出発前の嵐

台風9号の首都圏上陸で、朝から天気は大荒れ。幸い、特に出かけなければならない用事もなかったので、旅の荷造りの仕上げをして、あとは部屋で雨と風の音を聞きながら、おとなしく過ごす。

元々は今日から出発する日程を考えていたのだが、お盆明けの平日に1日東京にいることで、仕事関係の連絡がつきやすいようにした方がいいと思い直して、明日の出発に変えたのだった。今となっては、本当に運が良かったと思う。もし出発予定が今日だったら、飛行機の遅延や欠航で、現地の細かい事前手配が危うくパーになるところだった。

まあ、明日からの2週間、何もかも予定通りにうまく運ぶとはまったく思ってないけれど、まずは五体満足無事に戻ってくることを目標に、新鮮な気持でアラスカを楽しんでこようと思う。

帰国は9月5日の予定。ではまた。

ジーンズにまつわる回想

あれは高校生の頃だっただろうか。初めて自分で選んで、裾上げしてもらって手に入れたジーンズは、リーバイスの502XXのレプリカだった。フロントがジッパーフライで、陸上をやっててウエストの割に太腿が太かった僕でも、楽に穿けるのが気に入っていた。

大学に入って東京に引っ越してからは、アメ横でリーバイスの501やUS505のレプリカを買った。それからしばらくして、リーバイスからリーに鞍替えした。101Zや101Bのレプリカは、買ってからさんざん穿いて、もう破れまくってどうにもならないくらいまで穿き続けた。全部で3本か4本は買ったと思う。周りがみんなリーバイスだったから自分はリーにしたかったという、アマノジャクな理由もある。あと、リーはレングスがリーバイスより少し短くて、裾上げしなくてもジャストで穿けるのも気に入っていた。

30代に入ってからは、日本のメーカーのジーンズも穿くようになった。フルカウントの1101はだいぶ色落ちしたけど、今も穿いている。少し前に買ったオアスロウの105も穿きやすい(ちょっとレングスの設定が短いので、裾上げで調整できる仕様だともっとよかった)。手持ちの中で一番気に入ってるのは、フェローズの421SW。フロントボタンが全部違うとか、ポケットがネルシャツの生地だとか、いろいろ変態仕様なのだが、シルエットがすとんと綺麗で身体になじむ。日本のメーカー(ファストファッション系以外)のジーンズは、生地に各社のこだわりがあるのと、シルエットが日本人になじみやすいこと、ディテールに手を抜いてないところが魅力だなと思う。

……こんな風に思い返してみたら、今まで穿いてきたジーンズの本数って、思っていたより意外と少ないことに気付いた。人生が終わるまでにあと何本穿けるのかな。一本々々、愛着を持ってしっかり穿き倒していこうと思う。

旅というより

夜、来週火曜からのアラスカへの旅の荷造りに、ようやく着手。

今回の目的地は、南東アラスカ。二年前のようにキャンプをするわけではないのでテント関連は不要なのだが、無人島にある丸太小屋に数日間泊まるので、厳寒期用寝袋とマットレス、炊事道具、フリーズドライの食料、海から上陸する際の長靴など、それなりにいろいろ持って行かなければならない。グレゴリーの95リットルのダッフルバッグが、みるみるうちに満杯になっていく。

おまけに撮影機材も、カメラボディ2台にレンズ4本(うち1本は80−400mmという横綱級)という一番大がかりなセットだし、パソコンとハードディスクもあるしで、ダッフルバッグと同時に全部背負ったら鎖骨が砕けそうなレベルである。何というか、旅の準備というより、引っ越しか夜逃げでもするみたいな気分になってきた。

毎度のことながら、アラスカ、いろいろしんどい。

服の断捨離

今日は激しい雨やら雷やら、何だか不穏な空模様。夕方になってちょっと安定してきたようだったので、吉祥寺まで歩いて行って、いくつか買い物。来週からの旅に必要なものと、無印良品でポリの衣類収納ケース。

家に戻って、買ってきた衣類収納ケースを追加セットし、一念発起、クローゼットの整理を始める。僕は服に関しては未練がましくて、下着や靴下はノビノビになってすりきれて最終的に穴が開いても捨てるかどうか躊躇してしまう。逆に言えば単に横着かつ無頓着なのだろうが、そんなわけで年々、クローゼットの中がひどくカオスな状態になってしまっていたのだ。

大きめのビニール袋を用意して、ばっさばっさといらない服を放り込む。穴の開いたトランクス、ゴムの伸びきった靴下、首まわりが元の倍くらいだるだるになったスウェット、しみのできたTシャツ……なんでこんなのキープしてたんだろ、と我ながら呆れる。

旅から旅へという日々を続けていると、とかく、ベースとなる生活がおろそかになってしまう。自炊とかがままならないのは仕方ないけど、ちょっとずつでも、生活を整えるのを忘れないようにしなければ、と思う。

……しかしまあ、今回の断捨離に関しては、今までが横着すぎただけなんだよな(苦笑)。

「DDLJ 勇者は花嫁を奪う」


成田とデリーの間を往復するエア・インディアの機内で、そういえばまだちゃんと観てなかった、と思ってがっつり観たのが、「Dilwale Dulhania Le Jayenge」。日本では以前ひどい邦題をつけられていたが、最近は「DDLJ 勇者は花嫁を奪う」と呼ばれている作品だ。この映画が公開されたのは1995年。その当時大ヒットしただけでなく、ムンバイの映画館マラーター・マンディルでは、その後20年近く、1000週以上にわたって上映され続けるという、ギネスブックにも載る超ロングランヒットとなった。

厳格な父と家族とともにロンドンで暮らすシムランは、インドに父の決めた一度も会ったことのない婚約者がいる。独身最後の思い出作りに友達とヨーロッパ旅行に出かけた彼女は、お調子者のラージと出会い、ひょんなことから二人で旅をするようになる。初めは喧嘩ばかりしていた二人だったが、旅が終わる頃、それぞれが自分の気持に気付く。しかし、シムランは結婚式のためインドに連れて行かれてしまう。それを追いかけるラージの選んだ行動は……。

何というか、観終わった後、本当に掛け値なしに幸せな気分になれる映画だった。シャールクは普段おちゃらけてばかりだけどここぞという時はキメるという彼の一番得意な役柄だし、カジョールの輝くばかりの美しさと喜怒哀楽の演技も唯一無二の存在感を放っていた。ヨーロッパの列車旅が終わった時、シャールクと別れた直後のカジョールの表情にはどきりとさせられたなあ。そして180分見続けた後の、ラストのあのあまりにも有名すぎるシーン。

映像作品として見た場合、ツッコもうと思えばツッコめるポイントは山ほどある。時にベタすぎるほどベタな展開や、冗長すぎるんじゃないかと思えるくだりも。でも、そういう部分も全部ひっくるめて、この作品の魅力になっているとも言える。そして「DDLJ」のDNAは、その後作られた数え切れないほどのインド映画にも脈々と受け継がれているのだ。海外のライフスタイルへの憧れ、インドの伝統と格式への誇り、家族との絆、男の戦い、叶わないと思っていた恋の成就……。

これからもこの作品は、インドの人々の間で、愛すべき映画の一つとして、ずっと語り継がれていくのだろう。本当に幸せな作品だと思う。