Category: Diary

栄光と凋落

午後、東京国立近代美術館で開催中の、ジャクソン・ポロック展を観に行く。噂に違わぬ、すごい迫力の作品群。全体の構成や、随所に添えられた解説もわかりやすくて、とてもいい展覧会だった。

ポロックといえば、流れる塗料を画面に流し込むように描く「ポーリング」という技法を使ったダイナミックな作風で有名だが、彼がその技法を使っていたのが1947年から50年頃までのごくわずかな間だったことは、今回の展覧会で初めて知った。ピカソをはじめとする同時代の画家たちの巨大な壁を乗り越えようと悪戦苦闘を繰り返し、ついに辿り着いた、彼ならではの作風。そのまま同じ技法を使い続けていれば、もっと長い間、世間からの喝采を浴び続けられていたのではないかと思う。

でも彼は、その作風をあっさり捨て、さらに新しい技法への挑戦を始める。その挑戦は世間では受け入れられず、失意と苦悩の中で酒に溺れたポロックは、飲酒運転中に起こした交通事故によって、44歳の若さでこの世を去った。

全盛期を築いた作風を捨てたポロックの選択は、愚かなことだったのか? 彼はただ、一人の画家として、表現者として、自分自身に正直なだけだったのではないだろうか? 世間の評価など関係なく、自分が描きたいものを描く。彼の生涯は悲しい結末を迎えてしまったけれど、栄光からの凋落を怖れないその勇気は、素晴らしいな、と僕は思う。

日々勉強

ガイドブックのゲラチェック作業も、どうにかこうにか一区切り。週明けには編集者さんに戻せる状態になった。少なくともあと2回は、これと同じような苦労をしなければならないのだが‥‥(汗)。

編集者として、ライターとして、それなりに長い年月を過ごしてきたけれど、新しい本に取り組むたびに、勉強になることがたくさん見つかるなあ、と思う。今回のガイドブックでも、編集者さんと会って打ち合わせをするたびに、ガイドブックならではの手法に基づいた指摘をしてもらって、「なるほど〜」と納得させられることがある。

結局、想像力なんだな。どういった読者がその本を買って、どんなシチュエーションで、何を求めてその本を読むか。読者の身になってシミュレートしてみると、思いがけない弱点が見つかったりする。自分はまだまだ、そういうところが甘い。日々勉強だな。

雌伏の日々

今週は、ガイドブックのゲラチェックにひたすら没頭している。ソファやテーブルいっぱいにゲラを広げ、赤ボールペンを握りしめ、ここを一行削ろう、この写真を修正しよう、とかいう、とてつもなく地味な作業。

取材に出かける時以外はほぼ自宅で作業しているので、きっと近隣の住民からは、「あそこに住んでる男の人は、いい年こいてニートなのかね」と思われてたりするのかもしれない(苦笑)。実際、近所を出歩く時は、不審者としか思えないズルズルの格好だしなあ‥‥。マンションの管理人さんが僕の素性を知ってくれているのは、せめてもの救いか。ちょっと家を留守にする時でも、連絡したら「またインドですか?!」とか言われるけど(苦笑)。

そんなこんなで、不審者と間違われかねない、雌伏の日々。

マルちゃん正麺

何日かに一度の割合で、おひるにインスタントラーメンを食べている。たいていはサッポロ一番の醤油味か味噌味で、キャベツなどの適当な野菜を一緒に茹で、生玉子を落とし、食べるラー油をちょっとかける。この組み合わせ、割と気に入っていて、ずいぶん長いこと習慣化している。

今日のおひるもラーメンにしたのだが、サッポロ一番ではなく、最近噂の、マルちゃん正麺を試してみた。値段もほぼ同じで、中身は乾燥麺と液体スープのみ。ほうれん草を刻んだのと一緒に茹でて、生玉子を入れるいつもの作り方にする。どんな味かと思ったら‥‥びっくりした。違う。全然違う。麺の食感も、スープの香ばしさも、予想のナナメ上を行くうまさだ。

この価格帯のインスタントラーメンは、コスト的にもそう凝った仕掛けはできないし、もう大きなイノベーションは起こらないのではと思っていたが‥‥見事にやられた、という感じ。人間、本気になれば、まだまだいくらでも工夫できるんだな。

明日も、ラーメン食べたくなってきた‥‥。

安売りはしない

昼、友人のライターとリトスタで会っておひるを食べる。同業者が集まると、当然のように互いの仕事の話になる(苦笑)。相変わらずの出版不況で、なかなか難しいねという結論にしかならないのだが。

まあでも、最近特に思うのは、景気が悪いからといって、自分の能力や自分が持っているコンテンツを、安売りすべきではないな、ということ。前にも同じようなことを書いたけど、きちんとした労働やコンテンツには、それにふさわしい対価が支払われるべきで、クライアントの懐具合などでその価値が決められてはいけないのだ。だから、多少の付き合いがあるからといって、あまりにもあんまりな条件を提示されたら、きっぱり断る勇気は必要だと思う。結局、それが自分の価値を守ることにつながるのだから。

というわけで、僕はもう安売りはしませんので、そこのところよろしく。