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アラスカへ

昨日のエントリーの続きというわけではないのだが、来年の夏の終わり頃、半月ほどアラスカに行くことになった。

もともと、両親が旅仲間の友人夫妻とともにアラスカへの手配旅行を準備していて、すでに予約金は支払っていたそうなのだが、父がいなくなった分の穴をどうするかという話になり、代わりに僕が母と一緒に参加することになった‥‥という次第。

参加にあたっての問題は二つあった。一つは旅費。その手配旅行の参加費用は、ぶっちゃけ僕には到底払えないような金額だったのだが、父の旅費として用意していた分で母が建て替えてくれるというので、どうにか解決。もう一つは、僕が団体行動がからきし苦手なこと(苦笑)。これも、両親の友人夫妻が「高樹さんは、キャンプ・デナリ滞在中は一人で自由に行動してもいいですよ」と提案してくれたので、何とかなりそう。ほんとすみません(笑)。

そう、アラスカでの滞在場所は、キャンプ・デナリ。星野道夫さんの本にも何度となく登場する、シリア・ハンターとジニー・ウッドが建てた伝説のロッジ。今回、こういう巡り合わせでそこを訪れることになったのも、何かの縁なのだろう。アラスカへの最初の一歩としては、悪くない。

単独者の「血」

この間、押し入れの中にあった本や雑誌を処分するために整理していたら、懐かしいものが出てきた。雑誌「Switch」1994年7月号、特集・星野道夫

当時、僕は「Switch」の編集部でアルバイトをしていて、この特集のために収録された、湯川豊さんによる星野道夫さんへのインタビューのテープ起こしを担当した。まだ大学にも在籍していた僕は、編集のイロハもろくに知らず、テープ起こしもほとんど初めてといっていいほどのペーペーだった。かなり長大なインタビューを分担して作業していたので、テープ起こしの内容は断片的にしか憶えていない。

それでも、湯川さんが星野さんと植村直己さんを比較して話をしていた時のくだりは、今でもはっきりと憶えている。植村さんは、生き物の影さえない大氷原の中で、テントを張ってたった一人でいる時、嬉しくて嬉しくて仕方がなかったのだという。誰もいないはるか遠くへ、一人で行く。そのことが「嬉しくて嬉しくて仕方がない」のは、植村さんや星野さんに共通する単独者の「血」のようなものなのではないか、と湯川さんは話していた。

当時の僕には、星野さんや植村さんのそういう「血」の話は、あまりにも自分とかけ離れているように思えて、ちゃんとは理解できなかった。でも、ここ数年、ラダックで積み重ねてきた経験で、その「嬉しくて嬉しくて仕方がない」気持が、少しわかったような気がする。一応、二、三度は山の中で死にかけたし(苦笑)。

遠くへ、一人で。そうでなければ感じられない、自分の弱さ、ちっぽけさ。僕にも、ちょびっとはそういう「血」が流れているのだろうか。