叫び声

もうだいぶ前から、くりかえされている現象なのだけれど。

僕が住んでいるのは3階建てのマンションの1階にある部屋なのだが、毎晩、夜中の1時頃になると、うちの斜め上のどこかの部屋から、ヒャーッ!という素っ頓狂な女の叫び声と、ドン!と鈍く響く音が聞こえてくるのだ。

最初のうちは、何かの事件なのでは‥‥と訝しんだのだが、その叫び声と鈍い音の前後は、まったくもって静まり返っているので、どうやらそういうわけでもなさそうだ。ただ、少なくとも毎晩一回は、ほぼ必ず、ヒャーッ!ドン!という音が響いてくる。

あまりにも謎すぎるので、いろいろ想像してみた結果‥‥その部屋に住んでるのは一人暮らしのOLで、夜寝る前に、部屋に設置したサンドバッグを奇声とともにぶん殴って、日頃職場で溜め込んだストレスを発散してるのではないか‥‥いや、違うな絶対。

たぶん、この先もずっと解けないであろう謎。世の中、いろんな人がいるものだ。

戻ってきた音楽

オンキヨーのネットワークCDレシーバーCR-N765とスピーカーD-112EXTを自宅に導入して、三週間ほど経った。結論としては、思い切って買い替えてみて、本当によかったなと思う。

まず、CR-N765は単体でradikoが使えるので、その時の気分で好きなラジオ局をよりどりみどりに選んでノイズレスで聴けるようになったのが、うちの環境には本当に大きかった。おかげで、部屋にいる時は、ほぼずっとラジオをかけるようになった(執筆作業の時は無音にして集中するけど)。アルバムをちゃんと聴きたい気分の時はCDを、ちょっとものぐさな気分の時はApple TV経由のAirPlayでiTunesのプレイリストをかけ流しにする。いろんな方法を選べるようになったので、日々の時間の隙間にぴっちりと音楽が埋まっていった感じだ。

D-112EXTが出す音の解像感の高さは、音量をごく小さく絞った時にも際立って感じられる。夜の遅い時間に、近所迷惑にならないように本当にかすかな音で、おとなしめのジャズやボサノヴァをひっそりとかけると、心身がふわりと解きほぐれていく気がする。

何だかすっかり嬉しくなって、最近は、もう何年もご無沙汰だった、昔買ったCDを発掘してはかけてみて、「こんな音だったのか〜」と驚いたり、「うわ〜懐かしい〜」と和んだりしている。仕事以外の時間を、前よりもずっと豊かな気分で過ごせるようになったのは間違いない。

音楽が、生活の中に戻ってきた。

飴色の悩み

カレーを作る時、タマネギの処遇をどうすべきか、ずっと悩んでいた。

カレーに使うタマネギは、みじん切りにして飴色になるまで炒めるというのが、割と一般的なセオリーだ。時間をかけて炒めて水分とともに辛味成分を飛ばすと、甘味や旨味の成分が引き出されて、カレーにコクを与えるのだという。大ぶりに切ったタマネギのカレーの方が好きな人ももちろんいるだろうけど、実際に自分で作り比べてみると、やっぱりみじん切りにしてある程度時間をかけて炒めたタマネギのカレーの方が、コクがあってうまかった。

問題は、タマネギを飴色になるまで炒めるのに、結構時間がかかるということ。一般には30〜40分かけて炒めろとも言われているけれど、自分の家で一人で食べるためだけのカレーにそんなに時間をかけるのは、はっきり言って相当メンドクサイ。木べらを動かす手も疲れるし。

なので最近は、だいたい15分くらい中弱火でタマネギを炒めて、体積が半分以下になるまで水分が飛んで色が変わったら、肉と野菜を順次入れて炒め、水を注いで煮込みに入ることにした。それで十分、カレーにコクは出るように思うのだけど、どうかな。とりあえず、自分的には満足してるけど。

というわけで、今日の晩ごはんはポークカレー。ごちそうさまでした。

友チョコ

年末に安曇野で、実家の人間たちと過ごしていた時のこと。

姪っ子(中2)がひまつぶしに、自分のiPhone(さすがデジタルネイティブで、親よりも自然に使いこなしてる)に入れている写真を見せてくれた。その中に、きれいにラッピングされたチョコレートがたくさん写っている写真があった。

「これは?」「前のバレンタインデー」「あげたの?」「ううん、もらったやつ」

最近は、女の子同士でチョコをプレゼントし合う「友チョコ」という習慣がすっかり定着して、ごく当たり前のことになっているそうだ。そうなのか‥‥何しろおっさんなので、まったく知らなかった(苦笑)。

「じゃあ、男子にはあげないの?」と聞くと、姪っ子はきょとんとして、こう言った。

「男子にチョコあげるような人は、だいぶ変わり者じゃと思うよ」

‥‥時代の移り変わりを感じる(汗)。いつか、チョコをあげたい男子が現れたら、周りに変わり者だと思われないように、こっそりあげたまえよ。

つまらなくなる街

午後、ぼうぼうに伸びた髪を切ってもらうため、三鷹の南口にある理髪店へ。

駅を抜けて階段を降り、細い道に入ると、左右に並ぶ店が、軒並み閉店してしまっている。このあたりに再開発で高層ビルが建てられるという話は、少し前から聞いてはいたが‥‥。昔ながらの喫茶店やごはん屋さんが、ひっそりと入口を閉じ、閉店のお知らせの貼り紙を貼っている。無念さのにじむその文面を見ていると、何だかやるせなくなる。

三鷹だけでなく、中央線沿線のあちこちで、似たような再開発が次々に行われていると聞く。再開発を十把ひとからげに悪いと決めつけるつもりは毛頭ないけれど、どこもかしこも、つるんときれいな外観のビルに、どこかで見たような小洒落たテナントが並んでいる街は‥‥つまらないんじゃないかな、やっぱり。少なくとも、個人的には。

本当の意味で、街を面白く、居心地よくするのは、大仰な都市開発とかではなく、一人ひとりの小さな営みなんじゃないかと、僕は思う。