Category: Diary

書き続ける日々

毎日、本の原稿を書いている。

めちゃめちゃ捗っているわけではないが、悩んで書き澱んでいるわけでもない。日に1、2千字ずつくらいのペースで、淡々と書き続けている。急ぎすぎず、怠けすぎず、慎重に確かめながら、一語一句を積み重ね続けている感じだ。

頭の中の七割くらいは、自分の本の原稿のことでずっと埋まっているので、このブログを書いたりする余裕もあまりなく、他の人が書いた本を読む余裕もなく、いつもぼんやりと考えごとをしているか、モニタとにらめっこしてキーボードを叩いているか、といった日々が続いている。

進捗は、折り返し点を少し過ぎたところだ。この先、一つ二つ、難しそうなポイントが待ち構えている。そこをうまく書き抜けられたら、終わりが見えてきそうな気もする。ただ、本が完成するまで、まだまだ先は長い。草稿が完成したら、次は推敲とリライトだし、校正と編集作業もあるし、春頃までは、まったく気が抜けない。というか、春頃までにそうした作業が完了できるような状態に持っていかなければ、そもそもお話にならない。

がんばるしかないか……。淡々と、少しずつでも。

ありのままを掬い取る

僕は昔から、自分の文章や写真、本などを「作品」とはあまり言わないようにしている。そう呼んでしまうと、自分の中で何かしっくり来ない気がしてしまうからだ。

たぶんそれは、僕が編集者やライターとして、取材相手やデータと四六時中向き合う、リアリスティックな仕事からキャリアを開始しているからだと思う。作家やアーティストの方々のように、ゼロから何かを生み出して、それを作品という形にする、という意識がない(というかそういう創作が自分にはできない)。文章や写真によって何らかの表現を生み出そうとか、主義主張を込めようとか、そういう動機を僕が持ったことは、今までのキャリアをふりかえっても、全然ない。

書いたり撮ったりする時に自分の中で考えているのは、「ありのままを掬い取る」ということ。

目の前で起きたこと、自分で見聞きしたこと、五感で感じたこと、調べて裏を取ったこと、それらを一つひとつ掬い上げて、できるだけ色をつけずに、そのまま差し出す。それらをどう受け止めるかは、読者の方々に委ねる。そのプロセスでの自分の技術やアイデアや努力は、特に評価してもらわなくても構わない。伝えたいことをどれだけありのままに伝えられるかがすべて。自分の本づくりの動機は、それに尽きる。

昔、サントリーのウイスキーの広告に「なにも足さない。なにも引かない。」というコピーがあったが、僕にとっての本づくりも、それに近いのかもしれない。何も足さず、何も引かず、ありのままを掬い取り、本という形に託して伝える。ある意味、それが僕の本づくりの主義主張なのだと思う。

原稿執筆ぼっち合宿 in 湯河原


今週月曜から木曜までの3泊4日で、一人で温泉旅館に籠もってひたすら原稿を書くという、原稿執筆ぼっち合宿を実行してきた。滞在地に選んだのは、湯河原。夏目漱石や芥川龍之介など、明治・大正期の文豪も、よくここの温泉宿に籠もって原稿を書いていたという。

今回のぼっち合宿では、The Ryokan Tokyo YUGAWARAという旅館の「大人の原稿執筆パック」というプランを利用した。朝・昼・晩の3食の食事付きで、通常の食事付きの宿泊よりも割安に泊まれるプランだ。部屋は畳敷きの和室で、外からは秋虫の鳴き声がかすかに響くだけで、とても静か。館内ではWi-Fiも利用できる(が、接続が時々切れる)。いやが上にも執筆が捗りそうな環境だ。

温泉旅館なので、館内にはもちろん大浴場があって、朝方と、夕方〜夜の時間帯に、自由に利用できる。自分の場合は、朝起きてすぐに温泉に入ってさっぱりし、8時に朝食。午前中に執筆を進め、12時に昼食。午後も引き続き執筆し、18時に夕食。その後また温泉に入って、23時頃まで執筆。冷蔵庫に入れておいたビールを飲んで就寝、というスケジュールで過ごした。

ぼっち合宿のたくらみ

先月の半ば頃から、原稿の執筆に取り組んでいる。来年出す予定の、ラダックについての新しい本の原稿。

書き始める前に、全体の構成や各部分のプロットはきっちり決め込んでおいたし、原稿自体もまずまずのペースで書き進めているのだが、何しろ、まるごと一冊書き下ろしなので、それなりに時間はかかる。この間試算してみたら、最後まで書き終わるのは来年の二月、推敲とリライトが終わるのは三月頃になりそう。長丁場である。

こういう長丁場の仕事は、日々淡々とマイペースで取り組み続けるしかないのだが、たまにはスカッと気分転換したいし、家とは違う環境で執筆に集中できるならなおいい。そこで、しばらく前から噂で聞いていた、温泉旅館での原稿執筆プランというものに申し込んでみることにした。このプラン、1日3食の食事付きで、朝と晩には温泉に入れて、それ以外の時間はずっと和室の客室で原稿に取り組めるというもの。無料オプションで原稿進捗の確認や読後の感想なども頼める(僕は頼まないけど、笑)。この原稿執筆プランを、来週明けから3日間ほど使ってみようと思う。

泊まるのは、超高級とまではいかないものの、それなりに良い旅館で、普段ならそう何泊もできないお値段なのだが、今回は例のGO TOなんちゃらで宿泊料金が35%オフになるのを利用することにした。あの一連の政策自体にはいまだにまったく賛成できないが、それの原資が自分の納めた税金からむしり取られてるのも事実なので、極力ほかの人に迷惑をかけない原稿執筆ぼっち合宿というやり方で、納めた分を取り戻そうと考えた次第。

まあ、自分の性格上、自腹を切って合宿したら、元を取るべくめちゃくちゃ集中して書くと思うので(笑)、いい形でスパートをかけられるよう、頑張ります。

十月の東京

気がつけば、今日からもう、十月。

考えてみると、東京で十月を過ごすというのは、ものすごくひさしぶりだ。確か、2012年以来、7年ぶり。この時期は毎年、「地球の歩き方タイ」の取材で4週間ほどタイに滞在するのが常だったのだが、コロナ禍の影響で取材も無期延期になっているので、はからずもひさびさに十月の東京を体感できている、という次第。

まず、当たり前の感想なのだけれど、十月って、涼しいんだなと(笑)。いや、取材でタイに行くと、日本の夏の延長戦みたいな酷暑の日々がずっと続いて、全身黒焦げに日焼けして帰国するような状態だったから。この時期、東京ではどんな服を着ればいいのかなとか、寝具を秋冬に切り替えるタイミングはいつがいいのかなとか、割と新鮮な課題に直面している(笑)。

まあでも、とりあえずは、もうちょっと世の中が落ち着いてくれたらなあ、というところか。いろいろ制限されている中で、自分にできる範囲の仕事に淡々と取り組んではいるけれど、やっぱり、自由気ままにどこにでも行けるようになるに越したことはない。まあ、気長に待ちますか。