写真を選ぶ

終日、部屋で仕事。先日依頼を受けたスピティとラダックについての雑誌向け記事に使う写真のセレクトに没頭する。

今回の記事が掲載される雑誌は、判型がA4サイズよりもさらに幅2センチほど大きいし、8ページも使えるので、写真の載せがいがある。去年から撮影し続けて以来、まだほとんど外部に発表していない写真をようやくちゃんとした形で発表できる最初のチャンスだから、いやがうえにもセレクトに力が入る。あれも載せたい、これも載せたい‥‥そしてはたと気付く。8ページも使える、ではない。8ページしか使えない、のだ。載せたくても載せられない写真の、なんと多いことか。

この記事が完成した後、これを目にした人たちは、どんな風に思うのだろう。自分が「これはいい」と思っている写真でも他人にはそうでもなかったり、そうかと思えばその逆の場合もあるから、正直、どうなることやらわからない。でも、どうにかして、届けたいのだ。あのスピティの谷を吹き抜けていた、乾いた風の感触を。

生きている手触り

帰国して以来初めて、何も予定が入っていない日。昼から都心に出かける。品川と銀座のキヤノンギャラリーで開催中の野町和嘉さんの写真展「バハル再訪」と「ヒマラヤ仏教圏」、それと六本木の国立新美術館で開催されているアンドレアス・グルスキー展を回る。

グルスキー展には前から興味があって、じっくり見てみたいと思っていた。確かに面白い作風だし、壮大かつ緻密で、独特の美があると感じた。でも、白状すると、野町さんの途轍もない写真を見た後では、グルスキーの作品もいささか物足りなく思えてしまった。アフリカやヒマラヤの極限の大地で生きる人々ににじり寄る、その気迫。ざらりとした、生きている手触りが伝わってくる写真。これに比べれば、自分なんてほんとにヒヨッコで、足元にも及ばない、と改めて思い知らされた。

それでも、伝えることをあきらめるつもりはないけれど。僕も伝えたいな、あの、生きている手触りを。

それにしても腹が減る

午後、築地で打ち合わせ。去年と今年の夏の取材の成果を中心にした写真記事を、雑誌で発表できることになった。〆切までのスケジュールはかなりタイトだけど、愉しい仕事だから苦にならない。がんばろ。

それにしても、腹が減るのである。スピティからラダックまでのトレッキングの時、炎天下の中を毎日七、八時間ばかりも歩き続けていたので、予備燃料タンクである余分な皮下脂肪をすっかり使い切ってしまったからだろうか。あー、ひもじい。

まあ、日本の食べ物が、それだけおいしいということもあるのだろう。みんな普段当たり前のように食べてるけど、日本の食べ物のうまさと有り難みをあらためて再認識する今日この頃。しかし、ひもじいなあ。

いきなりフル操業

昨日の朝、インドから日本に戻ってきた。

もともとは先週の土曜朝に戻ってくる予定だったのだが、金曜朝にレーからデリーに飛ぶはずの飛行機がレーの悪天候でキャンセルになってしまい、同じ日の夜に乗る予定だった帰国便も、二日後の日曜夜発の便に変更せざるを得なかったのだ。いつもお世話になっている日本の旅行会社のご協力のおかげでたいした出費にもならず事なきを得たが、手配がつくまではヒヤヒヤものだった(苦笑)。

今日は午後から目黒で打ち合わせ。九月下旬から四週間の予定で取り組むタイ取材について。初めての媒体だし、取材場所も行ったことのない街ばかりなのでどうなることやらという感じだが、何とかうまくやり遂げたいところ。明日も午後から大事な打ち合わせがあるので、さっきまでその準備に追われていた。帰国していきなりフル操業。まあ、ありがたいことではある。

春先に出版社に預けて以来、しばらく進捗が滞っていた新しい書籍の企画の件も、再び検討作業が動き出したという。いい答えが出るといいな。そんなこんなで、いろいろフル操業でがんばる。

ふわふわと

荷造りの最終チェックも、しばらく留守にする自宅の支度も、すべて完了。明日の昼には、成田からデリーへ飛ぶ。

出発前日の夜は、日常から切り離されてもいないけど、片足はすでにあちら側に突っ込んでしまっているような、ふわふわとした、所在ない気分になる。明日、バックパックとカメラバッグを担いで空港のターミナルに踏み込めば、すぱんとスイッチが入るような気もするけど。

海外を一カ月もうろつくのにガイドブックすら必要としない旅だけど(笑)、慣れているからといって油断せず、気を引き締めて、まずは無事に戻ってくることを考えよう。

明日から8月16日(金)頃まで、不在のためブログの更新をお休みします。