トレーニング中

最近、ずっと忙しい状態が続いていて、朝早くから取材に出かけなければならない日も多い。そういう時は前日のうちにコンビニで翌朝の朝ごはんを買っておく。サンドイッチとか、おにぎりとか。だから近頃は、ほぼ毎日のように近所のコンビニに立ち寄っている。

そのコンビニ、しばらく前から急に、店内にいる店員さんがほぼ全員、外国人の若者たちに切り替わった。誰も彼もみな、胸に「トレーニング中(名前)」という名札をつけている。二つあるレジを両方ともトレーニング中の彼らが担当してるのだが、彼らを指導する立場の日本人のスタッフはどこにも見当たらない。思い切ったことをするというか、極端な切り替えだなあ、何か裏であったのだろうか、と僕は一人訝っていた。とはいえ、彼らトレーニング中の若者たちは、みんな丁寧な言葉遣いで、すごくがんばっているように見えた。

で、今日の夕方、そのコンビニに立ち寄ってみると、ひさしぶりにレジ打ちの店員さんがみんな日本人だった。しかし……何だろう。変な感じに場慣れしちゃってるというか、いろいろいい加減というか。妙にカッコつけた巻き舌っぽい口調、商品を扱ってるのに荒っぽい手つき、おつりの雑な渡し方。

この間のトレーニング中の外国人の子たちの方が、よっぽど丁寧だった。君ら、再トレーニングした方がいいよ。

「ラダック」と「渋イケメン」〜それでも僕たちが旅に出る理由〜

ldkh1601
ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]」の発売に合わせて、5月18日(水)の夜、代官山蔦屋書店でトークイベントが開催されます。今回のお相手は、同じ雷鳥社から昨年「渋イケメンの国」を刊行された写真家の三井昌志さん。この二人ならではの、ディープな旅のトークになると思います。お申し込み、お待ちしています。

———

三井昌志×山本高樹 スライドトークイベント
「ラダック」と「渋イケメン」〜それでも僕たちが旅に出る理由〜

アジアの辺境をバイクで自由に旅しながら新鮮な出会いと感動を写真に撮り続ける、三井昌志。インド北部の山岳地帯ラダックにひたすらこだわって通い続けて本を作る、山本高樹。

旅に対して対照的なアプローチを持つ二人は、一年のうち数カ月を仕事で、あるいは個人的な動機で旅をして過ごします。日本から海外へ旅に出る人がめっきり少なくなったとも言われる昨今、二人はなぜそれぞれの流儀で旅を続けるのでしょうか。写真や文章を通じて、二人が伝えようとしていることは何なのでしょうか。

二人のこれまでの旅と作品をふりかえりながら、人が旅に出る理由についてじっくり考えてみるトークイベントです。

会期 2016年5月18日(水)
定員 50名
時間 19:30〜21:00
場所 代官山 蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース
主催 代官山 蔦屋書店
共催・協力 雷鳥社
問い合わせ先 03-3770-2525
http://real.tsite.jp/daikanyama/event/2016/04/post-114.html

【参加条件】
代官山 蔦屋書店にて参加券(税込1,500円)のご購入もしくは、対象書籍をご購入いただいた先着50名様に参加券をお渡しいたします。
1:参加券(税込1,500円)
2:対象書籍
『渋イケメンの国』(三井昌志著 雷鳥社 税抜1,600円)
『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(山本高樹著 雷鳥社 税抜1,800円)

【お申込み方法】
以下の方法でお申込みいただけます。
1:代官山 蔦屋書店 店頭(3号館1階レジ)
2:代官山 蔦屋書店 オンラインストア
3:電話(03-3770-2525)

【対象商品】
『渋イケメンの国』(三井昌志著 雷鳥社 税抜1,600円)
『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(山本高樹著 雷鳥社 税抜1,800円)

【ご注意事項】
*参加券1枚でお一人様にご参加いただけます。
*当日の座席は、先着順でお座りいただきます。
*参加券の再発行・キャンセル・払い戻しはお受けできませんのでご了承ください。
*止むを得ずイベントが中止、内容変更になる場合があります。

【プロフィール】
三井昌志(みつい・まさし)
1974年京都市生まれ。 写真家。アジアの辺境を旅しながら、「笑顔」と「働く人」をテーマに写真を撮り続けている。著書に『渋イケメンの国 〜無駄にかっこいい男たち〜』『写真を撮るって、誰かに小さく恋することだと思う。』(ともに雷鳥社)など多数。主なフィールドはインド、バングラデシュ、ネパール、ミャンマー、カンボジアなど。
たびそら http://www.tabisora.com/

