どうしたものやら

今年に入ってからだけど、街の中でまったく予想もしてなかった場面に遭遇して、どうしたものやらという状態になることが、ちょくちょくある。

少し前の夜、吉祥寺駅のプラットフォームで電車を待っていたら、突然、目の前で一人の若い女の子が号泣しはじめて、そのままその場にへたり込んでしまった。その横では、なよっとした感じの若い男が、人目を気にしておろおろしていた。あれはいったい、何だったんだろう。それまで口ゲンカをしてるようにも見えなかったのに、あのやさ男、どんな号泣スイッチを押してしまったのか。

別の日の深夜、三鷹駅前の松屋で牛丼を食べていた時。明らかに酔っ払ってる年輩のおっさんが入ってきてテイクアウトを注文し、どかっと座って待ってる間に「おい、ビールもってこい、ビール」。店員「ビールはお持ち帰りできないんですが‥‥」おっさん「んぁ? おれがビールもちかえるわけねーだろ! いまのむんだよ! なんだオマエ、ふざけてんのか!」店員「すすすみません」‥‥いや店員さん、あんたは全然悪くない。

まったくとりとめのないままだけど、世の中、どうしたものやらという感じである。

優しくない街

昼から都心に出かける。早稲田にあるCat’s Cradleという旅のブックカフェ(よい感じのお店)でおひるを食べた後、かもめブックスにも寄ろうと思い、東西線に一駅乗って、神楽坂へ。

神楽坂駅は、中野方面に向かう列車が地下2階、西船橋方面に向かう列車が地下3階に停まる構造になっている。僕が地下3階で列車を降りた時、階段のところで四人の駅員さんたちが集まって何やら話し合っていた。車椅子の人用の階段昇降機に何か問題があるようだ。上に上がると、車椅子の方を含めた何人かが待っている。

と、僕の背後から階段を上がってきた駅員さんが、その人たちに何やら説明を始めた。「ここでは無理なんで、すみませんが二駅移動してもらって‥‥」どうやら、高田馬場まで移動してから逆方向の列車に乗ってほしいということのようだ。

突発的なメカニカルトラブルなら仕方ないのかな‥‥と思う反面、駅員さんが四人も揃っているのに、車椅子の方一人を1フロア移動させてあげることさえできないのだろうか、とも思う。そういう規則なのかもしれないけれど‥‥。

夕方、帰りに乗った中央線では、明らかに足に問題を抱えている年輩の男性がしんどそうにつり革に寄っかかっているのに、周囲では誰も席を立って譲ろうとしなかった。席に座ってうつむいているのは、まだ若い女性たちばかりだった。

優しくない街だ、東京は。

Night in Thailand

カメラバッグ沼

この間のノルウェー取材で、カメラバッグの上ぶたを留めるプラスチックのバックルが、一つ割れてしまった。

使っていたのは、ロープロのマグナム200AWというショルダーバッグ。たしか2010年頃に導入したのだが、主にラダックくんだりで酷使し続けてきたので、ブラックだったはずの外装は日に焼けてグレーのようになり、各部のジッパーも動きが渋くなってきていた。とりあえず割れたバックルはアウトドアショップで買ったスペアパーツに交換してみたが、致命的なことになる前に、そろそろ退役させた方がいいのかな、と思っている。

で、これから何年か先までの仕事を見越してカメラバッグを選ぶとなると、結構悩ましい。とりあえず、去年のアラスカのように大きめの望遠レンズを持っていく必要のある取材では、今あるGW-PROショルダーバッグを使うことにしている。ただ、毎年行っているタイなどのように機材が少なくてもいい取材には、大きくて重すぎるので、もっと小ぶりで、でもそれなりに頑丈で、できれば小型ラップトップの収納スペースがあると‥‥となると、ショルダーバッグではなかなかこれといったものがないのだ。となると、いっそマンフロットのMB PL 3N1-25あたりのバックパックにした方がいいのかしらん‥‥ということになるのだが、未だ踏み切れず‥‥。

写真を始めると、「レンズ沼」ということがよく言われるけど、「カメラバッグ沼」の深さも、相当なものだと思う。

ゆっくりしてれば?

インドでの仕事が出発直前にキャンセルになった影響で、今週と来週はスケジュールにぽっかり穴が空いている。今日も一日、昨日の取材の原稿を手直ししたり、ノルウェー取材の請求書や経費の整理をしたりしていたのだが、それらもだいたい片付いてしまったので、ヒマというか手持ち無沙汰というか、ともすると不安にかられそうな状況ではある。

こんな時、ラダックにいる親しい人たちなら、僕に何て言うだろう、と考える。

「へー。仕事なくなったんだ。じゃあ、ゆっくりしてれば? 散歩して、どこかでお茶でも飲んできなよ」

‥‥こんなところだろうな(笑)。そもそも、あっちで暮らしてた時は、たとえ何かいらつきかねないようなことがあっても、そんなにせかせかした気分にはなれなかったのだ。すべてがゆったりと、なすがままに流れていた時間。

そうだね。本でも読んで、ゆっくり過ごすよ。