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軽くはない

仕事上のやりとりで、残念な思いをした。

いろんなややこしい行き違いはあったのだが、残念だったのは、相手の人にとって、こちらの仕事はまるで他人事だという思いが伝わってきたこと。こちらが一生懸命に説明しようとても、そんなことは自分の領域ではないとばかりの冷淡な反応。こちらが善後策を練ろうと努力すればするほど、その冷淡さは際立った。

正直、悲しかった。僕たちが心血を注いできた仕事に対して、それなりに深く関わる立場のはずの人が、他人事としか思っていないという軽い態度を、当たり前のように示しているということが。

そんな風にテキトーに扱われるほど、僕たちの仕事は、軽くはない。

落胆か、後悔か

終日、部屋で仕事。本の再校チェックを進めつつ、メールへの対応など。

先週末の段階で、何人かのメディア関係の知人に、今度の本のプレスリリースを先行してメールでお送りしておいたのだが、その返信がぽんぽん届く。どの人もかなり好意的な反応で、正直とてもほっとする。いくつかの媒体で、本の情報を取り上げてもらえることになりそう。

本そのものがなかなか売れない今の時代、こういう小さな工夫を積み重ねたところで、徒労に終わる可能性も少なからずある。でも、打てる手をすべて打った後で落胆するより、打てる手を打たないまま後悔する方が僕は嫌だ。

考えてみたら、今までずっとこんな感じで、前のめりにずっこけながら生きてきたんだな(苦笑)。

やれることはやる

ワールドカップ開幕の日。打ち合わせの予定があったので、開幕戦より睡眠時間を優先。さすがに五時起きは無理だった。

朝のうちはいい天気だったのに、出かける頃になって急に雷鳴が轟き出し、どしゃ降りの雨が。ぎりぎりまで待つうちに止んでくれたので、濡れずにすんだが、最近の天気、ほんとに油断ならない。

今日の打ち合わせは、今作っている本のプロモーションについてのもの。僕みたいな外部の編集者からそういう場を設けてほしいと申し出るケースはあまりないそうなのだが、やってよかったなと思う。本の内容や狙い、それをどう書店やメディアに伝えていくか、みっちり話し合うことができた。

本づくりの仕事では、本そのものを作るだけでなく、それをできるだけいいやり方で読者に届けることも大切になる。やらなければいけないこと、やろうと思えばやれることは、いくらでもある。だから、やらなきゃ。力を貸してくれた人たちのために。

飛び去っていく時間

終日、部屋で仕事。再校のチェックを進めながら、明日やることになった打ち合わせの手配や、初校が出た表紙回りのデータについてのやりとりなど。ついさっき、おひるにコンビニのサンドイッチを頬張りながらキーボードを叩いてたと思ったのに、今はもう夜半過ぎ。時間が、あっという間に飛び去っていく。

子供の頃、といっても小学校低学年くらいからのぼんやりした記憶しかないけど、その頃の僕には、自分の人生の先に横たわっている時間なんて、ほとんど無限に近いんじゃないかと思えるほど、時が経つのがゆっくりに感じられていた。今は、一日が同じ24時間だなんて信じられない。これから先の十年も、きっとあっという間なんだろうな。

まあ、それまでに、何かの拍子でぱたりと止まってしまうかもしれないけど。それもまた人生。

「才能」がなくても

最近、「才能」とか「素質」などと呼ばれる能力について考えることがある。生まれながらに持ち合わせた、他の人より秀でた能力。確かに、そういう力があるに越したことはないなと思うし、ある人はうらやましいなと思う。

ただ‥‥あまり範囲を広げすぎると収拾がつかなくなるけど、少なくとも僕が属している「本づくり」の世界では、「才能」がなくても、その差を埋め合わせて、ちゃんとした本を作ることはできると思う。それは執筆や編集、写真、イラスト、デザインなど、各職種にも通じる。

世の中でどんな本が読まれているのか、その中で自分が好きなのはどんな本なのかを「観察」すること。なぜそれがいいと思うのか「分析」すること。その上で、自分はどんな本を作りたいのか、その本で何を伝えたいのかを「突き詰める」こと。その本を実現するために必要な人に「協力」してもらうこと。細部まで手を抜かず、丁寧に、徹底的に「作り込む」こと。

忘れてはならないのは、本は、単に売り上げや人気だけを争うために作るものではないということだ。きちんと作られた本には、それぞれ果たすべき役割があって、届けられるべき人がいる。作り手の「才能」を見せつけるために本はあるのではない。作り手が伝えたいと思っている大切なことを伝えるために、本はある。