世界一のクリスマスツリー

午前中から夕方まで、八王子で取材。帰りにココイチでスープカレーを食べ、家まで戻ってくる頃には、すっかり日が暮れていた。

近所にあるキリスト教系の幼稚園のベランダが、この時期恒例の電飾で彩られている。この建物は教会でもあるので、電飾もおとなしく、品のようなものがある。同じ電飾でも、三鷹駅北口ロータリーで年末灯される電飾は、正直言ってあまり品がない。青や白のLEDを大木の枝にむやみに絡めつけていて、人間の身勝手さを感じてしまう。

神戸港に先日持ち込まれたという、「世界一のクリスマスツリー」とやらのことを思う。氷見の山から根ごと引っこ抜かれ、はるばる神戸まで運ばれ、震災の鎮魂とかいう被災者の感情をもろに逆撫でする惹句を後付けでまぶされ、クリスマスの後は切り刻まれて神社の鳥居にされる予定という、世界一のクリスマスツリーのことを。

そもそも、何が世界一なのかもよくわからない。高さなら、国内外にもっと大きな、しかも自生しているツリーがあるという。子供たちが願い事を書いたオーナメントをくくりつけた数で世界一ともいうが、つけたそばから風で割れてバラバラ落っこちて、ろくに回収もされていないという。あのプロジェクトに関わっている人間たちの愚かさという点では間違いなく世界一だが、それではそんな愚かな人間たちに無理やりツリーに仕立てられたあげく鳥居にされてしまう、樹齢150年のあすなろの木(かどうかも実ははっきりしない)が可哀想だ。

世界一、無残な、クリスマスツリー、なのだろうな。

本を贈る

午後、用事でちょっと都心へ。帰りに吉祥寺で途中下車し、ジュンク堂書店に行って、本を何冊か物色。自分用ではなく、年末年始に会う予定の、実家方面の姪っ子や甥っ子たちにあげる用の本。

実家方面の人間たちとは年に一度会えればいいくらいの不義理を日頃働いているので、たまに会う時には、小さな人たちに何かプレゼントを持っていくようになった。とはいえ、僕は基本的にアマノジャクなので、世の中的には子供受けすると考えられている、おもちゃやゲームの類は持っていったことがない。たいてい、一人につき一冊、本を選ぶ。

正直、「もっと単純に喜びそうなものを持っていった方がいいかな……」と思わなくもないのだが、このご時世に、年に一度やってきて本を一冊渡していくヘンな叔父さんというのも、まあ世の中に一人くらいいてもいいんじゃないかと、自分を納得させている。

そういう自分も、もっと本を読まねばだな……。

Stay Gold

家での仕事の合間に、夕方、近所の歯医者へ。歯石の掃除であと2回ほど通うことになりそうだが、治療自体は今日で終わり。帰る前に駅のみどりの窓口に寄って、年末年始に安曇野に行くための切符を買う。

窓口にいたのは、まだ若い、人のよさそうな女性で、僕の前でもたついていたおばさんを嫌な顔もせずニコニコと案内していた。僕の番になっても、ものの言い方とかがいちいち丁寧。まだあまり窓口業務に慣れてないらしく、端末のモニタを慎重に確認しながら操作している。で、支払いの段になったのだが、なぜかレジが動かない。レシートのロールペーパーが切れていたらしい。

そこから彼女は、たぶんあまり経験がなかったであろうロールペーパーの交換作業に取り組むことになった。ペーパーのセット方法は結構アナログで、それなりにコツがいるらしく、5分くらいはかかったと思う。終わった後、「大変お待たせして、本当に申し訳ありませんでした……」と深々と頭を下げていたが、別に僕は急いでなかったし、後ろにも誰も並んでなかったから、そこまで謝らなくても、と逆にちょっと恐縮してしまった。

窓口業務、きっといろいろ大変なんだろうけど、できれば、これからも、そのままで。

言うべきことを言うということ

僕は基本的に、思ったことを割とそのまま口にするタイプの人間だ。それが他人を傷つけてしまわないかということにはもちろん留意するけれど、他人の顔色を窺ったり、それによって自分が他人からどう思われるかを気にしたりは、全然しない。そんなことは、心底どうでもいい。

世の中には、誰かの不条理なやり方によって、権利や心を踏みにじられるような思いをさせられている人が、少なからずいる。そうした不条理に対して、誰も何も言わなければ、それがそのまままかり通ってしまう。安っぽい正義感と言われようが、人目を気にしてだんまりを決め込めるほど、僕は「大人」ではない。

だから僕は、僕が言うべきだと思ったことを、これからも折につけ、口にしていくし、書いてもいく。今までもこれからも、僕はそういう人間だ。

「地上」2018年1月号 「極奥物語 第七話」


12月1日(金)発売のJA(農協)グループ刊行の雑誌「地上」2018年1月号のカラーグラフに隔月で掲載されているシリーズ「極奥物語」に、ザンスカールについての写真紀行「苛烈の谷の安息」を寄稿しました。

この雑誌は一般の書店では販売されていませんが、下記のページから申し込めば、単月号を1部から購入できます。必要事項をフォームに記入して申し込むと、雑誌と請求書兼払込用紙が送られてくるとのことです。

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写真は1枚を除いてすべて今年の夏に撮影したもので、文章も書き下ろしです。よかったらぜひご一読ください。