Category: Diary

底冷えよサヨウナラ

のどを傷めて体調をちょびっと崩したりしてるうちに、季節はすっかり冬になってしまった。部屋で机に向かって仕事をしている時も、はんてんを羽織ってないと、うすら寒く感じる。

三鷹に住んでいた頃は、鉄筋コンクリートのマンションの1階で、日当たりもさほどよくなかったから、夏は涼しかったけど、冬はめっぽう寒かった。特に底冷えがものすごくて、しんしんと冷気のたまる部屋の中で、極地仕様の分厚いウールのソックス(なんでそんなもの持ってるんだという指摘はさておき)を重ね履きし、仕事机の下でデロンギのオイルヒーターをフル稼働させてしのいでいた。

今年引っ越してきた西荻窪の部屋は、マンションの3階にあるので、去年までのような殺気じみた底冷えは感じない。加えて、なんと、床暖房がある。うっかり頼りすぎると電気代がやばいことになるので最小限の使用にしているが、文明の利器のありがたみをしみじみ享受している今日この頃である。

……まあ、それも例によって、今のうちだけなんだけど。1カ月後には、インドだし……。

エクトプラズム

数日前からのちょっとありえないような気温の乱高下のせいか、のどの調子が悪くなった。風邪というほどではないが、のどの入口あたりのいがらっぽさが消えないのだ。

まあそのうち治るだろう、と呑気に構えていたのだが、金曜の昼にインタビューを受けた時、2時間近くしゃべってるうちにどんどん悪化して、その日の夜には、完全にがらがらのしゃがれ声になってしまった。取材の場でしゃべることを見越してケアをしておくべきだった。迂闊。

すると、同居してる相方が、次から次へと自分ののど治療アイテムを持ってきてくれた。相方は人前で割と声を張って話す機会の多い仕事をしていて、彼女自身も冬場はよくのどを傷めるので、そういうアイテムを豊富に持っているのだという。うがい薬。何種類もの漢方薬の粉末。いただきもののマヌカハニー。そして真打は、ポータブルの超音波吸入器。

この超音波吸入器は、水を入れてスイッチを入れると、白い水蒸気が噴出される。口をあけてそれをのどに向けると、のどの奥にうるおいを届けることができるというアイテムだ。実際に使わせてもらうと、なかなか気持よくて、のども楽になる気がする。使用中の姿を鏡とかで見ると、口から白い蒸気がぼわわわとこぼれていて、何とも言えないシュールな光景なのだが。

そんなわけで、僕はこの超音波吸入器を「エクトプラズム」と呼んでいる。

先入観のリセット

昼、外苑前で、取材を受ける。テーマは、インド映画。昨今、日本でも話題に上る機会が増えたインド映画を観ることをいろんな理由で躊躇している初心者に対して、インド映画の魅力やおすすめのポイントなどを紹介してほしい、という依頼だった(その相手が僕みたいな小者でよかったのだろうか、という懸念はあるが)。

この取材の相談を受けて、まず感じたのは、インドという国とその文化について予備知識のない人に、「インド映画」という非常にざっくりしたカテゴライズに基づく説明をすることの危うさだった。インド全土で年間で1000〜2000本も制作されているインド映画は、ジャンルも言語もあまりに多種多様で、とても十把一絡げに扱うことはできないからだ。

同時に思い浮かんだのは、未だにかなり多くの日本人が、インドやアジア諸国の人々と文化に対して、実情にそぐわない断片的な情報やイメージに基づいた先入観に囚われているのではないか、ということだった。たとえば、インド映画に対して敷居が高く感じている人のうち、実際にインドの映画作品を1本通して観た経験がない人は結構多い。妙な歌と踊りばかりなのではとか、えぐいバイオレンスシーンばかりなのではとか、たいしたクオリティではないのでは、とかいう思い込みばかりが先走っている。日本人のそうした先入観には、ともすると、うっすらとした上から目線の見方がブレンドされてしまいがちだ。

だから、先入観の抜けない初心者に対してインド映画をすすめるなら、まずは「インド映画」という括りを取っ払って考えてもらうようにした方がいいのだろう。「きっと、うまくいく」など評価の定まっているいくつかの映画を、個々の作品としておすすめしてみる。それで気に入ってもらえたら、あとはその人の好みに応じてアンテナを広げてもらえばいいし、そうでなければその人の好みではなかったというだけのことだと思う。

もっと根本的に、異国とその文化に対してズレている先入観をリセットするには、日本人である自身の価値観は絶対的なものでも何でもなく、世界の中で無数にある価値観の一つに過ぎないということを自覚するしかないのだろう。価値観とは国や地域や宗教や文化、人によって相対的なもので、それぞれに理があるのだと。その事実を骨身に沁みて自覚して自分のものとするには、やっぱり、旅に出るのが一番手っ取り早いのだろうと思う。

面白い人

今年の夏から同居を始めた相方について、「どんな人なんですか?」と周囲からよく訊かれる。

ひとことで言うと、「面白い人」である。

これまでもずいぶん長く付き合ってきたから、彼女の良い部分もそうでない部分もそれなりに知っていたつもりだったけど、一緒に暮らしはじめて、「こんなに面白い人だったのか……!」と、毎日のように新たな発見があって、驚かされている。

相方がいかに面白い人か、日々のエピソードをブログに書き綴っていったら、たぶんかなり話題になると思うのだが、そんなエピソードをWebに晒したらただではすまないので(笑)、自重している。

いや、しかし、ほんと、面白い人である。僕は出会いに恵まれているなあと思う。

「なろう系」のテンプレに思う

少し前に、「なろう系」という言葉を初めて知った。なんじゃらほい、と思って調べたら、「小説家になろう」という小説投稿サイトに投稿されがちな系統の小説を指す言葉なのだとか。たぶん、この言葉が使われる時には、その作品を揶揄するような意味合いが込められることが多いのだろう。

Web上で見つけた情報によると、「なろう系」と呼ばれる作品の多くは、こんな感じのテンプレに沿って書かれているのだという(以下一部引用)。

・主人公が何らかの理由で異世界へ転生・転移する。
・序盤で主人公がチートと呼ばれるほどの力を得る。努力を必要としないことが多い。
・ありふれた知識・能力でも異世界では英雄に等しい活躍ができる。
・行く先々でヒロインを助けてモテてハーレム作り。
・とにかく作品名が長く、作品名だけで内容がわかってしまうことが多い。

僕自身は、こうしたテンプレに沿って書かれた「なろう系」作品を読んだ経験がないので、それが面白いかそうでないかを言える立場にはないし、言うつもりもない。ただ、このテンプレを見てふと思ったのは、これは全部、書き手とそれを支持する読者の、露骨な願望の表れなのだろうなあ、ということ。自分が今生きている嫌な現実から逃れたい。他人を圧倒できる能力を手っ取り早く身に付けたい。それで周りの人たちから賞賛され、モテたい。

もし仮に、自分がそういう人生を実際に生きることができると言われたら……逆に退屈だろうなあ。人生は、ずっこけまくりの挫折しまくりで、どんなにカッコ悪くても、なりふり構わず這い上がって掴み取る方が、ずっと面白いと思う。