執筆の両方を同時進行で進めているような書き方。こういうのをエディトリアル・ライティングと呼ぶのだろうか。
こういう作業をしてると人に話すと、たいてい「よくそんな細かいことやりますねえ」みたいに呆れられるのだが、僕は地味で単調で細かい作業が好きなのだ(笑)。資料を突き合わせて情報を照合しながら、決めておいた文字数に合わせつつ、現地の事情をちゃんと理解している人間が情報を咀嚼して書いている、とわかってもらえるような文章に仕上げていく。読者には、制作の裏で僕が何を考えながら書いているか伝わらないとは思うけど、それでもやっぱり、書くのは、編集するのは、愉しい。本づくりを仕事に選んで、よかったなあと思う。
二人暮らしの晩飯の支度を主に担当するようになって、自炊の頻度が上がったからか、最近、料理の手際が少し良くなった、ような気がしている。
「ような気がしている」というのは、別に包丁さばきやフライパンさばきが上達したわけではないと思うから。ただ、飯炊き、主菜、副菜、汁物など、それぞれの準備をある程度同時進行で進めて、最終的に全部の料理をほぼ同時に食卓に並べられるようにはなった。並行して合間に洗い物も片付けたりして。
そんなことを考えていたら、「これって、雑誌の編集作業とほぼ同じじゃね?」ということにはたと気づいた。特集や連載など、いろんな担当ページの制作の進行管理をして、校了日までにぴしっと全ページ揃える、みたいな。それだ。完全に一致。少なくとも僕の中では(笑)。
編集者という仕事は、特に何かのスペシャリストになることが必須というわけではない。餅は餅屋というか、文章はライターに、写真はカメラマンに、イラストはイラストレーターに、デザインはデザイナーにお任せすればいい。ただ、最初にどういう青写真を描いて、必要な仕事を誰にどう割り振り、それぞれの作業をどうコントロールして、最終的な仕上がり目標にどこまで近づけられるか。それは編集者の果たすべき仕事なのだろうと思う。
話を戻すと、料理の手際が良くなったとか、自分はやっぱりまだまだそんなこと全然言えるレベルじゃない、ってことです。
本には、佇まいのようなものがある、と思う。
ぱっと見た時。手に取って、表紙を開き、ページをめくった時。全体のサイズ感。持った時の重さ。紙の質感。インクの色味。文字組。余白。写真。イラスト。作り手の細かな気配りの一つひとつが、匂い立つような気配を本にまとわせていく。良い本かどうかは、そうした佇まいでだいたい感じ取れる、と僕は思っている。大手出版社の本かどうかとか、贅沢な仕様の本かどうかとかは、僕の言う本の佇まいとはまったく関係ない。
自分が仕事で本を作る時も、良い本としての佇まいが現れているといいなあ、といつも願わずにはいられない。もちろん、それは読者の方々に判断してもらうしかないのだが、少なくとも、雑に作った本だとは絶対に思われないように、文章の一字々々、写真の一枚々々に、丁寧に気持を込めながら作るように心がけている。まだまだ未熟者ではあるけれど。
昨日受け取った「LADAKH LADAKH」の見本誌を眺めながら、そんなことを考えている。また一冊、本を作ることができた。
一昨日、昨日と、「LADAKH LADAKH」の色校戻し作業。昨年夏のラダック取材から始まったこの本の制作も、どうにか校了にまで漕ぎ着けた。肩の荷が下りてほっとしたのと同時に、僕自身にとって一番の愉しみである本づくりの作業が終わってしまったので、ちょっと寂しくもある。
今回の本づくりでは、いつにも増して、大勢の方々に協力していただいた。以前別の仕事を通じてご縁のあった方もいれば、まったく別のきっかけで今回新たにご縁のできた方もいる。一冊の本を作る過程で、こんなにもたくさんの縁が繋がり合うというのは、考えてみると不思議なことだ。
僕という人間は基本的にまったく社交的ではなくて、人付き合いもどちらかというと苦手なのだけれど、本づくりを通じて繋がっていく縁で、いつも大勢の人々に支えてもらっているのだと、あらためて気付く。少しでも良い本を、一冊でも多く作って、そうした縁に報いていかなければ、と思う。