山本高樹(やまもと・たかき)
1969年岡山県生まれ。 著述家・編集者・写真家。 2007年から2008年にかけて、インド北部のラダックに長期滞在して取材を敢行。以来、かの地での取材活動をライフワークとしている。 著書に『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)『ラダック ザンスカール トラベルガイド インドの中の小さなチベット』(ダイヤモンド・ビッグ社)など。
Days in Ladakh http://ymtk.jp/ladakh/

旅費交通費

昨日は十日市場、今日は船橋日大前。今年はやけに遠い場所での取材が多い気がする。予定が合わなくて断った取材の中にも、秦野とか、高崎(!)とか、いろいろあったし。

それでも気のせいかなと思って、月末に依頼元に送る予定の旅費交通費の請求書のファイルを見てみたら、入力済みの項目だけで、1万7000円を超えている(苦笑)。去年の4月も2万円を超えていたのだが、去年は最後の最後に茨城での取材1件だけで8000円以上かかっているので、それを差し引いて考えると、今年の遠隔地への飛ばされっぷりが際立っている。

在来線やスクールバスを乗り継いで時間のかかる行程を行き来するのって、地味に消耗するんだよな‥‥。むしろ、海外にLCCでない飛行機で行く方がラクなくらいだ。そして明日も朝5時半起き。嗚呼。

ヤマ場を越えて

先週の土曜日は、モンベル御徒町店での関健作さんとのトークイベントだった。会場はおかげさまで大盛況で、トーク自体も、たぶんそれなりにうまくいったのかなと思う。

イベントの後、僕の本を手に長い列を作ってくださった方々一人ひとりにサインを進呈し終え、会場の撤収作業をしていた時、急にがくっと、身体の力が抜けるような感触を感じた。神経の緊張が急に解けたとか、それまであまり水分を摂ってなかったとか、そもそもこれまで忙しすぎた疲労蓄積の反動とか、原因はいろいろあったのだろう。とにかく、頭がふわふわというかふらふらして、どうにもつらかったので、打ち上げは二次会をパスして抜けさせてもらって、這うようにして家にたどり着き、そのままぶっ倒れて寝てしまった。

日曜日も、午後のリトスタに在廊している間はまだふらふらの余波が残っていたのだが、夜から晩ごはんをビールと一緒に食べ始めて、やっと落ち着いたというか、人心地ついたというか、普段の自分の感覚に戻れたような気がした。その後またぐっすり寝て、今日はもう、すっかり大丈夫。通常のお仕事モードである。

とにもかくにも、トークイベントという今月の最大のヤマ場は越えた。……まあ、来月もあるんだけどね。

羊毛とおはな「LIVE IN CHURCH」

LRTCD-107_OLCDをトレイにセットし、再生ボタンを押す。イントロのピアノの音が聴こえた瞬間、何もかもすっかり思い出した。あの日のことを。

2014年2月11日、品川教会グローリア・チャペルで行われた、羊毛とおはなのライブ。僕もあの日、あの場所にいた。全身の肌が粟立つほどに圧倒された「Hyperballad」。ジャニス・ジョプリンをモデルにした映画の主題歌「The Rose」。本当に、奇跡のような時間だった。そしてそれが、彼らのライブに接した最後の機会になった。ほどなく、はなさんは療養生活に入り、約一年後の2015年4月に、永眠した。

それからしばらくの間、僕は、羊毛とおはなの曲を聴くことを避けてしまっていた。何というか、自分の中にあるもやもやしたやるせない思いを、うまく整理できないでいたのだ。いくらなんでもそれはないだろう、という、神様に対するささやかな反抗心だったのかもしれない。

でも、今こうして、あの日、あの場所で奏でられた音をこのライブ盤「LIVE IN CHURCH」で聴くことができて、胸の奥につっかえていたものが、ようやく融けていったように感じた。このライブ盤にも収録されている、彼らのレパートリーの中で僕が一番好きな曲「ただいま、おかえり」を聴いた時、目尻に涙が滲んだ。うまく言えないけど、はなさんにやっと「さよなら、またね」と言えるようになった気がした。

このライブ盤は、別れに手渡された、花束のようなものなのだと思う。