次のフェーズへ

午後、表参道方面へ。今年の夏頃に出す予定の新刊の、デザインについての打ち合わせ。

去年出した「インドの奥のヒマラヤへ」と同じ方々にご担当いただくので、作業の進め方をお互い共有できているから、その点ではかなり心強く、安心してお任せできる。あとは、編集段階での著者校正と、入校前の色校正に、しっかり集中して取り組まねば、だ。

正直、自分が書き下ろした原稿、いまだにあれで大丈夫なのかどうか、自分で自信が持ち切れないでいるのだけど(汗)、ここまで来たら、次のフェーズへと突っ走っていくしかない。常に最善を目指し続けていれば、たぶん、一番良い形に収まる、はず。たぶん……。

校了まで、がんばろ。それしかない。

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焦桐『味の台湾』読了。素晴らしかった。今年これまで読んだ中ではベストの一冊。台湾ならではの食べ物や飲み物について、ひたすら滔々と綴られているのだけれど、その中に、著者自身の人生の光と影が、漂うように滲んでいて。この本に書かれていたことを思い出しながら、いつかまた台湾を訪れたい。

「バター茶の味について思い巡らすこと」

教育と心理学を専門とする出版社、金子書房のnoteに、「バター茶の味について思い巡らすこと」というエッセイを寄稿しました。同社noteで組まれている特集「自己と他者 異なる価値観への想像力」というテーマに沿う形で執筆しています。

シンプルな内容のエッセイですが、読んでみていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

ブースター接種

先週の土曜、3回目の新型コロナワクチン接種を受けてきた。いわゆるブースター接種というやつである。

去年受けた1回目と2回目の接種がいずれもモデルナだったこともあり、今回もモデルナで。そのせいか、予約はあっさり取れた。副反応で発熱する可能性を見越して、接種から6カ月経過した後の最初の土曜日を選んだ。

接種してから12時間ほどは特に何の変化もなく、普通に家で原稿を書いたりもできた。寝る前になって微熱が出てきたので、解熱剤を飲んで就寝。10時間ほど寝て起きた後、熱はいったん引いていたが、しばらくするとまた上がってきた。頭は微妙にぼんやりして、身体も火照っている感じ。体内で何かしらの戦いが繰り広げられているのだなあと想像を巡らす。日曜の午後は、昼寝をしたり、ソファでごろごろしたりして過ごした。注射を打った肩は、意外なことにまったく腫れず、痛みもほとんどない。

日曜の夜中、また少し熱が上がってきたので、念のため解熱剤をもう一度飲んで、就寝。で、今朝はすっかり熱も引いて、頭も身体もしゃんとした感じに戻った。今日は午後にリモート取材の仕事が入っていたので、間に合ってよかった。

東京は感染者数がまたじわじわ増えてきているので、とりあえず速やかに3回打ち終わることができて、ほっとしている。引き続き用心して、サバイブしていこう。

ハウィーのこと


アラスカのカリブー・ロッジの愛すべき黒犬、ハウィーが、虹の橋を渡ったという報せが届いた。

カリブー・ロッジには、2017年の3月と、2018年の8月に、それぞれ数日ずつ滞在したことがある。最初に到着した日、一人でロッジ周辺の雪原の散歩に出かけた時、道案内をしてくれたのは、ハウィーだった。僕の10メートルほど前をぷらぷらと歩いて、立ち止まっては僕をふりかえる。僕の散歩につきあってくれていたのか、それとも、僕がハウィーの散歩にお供させてもらっていたのか。

初めて会った時から、まったく人見知りをしない犬だった。ラブラドール・レトリーバーとジャーマン・シェパードの混血だったハウィーは、僕がキャビンから外に出るたび、跳ねるように駆け寄ってきて、どすっと足元に体当たりして、頭をすりつけ、ウッドデッキに寝転がって、おなかをなでてくれとせがんだ。僕だけでなく、ほかのどの客に対しても。本当に、人なつこい犬だった。

ハウィーは、賢い犬でもあった。ベアー・ポイントという小高い丘の上まで、スノーシューを履いて登った時、頂上の近くに、純白の雷鳥の群れがいた。ハウィーの飼い主でカリブー・ロッジのオーナーでもあるジョーが、「ハウィー、待て」と小声で言うと、ハウィーは僕たち二人の後ろに下がって、吠えも動きもせず、僕が雷鳥の写真を撮り終えるまで、じっと待っていてくれた。

いつかまた、カリブー・ロッジに行きたい。ハウィーにまた会いたい。そう思いながらも、コロナ禍で身動きができないままでいるうちに、ハウィーにはもう、会えなくなってしまった。どうしようもなく寂しいけれど、ハウィーはきっと、ジョーやザック、彼らの家族たちに見守られて、穏やかに旅立っていったのだと思う。

さよなら、ハウィー。本当に、ありがとう。

停電で一騒動

昨日の夜中、宮城県沖の深海で、大きな地震があった。東京も震度4くらいだったか、それなりに揺れた。

揺れ以上にびっくりしたのは、停電だった。東京都内だけで、200万軒以上が停電したそうだ。福島県などにある火力発電所が4カ所くらい停止して、電力の需給バランスを保つための装置が作動した結果らしい。僕の自宅のある界隈では、結局、1時間くらい停電が続いた。東京でこんなに長時間の停電を突発的に経験したのは、初めてかもしれない。

夜中の1時過ぎに電気は通じるようになったのだが、困ったのは、固定電話とインターネットの光回線が、復旧しなかったこと。今朝になってもつながらないままなので、マンションの管理会社に電話して相談。管理会社がNTTに連絡したところ、地震の影響で依頼が立て込んでいて、確認作業に来れるのは夕方頃になってしまうと知らされた。

困った。今日は昼過ぎから自宅で、リモート取材の仕事が入っていたのだ。復旧の見込みが立たないと知らされたのも午前中の遅い時刻だったので、取材の依頼元に連絡して、あれこれ調整を試みる。取材日を来週にずらせないかとか、取材時刻を遅らせて、その間に依頼元の東京支社に僕が出向くかとか、僕の代わりに依頼元の編集担当の人が取材するかとか……。文字通りのどたばた騒ぎになってしまった。

そうして、取材予定時刻の20分前になった頃、何の前触れもなく、急に光回線の接続が復旧した。理由はわからないが、たぶん、どこかよその場所でトラブっていた中継機器が修理された際に、うちの回線も一緒に復活したのではないかと思う。

本当にギリギリの土壇場で、取材に対応できることになり、あわてて身支度と準備を整えて、本番に突入。どうにか無事に捌き切る。終わった後は、本当にいろんな意味で疲れ果ててしまって、布団に潜ってしばらく寝てしまった。寝不足だったもんなあ、昨日の夜も。

願わくば、でかい余震など、起こりませんように。