本と映画と

天気予報は雨だったが、一向に降る気配なし。近所の公園では、子供たちがキャッキャと走り回っている。

先週から読んでいたル=グウィンの「ギフト 西のはての年代記 I」読了。強すぎる「ギフト」を持つ者として目を封印された少年の葛藤と成長の物語。自分にできること=ギフトとは何なのか、考えさせられる一冊だった。

夜はApple TVで「オーケストラ!」という映画をレンタルして観た。ロシア・ボリショイ交響楽団のかつての天才指揮者だった男が、ひょんなことから、昔の仲間を集めて偽のボリショイ交響楽団としてパリに乗り込むという映画。ストーリーの背景にはずしりと重いものがあるのだが、映画自体にはたっぷりとユーモアがちりばめられているし、ラストの演奏シーンはまさに圧巻。観終わった後の解放感は爽快そのもの。

一冊の本、一本の映画が、心を解きほぐしてくれた一日。

課せられた不自由の中で

東北関東大震災が起こってから、一週間が過ぎた。被災地の状況は依然として深刻だ。今は一人でも多くの人が救出されて、安全な場所に避難されることを祈るしかない。郵便局で募金くらいしかできない自分が、つくづく歯がゆい。

ラダックのブログでも書いたのだが、今、被災地でない安全な場所で暮らしている人たちができるのは、「課せられた不自由の中で、できるだけいつも通りに生活すること」なのではないかと思う。死者を悼む気持は大切だし、被災者の方々を常に思いやることも忘れてはならない。でも、必要以上に不安にかられて縮こまっていては、心がかちこちにこわばって、そのうちぽきりと折れてしまう。これから被災者の方々を支えていかなければならない側の人たちが、そんな状態では話にならない。

計画停電や交通網の乱れ、買い占め(苦笑)による物資やガソリンの不足などは、被災地に比べればちゃんちゃらおかしいレベルの不自由だ。そうして課せられた不自由の中で、家族や友達と話し合ったり、遊んだり、一緒にごはんを食べたりして、できるだけいつもと同じように暮らす。そうすればきっと、気持がふっと和らいで、他人を支える余裕も出てくる。

僕自身、そうした日常の大切さを、今、あらためて噛みしめている。

お互いさま

昼の停電が始まる時間までに、仕事に一区切りつける。今日も結局停電にならなかったのだが、ま、それはそれでいいか、と駅前に出かけ、理髪店で散髪をし、モリタコーヒーで本を読む。平日の割には人が多い。自宅待機になっている人も多いのだろうか。

僕はここ最近、近所のなじみのお店を一軒ずつ訪ねて回っている。どこのお店でも中に入ると、店員さんはほっとした表情を浮かべ、「いらっしゃいませ!」と笑顔で出迎えてくれる。僕の方も、そういったお店に入るたびに、相当ほっとした表情をしているのではないかと思う。お互いさまだな(笑)。

いつもと同じように、飲み食いしたり、のんびりしたりできるお店が近所でがんばってくれているというのは、本当にありがたいことだ。不安にかられて買い占めたカップめんを家に籠ってすするより、近所のお店でいつもと同じごはんを食べた方が、よっぽど気が楽になると思う。

気合空振り

今日は午後半ば頃から停電するかもしれないということで、それまでに今日のノルマを終わらせるべく、早い時間からバリバリと仕事。予定時間の20分前までにノルマ達成。我ながらあっぱれな集中力(笑)。

暖房の代わりに湯たんぽを用意し、準備万端。停電、かかってこいやー!と思っていたら、市の防災アナウンスで「この地域の停電は中止になりました」との報せ。気合空振り(苦笑)。まあ、仕事も一区切りついていたので、ソファに坐り、湯たんぽで足を温めつつ、積ん読状態だった本を読みはじめる。本を読むなんてひさしぶりだ。この一週間、そんな発想すらなかった。

夜はナロ写真展開催中のリトスタで、たかしまてつをさんと中村文さんと会食。店内はほとんど満席。みんな、心のどこかで安らぎを求めているのだな。いつもと変わらずおいしい料理、ごちそうさま。

リンバンテイデン

今日は夕方から夜にかけて、うちの界隈で停電になるらしい。昼からJ-WAVEを聴きつつ仕事に集中していたら、思いのほかはかどった。いつもこのくらい集中できればいいのに(笑)。

停電が始まるはずの時間になったが、まだ通電している。ま、そのうち消えるかもしれないし、と身支度をして外に出て、吉祥寺までぶらぶら歩いていくことに。途中、中道通り商店街にさしかかったところで、市の防災センターのアナウンスで、該当グループで停電が始まったとの知らせ。吉祥寺方面は問題なさそうなので、そのまま駅前に向かい、リトルスパイスでキーマカレーを食べ、ドトールでカフェラテを飲む。店内にはそこそこお客さんがいる。停電夜組の人たちが、同じように時間を潰しているのかもしれない。

同じ停電のグループで自宅にいる人たちが「電気が点いた」とツイートしはじめたので、店を出て、家に戻る。街が暗い分、夜空が澄んで見える。