Category: Diary

旅の足音

冷たい雨の一日。夏はもう、すっかり終わってしまったようだ。

終日、家で仕事。超特急で書いて納品した南アフリカの取材記事は、特に大きな問題もなさそうで、ほっとした。たぶん来月かもうちょっと先に、某誌Webサイトに短期連載で載る予定。今日は再びタイ取材の準備に取りかかる。現地の関係者と連絡を取ったり、取材スケジュールを細かくいじったり、グラビアのレイアウトラフを考えたり‥‥。

次の旅の足音が、ぱたぱたと近づいている。この時期のタイ取材は今年で3度目だから、とりたててわくわくというわけでも、さりとて億劫というわけでもないけれど、日々休みなく捌かなければならないノルマの膨大さを考えると、毎度のことながら茫然としてしまう。取材への集中力だけでなく、体調管理や、旅をする中での安全管理にも気を抜けない。いつのまにか、そういう日々を送ることが僕の生業になってしまったようだ。

旅の足音を聞きながら、ふうっと息をついて、キーボードを叩く。

ギークな感じに

先週注文したMacBook Air 11インチが届く。CPUは1.6GHz、ストレージは256GB。メモリを8GBに積み増し、キーボードはUSにカスタマイズ。Retinaでないモニタが非力なのは仕方ないが、それ以外は特に不満もなく、良い感じ。よくできたラップトップだと思う。

昼の間はタイ取材の下調べとスケジュールの組み立てを進め、それが一段落した後、夜から意を決してMBAのセットアップ。容量の関係で写真データはほぼコピーしないので、その分早いと言えば早い。噂に聞いていたアドビ製品の移行トラブルもなかったし。まあでも、メールアカウントとか、細かい設定とか、何だかんだでひと通り片付くまで夜半過ぎまでかかってしまった。

仕事机の上に、ラップトップが2台。いったい、どこのギークだ‥‥。まあ、これでも昔、Mac専門誌のへなちょこ編集者だったこともあるんだけど。過去は遠くなりにけり。

金木犀

連休中、というより先週アフリカから戻ってきて以来、ほとんどずっと働きづめだったので、今日は丸一日オフ。昼から昭和記念公園に出かける。

今日のお目当ては、満開になっているというコスモスの花と、以前たまたま食べて以来ぞっこんの五浦ハムのハム焼きだったのだが、思いのほか心を掴まれたのは、金木犀の香りだった。西立川の駅を降り立ったとたん、青空の下を吹き渡る風に乗って、何とも言えない爽やかな匂いが漂ってくる。深く呼吸をして吸い込むと、身体の中の澱みがすっかり洗い流されていくような気がする。

公園内を歩いていると、それこそ至るところで金木犀の木々が花を咲かせている。昔、この公園の設計をした人は、秋になるとこんな風に金木犀の香りがたちこめることを想像していたのだろうか。だとしたらその人に、こんな清々しい気持にさせてもらったお礼を言いたいような気がした。

キリンを撮る

この間の南アフリカ取材では、ピーランスバーグ国立公園で大小いろんな種類の野生動物の写真を撮った。何しろ相手は動物なので、簡単に撮れるようなことはほとんどなく、いつも右往左往しながら連写を重ねて、当たりが混じるように祈るような撮り方しかできなかった。

たとえば、ゾウのように図体の大きな動物なら、ある程度距離が近ければいくらでも好きなように撮れると思いがちだが、納得のいく表情の写真を撮ろうとすると、ゾウはなかなか手ごわい。長い鼻がしょっちゅうくるんくるん動くので、中途半端にフレームから外れたり、しっくりこない形になったりしてしまう。

一番苦労させられたのは、キリンだった。背の高い草食動物ならではの警戒心の強さもあるが、いざ撮れそうな位置にポジショニングできても、あの長い首はものすごく厄介だ。右に左にゆらゆら傾いて、顔にフォーカスを合わせてもすぐに外れてしまったり、首の先だけひょいとフレームアウトしてしまったりする。あれには本当にあたふたさせられた。

動物撮影の経験値を積むのには確かにいい機会だったけど、あの分野の奥の深さを思い知らされたのも確か。ネイチャーフォトグラファーの人たちって大変だ、ほんとに。

Wi-Fiの呪縛

帰国してからというもの、連休とかまったく関係なく、日々仕事に追われる。来年春に出す新しい本の打ち合わせ。南アフリカで撮った写真のセレクトと現像、そして原稿の執筆‥‥。来週明けには別の仕事の打ち合わせが立て続けに。そして再来週の月曜日からは、毎年恒例、約4週間のタイ取材だ。

ここ数年、タイのような観光の盛んな国はもちろん、ラダックのような辺境の地でも、宿でWi-Fiにつないでネットが使える時代になった(停電したり、上位回線が頻繁に落ちたりするけど)。一昔前は「いや〜、何しろラダックなんで、ネットにつなぐ必要のある仕事はできないですね〜」と言い訳することもできたのだが、もはやその手は通じなくなりつつある。

なので、僕もついに重い腰を上げて、海外取材用にMacBook Air 11インチを導入することにした。長期取材時には撮影済みデータを外付ハードディスクにバックアップするのにも使うので、USB-Cポートが一つしかないMacBookではなく、枯れた仕様のMacBook Airを選んだ。この僕ごときが、あろうことかMacの2台体制である。

こういう体制にしてしまうと、旅先でもむやみに忙しくなってしまうんだろうなあ‥‥宿で寝る暇もなくなるかも‥‥Wi-Fiの呪縛、恐るべし。