Tag: Editing

いい編集者、ダメな編集者

今日は朝から緊急事態発生で、バタバタしっぱなし。どうにかメドは立ったが、これが不測の事態というやつか‥‥。

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このブログで時々書いている、編集者という仕事についての話。僕もそこそこキャリアが長いので、今までいろんなタイプの編集者の方と仕事をしてきたが、周囲が認める優秀な編集者と、そうでない編集者との間には、どんな差があるのだろう、と折に触れて考えていた。クリエイティブのセンスの優劣というのは、その人の得意分野や読者の好みにも左右されるから、簡単には比べられない。でも、そうではないもっと基本的な部分で、両者の差を分ける決定的な違いがある、と僕は思う。

いい編集者は、スタッフに仕事を「やっていただく」と考える。ダメな編集者は、スタッフに仕事を「やらせる」と考える。

実際、一事が万事、このスタンスの違いがすべてではないだろうか。編集者はあくまで「黒子」であって、間違っても「黒幕」みたいな気分になってはいけないのだ。でなければ、さまざまな業種のスタッフを結束させて、いい本を作れるわけがない。少なくとも僕は、「こいつにやらせとけ」とふんぞり返っているような編集者のために、心を込めて仕事をしようとは思わない。

最近、僕が携わっている仕事で、こういう違いを如実に感じる人々と関わる機会があったので、書いてみた次第。

誠実な本

終日、部屋で仕事。書籍の再校ゲラを突き合わせ、チェックを重ねていく。

こんなことを書いたら関係者全員にボコられそうだけど(笑)、今作っているこの本は、僕が当初思い描いていたよりも、ずっといい本に仕上がりつつあるような気がする。それは僕の能力でも何でもなく、ひとえに今回力を貸してくださっているスタッフの方々のおかげだ。僕一人では、限界値はたかが知れている。

まったく異なる個性や能力を持つ人たちでも、同じビジョンの目標をしっかりと共有して、それぞれの長所を持ち寄って力を合わせると、こういう化学反応が起きるのだろうか。今回作っているのは、別に読んだ人が涙を流して感動するような類の本ではなく、ある意味コテコテの実用書なのだが、本を手に取ってくれた人を裏切らない誠実さは、しっかりと込められているのではないかと思う。

さて、あともう一息。

完成間近

昨日のエントリーでも書いた書籍の仕事は、今がまさに佳境というか、追い込み時。再校のチェックをしている真っ最中で、今週末に念校をチェックして、来週明けに戻せば、無事に校了ということになる‥‥はず。

デザイナーさんから送られてきたカバーデザインの画像を眺めたりしていると、いよいよだな〜、と気分が高揚してくる。思えば長い道程だった‥‥(遠い目)。いわゆるコテコテの実用書なのだが、本の前半部分は自分で原稿を書いてもいるので、思い入れもひとしおだ。

校了後に見本誌が手元に届けば、完成したという喜びをより一層実感できるはず‥‥なのだが、たぶん、その頃にはもう、僕は日本にいない(苦笑)。去年とまったく同じパターンだなあ‥‥。ま、仕方ないか。

「料理人」としての編集者

ここのところ寝不足な日が続いていたので、昨日の夜は、10時間以上も寝た。でも、いまだに頭がしゃっきりしない。脳が、乾いたスポンジみたいにぱさぱさしている感じ。

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編集という仕事は、料理人の仕事に近いところがあるような気がする。自分の目利きで選びとった食材を、腕によりをかけ、心を込めて調理して、おいしい料理を読者の方にお出しする。自分で執筆や撮影までするなら、それこそ水田に稲を植えるレベルから手がけることになるが、基本的に編集の仕事は、目利きと調理に相当するのではないかと思う。編集者がそうして腕を振るうことができるのは、いい食材を丹精込めて育ててくれる、各分野のスタッフがいてくれてこそだ。

「これでおいしい料理を作ってください!」と、野菜や肉や魚を提供してもらえるなら、そりゃあ燃える。別に高級食材とかでなくても、持てる力を振り絞って、全力でおいしい料理を作る。でも、たまに‥‥まったく食材の目利きをさせてもらえないまま、「これ、とりあえず食べられるようにしてよ」と、生ゴミが詰まった袋をいきなり手渡されるような目にも遭うのだ。用意すべきものも、目指すべき目標も、根本的に間違っている。そういう依頼をしてくる人はたいてい、それが間違っているとは露ほども思っていない。

「とりあえず食べられればいいもの」を作るような仕事は、僕はやりたくない。

やがて綺麗な花に

朝から晩まで、ゲラチェック。

赤いゲルインキのボールペンを握りしめ、三種類のゲラを突き合わせながら、一枚ずつ、赤字を書き込んでいく。部屋の中は、デスクからソファからコーヒーテーブルに至るまで、そこらじゅうにゲラが散乱。修羅場と呼ぶにふさわしい光景(笑)。

夜中まで粘って、どうにか六割くらいのチェックを終える。目がショボショボして、これ以上は集中力は保たない。今日は、近所の中華料理屋に晩飯を食べに行った他は、ほんと、仕事しかしなかった。

でも、今、がんばって土を耕して種を蒔けば、やがて綺麗な花が咲くはず。まあ、派手でゴージャスな花にはならないだろうけど、きっと綺麗な花が。