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iPhoneで本を書く

今取り組んでいる本は、今までとは違う(僕的には)新しい方法で書いている。

原稿を書く時、僕はMacのテキストエディタ(Jedit Ω)を使ってきた。で、今回は、テキストエディタをメインで使いつつ、ある程度書き進めたら、同じ原稿をMacのメモアプリにコピーしている。MacのメモアプリはiCloud経由でiPhoneのメモアプリと同期させているので、外出先でも、iPhoneで原稿の内容を読み返すことができる。

もともとは、本の各章のプロットをメモアプリで共有して、外出時などにプロットの検討と調整をiPhoneでやってみたのがきっかけだった。移動時間やちょっとしたスキマの時間、あるいは何かアイデアを思いついた時などに、ちまちまとプロットをブラッシュアップしていけるのは、思っていた以上に便利だった。なので、原稿本体を書き進める時にも、同じ方法を試してみよう、と考えた次第。

ただ、僕の場合、iPhoneでの作業は、基本的にMacで書いた原稿の推敲と、何かアイデアを思いついた時の追記に限定している。iPhoneのメモアプリでゼロから原稿を書き進めることはしないつもりだ。というのも、iPhoneの画面だと、文章の1行あたりの文字数が少なすぎる。ある程度の文字数、単行本と同じ1行43文字くらいはないと、文章の佇まいが違ってきてしまう気がするのだ。ちょっとした長さの文章ならともかく、単行本に収録するような長文をゼロから書くには、僕の場合、iPhoneでは無理があると思う。

とはいえ、スキマの時間も有効活用できるのは、やっぱり便利だ。脳内のスキマを四六時中みっしり原稿で埋め尽くされそうな気がして、ちょっと怖くもあるけれど(苦笑)。

潜る日々

毎日、本の原稿を書き続けている。

進捗としては、まだ全体の2割に届くかどうかというところ。予想していたよりも、はるかに手強い。この密度感の文章を最後まで書き続けるのかと思うと、慄然とさえしてしまう。今の自分でコントロールできるのか。自分自身が納得のいく形にまで仕上げられるのか。妥協に逃げないでいられるのか。不安でしかない。

毎日、暗い水の中に飛び込んで、潜り続けているような感覚だ。無数の言葉が漂う海。記憶の海。心と感情の海。どこまで潜っても、底が見えない。求めているものを掴み取って、水面に浮かび上がることはできるのか。そこまで息は続くのか。

しんどい日々が続く。

夜更けのジントニック

先週の土曜日、九品仏のD&DEPARTMENTで、新しいグラスを買った。背高で縁の薄い、ビールとかを飲むのによさそうなタンブラーだ。もちろんビールを飲む時にも使おうと思っているが、うちでの主な用途は、ジントニック。先々月に手に入れたアイル・オブ・ハリスジンがたいそう気に入ったので、よりおいしく飲めそうなグラスを探していたという次第。

アイル・オブ・ハリスジンは、スコットランドのハリス島にある蒸溜所で造られているジンで、ボタニカルの一つにシュガーケルプという昆布を使っている。飲んでみると、味がするのだ、昆布の。氷を入れた背高グラスにハリスジンを注ぎ、その2、3倍の量の炭酸水を注ぐ。口に含むと、爽やかなのに、ほのかな甘みと旨みがある。グラスの形や縁の薄さも、ずいぶん味や気分を左右するものだなと思う。

夜更けに背高グラスで飲む、ジントニック。ささやかな愉しみが、一つ増えた。

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ブルース・チャトウィン「ソングライン」(新訳版)読了。いつか文庫化されたら買って旅先で読もう、と思い続けていたのだが、なかなか文庫化されないのでハードカバーを買った。紀行本というより、旅の時間、過去の記憶、古今東西の文献に記された言葉など、無数の断片を虚実ない交ぜに繋ぎ合わせて、人はなぜ旅をするのか、その理由を追い求めた、彼の思索の書だと思う。個人的には、以前読んだ「パタゴニア」の方が、より破天荒で自由自在な印象があって、好みかも。いつの日か「ソングライン」が文庫化されたら買い足して、旅先で暇を持て余した時に、またゆっくり読み耽りたい。

山あり谷ありの中で

どうも、2019年という年は僕にとって、異様に浮き沈みの激しい、山あり谷ありな年になってしまっている。

年の初めに割と(かなり?)厳しめの取材をして、どうにか無事切り抜けたと思ったら印パ武力衝突でその後の取材を邪魔されて。去年から準備していた企画を春先から着々と発表していって、ここからアゲアゲだと思ってたら、そこから二度三度とひっくり返され、最終的に全部徒労に終わって。何か致命的なミスをやらかしただろうか、と自分で自分を省みてみたが、どう考えても何から何まで外的要因に振り回されての結果のようなので(苦笑)、自分ではお手上げというか、やれやれとため息をつくしかない。

それでも、以前相方に言われた「見てる人は、ちゃんと見てる。わかる人には、必ずわかる」という言葉がまったくもってその通りだったことは、身をもってしみじみ実感している。どうにもならない理由でしんどい思いをしていた時、僕なんぞに、どれだけたくさんの方々が優しい言葉をかけてくれたことか。本当に心の底から、ありがたいなあと思う。

そうした方々の思いにほんの少しでも報いるためにも、僕はこれから己の全力を賭して、新しい本に取り組む。必ず良い本にしてみせる。それが僕の役割だ、と思う。

リフレッシュ

今年から請け負うことになって、5月中はその執筆作業にほぼかかりきりだった仕事が、どうにか一区切りついた。まあ、初校が出たらまた別の種類の作業が発生するのだが、とりあえず少しだけ肩の荷が下りた。

午後、渋谷で打ち合わせ。新しい本について。いい本を作りたい、とあらためて思う。それが実現できるかどうかは、これから僕が自分自身をどれだけ追い込めるかにかかっているのだけれど。

打ち合わせの後、ひさしぶりに公園通りのマメヒコに行き、アイスコーヒーとフルーツサンドをいただきながら、しばし読書。読みかけの分厚いハードカバー、ようやく半分くらいまで読めた。その後は、キャットストリートをぷらぷら歩いて原宿まで行き、電車で西荻まで戻る。晩ごはんはフレンチカレースプーンで、Wトロ肉増しフレンチカレー。

何というか、いろいろ解き放たれて、リフレッシュできた気がする。ふう。