Category: Diary

最高の勲章

ラダックの風息[新装版]」の発売以来、トークイベントに出演したり、写真展を開いて在廊したり、先週末はアースデイ東京にも顔を出したりしていて、たくさんの読者の方々に直接お会いする機会が増えた。会う人ごとにいろんな感想をいただいて、それぞれとてもありがたいし、参考にもなるのだが、以前から今に至るまでずっと、言ってもらえると一番うれしい感想がある。

「ヤマモトさんの本を本屋さんでたまたま手に取って、読んで、それでラダックに行っちゃいました!」

こういう方が、一人や二人ではないのだ。本当にびっくりである。だって、ハワイや台湾とはわけが違う。インドの中でもとりわけ奥地のラダックなのだ。飛行機代だって安くはないし、時間もかかるし、気力も体力も使う。そんな場所にわざわざ行ってもらうような背中の後押しを、自分の書いた本がさせてもらっているなんて。

世間で権威のある人たちがくれる賞よりも、本の売り上げがただ単に伸びるよりも、僕にとっては、自分の本を読んでラダックに行ったと言ってもらえるのが、何物にも代えがたい、最高の勲章だと思っている。誰かの背中を、ほんのちょっと後押しするための本。そういう本を、力が尽き果てるまで、ずっと作り続けたいと思う。

本当に、ありがとうございます。これからもがんばります。

トレーニング中

最近、ずっと忙しい状態が続いていて、朝早くから取材に出かけなければならない日も多い。そういう時は前日のうちにコンビニで翌朝の朝ごはんを買っておく。サンドイッチとか、おにぎりとか。だから近頃は、ほぼ毎日のように近所のコンビニに立ち寄っている。

そのコンビニ、しばらく前から急に、店内にいる店員さんがほぼ全員、外国人の若者たちに切り替わった。誰も彼もみな、胸に「トレーニング中(名前)」という名札をつけている。二つあるレジを両方ともトレーニング中の彼らが担当してるのだが、彼らを指導する立場の日本人のスタッフはどこにも見当たらない。思い切ったことをするというか、極端な切り替えだなあ、何か裏であったのだろうか、と僕は一人訝っていた。とはいえ、彼らトレーニング中の若者たちは、みんな丁寧な言葉遣いで、すごくがんばっているように見えた。

で、今日の夕方、そのコンビニに立ち寄ってみると、ひさしぶりにレジ打ちの店員さんがみんな日本人だった。しかし……何だろう。変な感じに場慣れしちゃってるというか、いろいろいい加減というか。妙にカッコつけた巻き舌っぽい口調、商品を扱ってるのに荒っぽい手つき、おつりの雑な渡し方。

この間のトレーニング中の外国人の子たちの方が、よっぽど丁寧だった。君ら、再トレーニングした方がいいよ。

旅費交通費

昨日は十日市場、今日は船橋日大前。今年はやけに遠い場所での取材が多い気がする。予定が合わなくて断った取材の中にも、秦野とか、高崎(!)とか、いろいろあったし。

それでも気のせいかなと思って、月末に依頼元に送る予定の旅費交通費の請求書のファイルを見てみたら、入力済みの項目だけで、1万7000円を超えている(苦笑)。去年の4月も2万円を超えていたのだが、去年は最後の最後に茨城での取材1件だけで8000円以上かかっているので、それを差し引いて考えると、今年の遠隔地への飛ばされっぷりが際立っている。

在来線やスクールバスを乗り継いで時間のかかる行程を行き来するのって、地味に消耗するんだよな‥‥。むしろ、海外にLCCでない飛行機で行く方がラクなくらいだ。そして明日も朝5時半起き。嗚呼。

ヤマ場を越えて

先週の土曜日は、モンベル御徒町店での関健作さんとのトークイベントだった。会場はおかげさまで大盛況で、トーク自体も、たぶんそれなりにうまくいったのかなと思う。

イベントの後、僕の本を手に長い列を作ってくださった方々一人ひとりにサインを進呈し終え、会場の撤収作業をしていた時、急にがくっと、身体の力が抜けるような感触を感じた。神経の緊張が急に解けたとか、それまであまり水分を摂ってなかったとか、そもそもこれまで忙しすぎた疲労蓄積の反動とか、原因はいろいろあったのだろう。とにかく、頭がふわふわというかふらふらして、どうにもつらかったので、打ち上げは二次会をパスして抜けさせてもらって、這うようにして家にたどり着き、そのままぶっ倒れて寝てしまった。

日曜日も、午後のリトスタに在廊している間はまだふらふらの余波が残っていたのだが、夜から晩ごはんをビールと一緒に食べ始めて、やっと落ち着いたというか、人心地ついたというか、普段の自分の感覚に戻れたような気がした。その後またぐっすり寝て、今日はもう、すっかり大丈夫。通常のお仕事モードである。

とにもかくにも、トークイベントという今月の最大のヤマ場は越えた。……まあ、来月もあるんだけどね。

知らない町へ

午後、中央線に乗って、西へ。八王子で横浜線に乗り換え、十日市場という駅で降りる。今まで聞いたことのない場所。今日はここにある大学で取材。

駅から取材先まで、バスに乗っていこうかと思ったが、グーグルマップを見ると歩けなくもなさそうだったので、てくてく歩く。学校帰りの子供や学生さんが多い。明るくて感じのいい雰囲気の住宅街や集合住宅。自然も割と残っていて、ゆるやかな空気が漂っている。こんな町があったのか、と歩いていて何だか楽しくなる。

取材はどうにかつつがなく終え、帰りはバスで駅へ。八王子までの電車は混んでて席に座れず、腹が減ったので、八王子で駅を出てラーメンを食べた。片道2時間近くの道程はさすがに遠い。今日の行き帰りで、来月の取材資料に買った新書を一冊、最初から最後まで読み終えてしまうほどだった。

来週明けにももう一回、まったく同じ道程の旅をすることになっている。