Category: Diary

本にできること

昼、渋谷で打ち合わせ。ネパール料理屋でダルバートをいただきながらのランチミーティング。

「僕、大学生の時に、ヤマモトさんの本を読んでたんですよ。登戸の本屋さんに並んでたのを見つけて、普通に買って読ませていただいてました」と言われ、びっくりするやら、恐縮するやら。それと同時に、もうそんなに歳月が過ぎたのか、とも思う。「ラダックの風息」の初版を出してから、気がつくと7年の歳月が過ぎていた。

僕の知らないところで、誰かの家の本棚に、どこかの図書館の片隅に、僕の作った本がある。誰かの人生に、本当にほんのちょっとだけかもしれないけど、何かを残す。そうなっていたとしたら、とても嬉しいことだ。それは、本だからこそ、できることなのだとも思う。

「旅の本を作るという仕事」について、来年の早い時期に、人前で話をさせていただくことになりそう。本決まりになったら、よろしくお願いします。

クリスマスという風習

いい天気。そこまで寒くもない。午後、ぶらぶらと歩いて吉祥寺へ。

街はまさにクリスマス商戦たけなわといったムード。平日なのに結構人が多い。レディースの店の中で男の子たちが、メンズの店の中で女の子たちが、それぞれいそいそと店員さんに相談しながら、プレゼントに買うものを選んでいる。店員さんたちも張り切って、嬉しそうに相談に乗っている。

こういう光景を見ていると、日本におけるクリスマスという風習も、悪くはないな、と思えてくる。そんな街の場面を僕は通り越して、無印良品に自分用の靴下とトランクスを買いに行くのだった。

命の価値

今年も、誕生日を迎えることができた。

この歳になると、自分の生まれた日だからといって特に何の感慨も湧かない。ある時そう口にすると、「人が生まれて、一年ごとに誕生日を迎えられるなんて、すごいことじゃないか」と言われた。確かにその通りだ。僕は自分の境遇に対する感謝の気持を忘れていた。

シリア。イラク。ミャンマー。理不尽な暴力の連鎖。人が人を傷つけ、殺すことが、まかり通ってしまう世界。それによって誕生日を迎えたくても迎えられなかった人が、今年一年だけで、世界には数え切れないほどいたはずだ。どうして人間は、愚かな所業を止めることができないのか。

命の価値とは、いったい、何なのだろう。

旅の日々と日常の日々

今年もまあ、それなりにいろんな場所に旅をした。沖縄、ブータン、ラダック、アラスカ、タイ。さっき電卓で計算してみたら、旅に出ていた日数は合計で80日。2カ月半ちょいといったところか。夏から秋にかけては行ったり来たりのくりかえしだったので、日数以上にせわしなかった印象はあるけれど。

まだ完全に確定してはいないのだが、来年は、インドにたぶん丸2カ月。毎年恒例となってきたタイにも約4週間、行くことになると思う。この時点ですでに今年より不在期間が多いという(苦笑)。それ以外にも、短期ではあるけど、個人的な取材ではアラスカとか、仕事の取材としても1、2カ所、別の場所に行くかもしれない。先が思いやられる展開である。

旅の日々と、日常の日々。僕はどちらの時間も好きだ。カメラを手に、たった一人で異国の空気に身を浸している時間も好きだし、東京の自分の部屋でコーヒーを飲んだり、気のおけない人たちと酒を酌み交わしたりする時間も好きだ。ただ、旅に出れば、どこかで何かしら、自分から人に伝える価値のあることをインプットさせてもらえる。ある意味それが今の自分の仕事というか、役割になっている。だから僕は旅に出るのかなとも思う。

自分が旅というものを仕事の主戦場にするようになるなんて、10年前には想像すらしていなかった。コストパフォーマンスを考えると、あまり賢い選択だったとは思えないけど(苦笑)、とりあえず、力が尽き果ててどうにもならなくなるまでは、やり続けてみようと思っている。

それは誰の言葉?

夕飯にキャベツとコンビーフを煮ていた時、電話がかかってきた。フレッツ光のお得な料金プランがどーたらこーたら、という電話営業だったのだが、何と言うか、とても失礼な印象の電話だった。

言葉遣いが失礼というのではない。それは割と普通だったのだが、こっちが答えるかどうかのうちに、ダダダーッとものすごい勢いで自分の言いたい情報をしゃべりまくるのだ。まったくもって、あちらの手元に用意されているであろうマニュアル通りに。こっちがどんな反応や言葉を返すのかとか、全然おかまいなしに。

人と話をする業務の発生する仕事には、言葉遣いに関するマニュアルは別にあっていいと思う。編集・校正の仕事で表記統一ルールがあるみたいに。ただ、会話というのはあくまでも、相手に応じた反応があってこそ自然に成り立つものだ。ただただ機械的にしゃべくりまくるためのマニュアルなんて、相手に悪印象しか与えないと思う。

それはいったい、誰の言葉? 相手のことを考えずにマニュアルを読み上げるなら、ペッパー君に任せといた方がよっぽどうまくやってくれるよ。