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『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』

冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ
文・写真:山本高樹
価格:本体1800円+税
発行:雷鳥社
A5変形判288ページ(カラー77ページ)
ISBN978-4-8441-3765-8
配本:2020年4月下旬

書き下ろしの旅行記としては約11年ぶりに、新刊を上梓します。インド北部、ヒマラヤの西外れに位置するチベット文化圏、ザンスカール地方を、真冬に旅した時の記録です。

凍結した川の上に現れる幻の道チャダルを辿り、雪崩の頻発する豪雪地帯ルンナク渓谷を抜け、最深部にある僧院、プクタル・ゴンパで真冬に催されるグストル祭を取材しました。約4週間に及ぶ旅の中で、起こった出来事、出会った人々、一つひとつのエピソードを克明に綴っています。

この本に書き記した内容は、もしかすると、あと10年もしないうちに、ザンスカールからすっかり失われてしまうかもしれません。それでも、いや、だからこそ、この本を作っておきたい、と僕は強く思いました。この本が、一人でも多くの読者の方のもとに届くことを願っています。

校正という仕事

昨日は午前中から出版社で打ち合わせ。今作っている本の初校に、外部の校正者の方がチェックを入れてくれたゲラを受け取った。

校正者の方が赤ボールペンで指摘してくれた明らかな誤字脱字や文法上の間違いは、ほんの数える程度だった。ただ、それ以外に鉛筆書きで書き込んでくれていた「明らかな間違いではないけれど、ここはこうする選択肢もあるかも」「ここはあえてこうしているんでしょうが、一応念のため」といった内容の指摘の数々が結構多かった。

書き手にとって、鉛筆書きでのそうした提案や指摘、確認をしてもらえることは、ものすごく助かる。書き手一人のものの見方や考え方に囚われず、客観的にその文章の正確さを判断することができるからだ。編集者もそういう役割の一端を担うことはあるが、彼らは主に内容の方向性や良し悪しを判断する立場なので、文章そのものを微に入り細に入りチェックし、日本語としてのクオリティを上げるという作業では、プロの校正者にはかなわない。

自分の書いた文章が、こんな風にしてさまざまな人の手を経て、一冊の本として仕上がっていくのは、本当に、著者冥利に尽きる。

「地球の歩き方インド 2020〜2021」

新型肺炎流行の影響で、日本からインドへの入国が不可能になったばかりというめっちゃ泣けるタイミングですが(苦笑)、「地球の歩き方インド 2020〜2021」が来週末頃から発売されます。

この2020〜2021年版では、制作スタッフの交替を含めて大幅なリニューアルが行われていて、僕は今回から、取材・撮影・執筆・編集スタッフとして参画しています。具体的には、ザンスカールについての巻頭グラビア記事6ページのほか、アムリトサル、シムラー、ダラムサラ、マナリ、キナウル、スピティ、ラダックといった地域のページを担当。写真はもちろん自前ですし、文章も担当範囲内はすべてゼロから書き直して、地図やページレイアウトも再構成しています。

特にラダックやスピティに関しては、拙著「ラダック ザンスカール スピティ[増補改訂版]」ほどの緻密さはないですが、他のガイドブックには負けない情報密度になっていると自負しています。ラダックへのパッケージツアーに持っていく程度の用途であれば、これで十分かと。

この最新版を持って、ぜひインドへ!と言えないご時世なのが、ほんと、何だかなあという感じですが(苦笑)、入国がまた可能になったらすぐ行くぞ!と予習に励みたい方は、お手元に一冊キープしておいていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

本づくり、佳境

午後、出版社で打ち合わせ。編集部内で目を通してもらった初校を受け取る。ところどころに付箋の挟まった分厚い紙の束を手にすると、よっしゃ、という気分になる。

表紙のカバーデザインもほぼ決まったし(とても格好いいデザインにしていただいた)、地図などの制作もおおむね順調だ。今回の本づくりも、いよいよ佳境にさしかかってきた。最後の最後まで油断は禁物だが、あと2カ月後くらいには、この本が現実世界に存在するものとして、書店の店頭に並ぶことになる。それを想像すると、何だか子供のようにわくわくしてくる。

今までにもそれなりの数の本を作ってきたけれど、こんな子供のような気分になるのは、ひさしぶりだ。「ラダックの風息」の時以来だろうか。それだけ、今度の本は、僕自身にとっても大切な本なのだと思う。

重箱の隅をつつく

毎日、ひたすら、本の原稿の推敲作業に、没頭している。

内容的な面での見直しは一応終わっていて、今週からは、より細かい部分に焦点を合わせた見直しに取り組んでいる。具体的には、草稿のテキストファイルを画面左に置き、中央に新しいファイルのウインドウを開いて、最初から一文字ずつ、草稿を見ながら打ち直している。表記がばらつきがちな単語は、画面右に置いたもう一つのファイルのウインドウに表記をメモしていく。11万字をゼロから打ち直すので、手間は恐ろしくかかるのだが、自分的には、一番いいやり方だと思っている。

ゼロからテキストを打ち直していると、草稿を目で読み返していただけでは気付かなかった、細かい修正点に行き当たる。たとえば、空港で飛行機から滑走路に下りる場面で、草稿では「タラップを降りて、機外に出る」と書いていたのだが、よく考えると、タラップを降りる前に、すでにドアから機外には出ているわけだ。「機外に出て、タラップを降りる」とした方が、より矛盾のない描写になる。こういう、文字通り重箱の隅をつつくような細かい修正点を洗い出して、納得がいくまで直していく。それが、僕の推敲のやり方だ。

ひたすら重箱の隅をつつきまくって、原稿の精度を上げていく。本を一冊書くのも、なかなか、しんどい。