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無音の中で

終日、部屋に籠って原稿を書く。連休中はちょっとサボってたから、気合を入れ直さなければならない。

普段、雑誌や本の原稿を書く時は、ラジオをつけたりしているのだが、今回のラダックの本は、原稿を書き進めつつ、編集者の視点でも常にチェックしていく必要があるので、音楽すら聴く余裕がない。何もつけず、無音の中で、時折頭をかきむしりつつ、ひたすらカタカタとキーボードを叩く。こういう時、車通りもほとんどないうちのマンションの立地は、本当に助かる。

キーンコーンカーンコーン、と、武蔵野市が街の中に立てたスピーカーからチャイムが鳴る。もう五時か。テキトーにメシ食った後、第二ラウンドだ。

紙の本の底力

先日から、蔦屋書店やオリオンパピルスといったユニークな棚作りをしている書店を巡っていてつくづく思うのは、紙の本には、まだまだ捨てたものではない底力が眠っているということ。

たとえば、クリスマスプレゼントに相手が好きそうなテーマの本をプレゼントしたらきっと喜ばれるだろうけど、電子書籍のデータをメールで転送したら、何か微妙というか、その喜びはやっぱり紙の本には及ばないと思う(写真やイラスト、装丁が素敵な本ならなおさら)。書店や古書店、図書館などでは、紙の本ならではの「出会い」もある。

確かに、流通やコストを理詰めで考えていけば、電子書籍の方が理にかなっている面もあるし、これから移行が進んでいく部分も少なからずあるだろう。でも僕は、紙の本の底力も信じていたい。自分の本を読んでわざわざ手紙をしたためてくださったり、読んだのがきっかけで実際にラダックまで行ったという方から話を聞いたりするたびに、なおさらそう思う。それは、ブログや電子書籍ではできなかったことだと思うから。

これからも、一冊々々、納得できる本を作る仕事を積み重ねていきたい。

本好きのための本屋さん

昨日の午後、電車に乗って立川へ。普段はあまり降りることのない駅だけど、今回のお目当ては、オリオンパピルスという本屋さん。今年六月にオープンしたばかりの店だが、「北欧、暮らしの道具店」の青木さんがブログで激賞していたので、行ってみようかなと思ったのだ。

オリオン書房といえば、立川界隈では知らぬ者のない書店チェーンで、出版社の書店営業さんも重点的に回るポイントにしているそうだ。他の系列店は割とオーソドックスな街の本屋さんのスタイルだが、オリオンパピルスはそれとはかなり違う。形も色もまちまちな本棚がちょっとした迷路のように配置されていて、それぞれの棚には、版元やシリーズに関係なく、考えに考え抜かれたに違いない取り合わせの本が並べられている。一冊々々の本がどんなものかを熟知した上で、「この本は面白いですよ。そして、こういう本を探しているあなたは、こんな本も好きなんじゃないかな?」と、さりげなくおすすめしてくれているような感じなのだ。

この間行った代官山の蔦屋書店が、建物の設計段階から緻密にコーディネートされている書店だとすれば、オリオンパピルスは、天衣無縫で自由な棚作りが魅力の書店といえるだろうか。本好きな人にはたまらない店だろうし、こんな書店に自分が作った本を置いてもらえるとしたら、本の作り手としてもすごく嬉しい。いい刺激をもらった気がする。

タンスの整理のように

昨日、今日と、本の原稿に取り組んでいるが、なかなかはかどらない。

書く内容とボリュームを細かく検討しているうちに、前に描いたラフがしっくりこなくなって、ラフを描き直しているうちに台割まで調整するはめになったりと、行きつ戻りつしている感じ。対岸も見えない茫洋とした海に、小舟で漕ぎ出したような気分だ。

一冊の本を書く時には、全体を俯瞰で見渡す目と、細部をきっちり決め込んでいく目が同時に必要になる。全体のことばかり気にしていると細部がおろそかになるし、細部にこだわってばかりだと、他の部分との兼ね合いに問題が出やすい。いいたとえが思いつかないのだが‥‥たくさんの服を、タンスに整理していく時のような感覚だろうか。どこに何をしまうのか、タンス全体での配分を考えつつ、一枚々々の服を丁寧に畳んでいく必要もあるし。

まあ、僕の家のタンスは、パンツも靴下も、ぐっちゃぐちゃだけど(笑)。

声とギターの休日

いい天気。電車に乗って都心へ。日曜なのに、まるでラッシュアワーのように人が多く感じる。師走だなあ。

渋谷のカフェ・マメヒコでコーヒーを飲み、代官山の蔦屋書店へ。この店、なかなか面白い。文学やアート、旅、料理といったテーマで緻密なコンテキストを組んだ棚作りがすごく楽しい。何となくぶらついているうちに、思いがけない本と出会えるチャンスがある。

夕方、吉祥寺まで戻ってきて、前から楽しみにしていた、キチムで開催される羊毛とおはなのカフェライブへ。お二人との距離が、ものすごく近い! こういうこぢんまりとした空間で彼らのライブを体験したいとずっと思っていた(でも東京でのカフェライブはすぐにソールドアウトしてしまう‥‥)ので、ようやく念願が叶ったというわけ。

薄暗い店内で始まったライブは、本当に素晴らしかった。声とギターだけで、あんなにも心地いい空間を生み出して、聴く人の心を穏やかにさせるとは‥‥。アンコールで、マイクなしで歌ってくれたクリスマスソング、最高だった。いろいろあった一年の終わりに、いいライブで聴き納めをすることができた。