Category: Diary

Overwhelming

昨日は、六本木の国立新美術館で開催中のミュシャ展へ。彼の晩年の連作「スラヴ叙事詩」20点を観る。もう本当に、ぐうの音も出ないほど圧倒的で、素晴らしいとしか言いようがない。一人の画家の、才能と情熱と理想と執念と狂気が、のたうつように大画面から溢れ出ている。頭が軽く痺れてくるほど集中して見続けた後、ブリュードッグのバーでIPAビールを飲みつつ、余韻に浸る。

ああいう圧倒的、Overwhelmingな作品には、確かに人の心をぐわんと揺さぶる力がある。僕が生業にしている文章や写真の世界でも、そういう圧倒的な作品を生み出すことを目指す人たちは大勢いる。自分はどうなんだろう? 圧倒的なものを生み出せるなら、それに越したことはないのかもしれない。でも、自分が伝えようとしていることは、もしかすると……Overwhelmingではない方がうまく伝えられるのかもしれない、とも思う。良い意味での「軽み」のような。何気ないけれど、ふっと心に触れるような。

咲き誇る満開の桜ではなく、この胴吹き桜のように。

変わらない味

午前中、有明方面で取材。終わった後、銀座に向かう。三井昌志さんの写真展がキヤノンギャラリーで開催中だったので。ちょうど関健作さんもいらしてて、3人でしばらく話をしたり。

銀座で何かおひるを、と思って、そういえば前に閉店したニューキャッスルが、新オーナー&別の場所で復活していたはずと思い出し、行ってみた。店の雰囲気は前とはずいぶん変わっていた(そりゃそうだ、前の古い建物の雰囲気は独特すぎた)が、味は昔食べたあの辛来飯(カライライス)と同じだった。

その後は神保町に移動し、これまた昔からある喫茶店、さぼうるで、生いちごジュースを飲んで休憩。さかいやスポーツでアウトドア用のシャツやアンダーウェアを物色し、早めの夕食に、これまた古株のスヰートポーヅで餃子中皿定食。

今日行った店で口にしたのは、どれもこれも、昔から変わらない、懐かしい味の料理だった。流行に乗ったり、奇をてらったり、世の中にはいろんな食べ物を出す店があふれているけれど、ずっと変わらない味を作って出し続け、それを支持し続ける人も大勢いるというのは、やっぱりすごいことだと、しみじみ思う。

太陽の光

午後、多摩方面で取材。いつもよりややプレッシャーのかかる取材だったけど、どうにか無事に終える。帰りに立川で味噌ラーメンを食べ、三鷹ではコーヒー豆などを補充し、家路につく。

いつのまにか、すっかり日が長くなっているのに気付く。6時近くになっても、まだだいぶ明るい。太陽の光が降り注ぐ時間が長くなれば、それだけ大地が温まる時間が増える。季節はそうして巡っている。

太陽の光は、地球上のほぼすべての生命のエネルギーの源だ。そのかけがえのなさは、アラスカを旅していると特に強く感じる。同じ面積で比べると、極北の大地が受け取れる太陽エネルギーの量は、熱帯などよりもはるかに少ない。長く厳しい冬と、一瞬の夏。ほんのささやかな光を糧に、ツンドラの生き物たちは命をつないでいる。その儚さと、だからこそ持ちうる強さに、心を打たれる。

あちらではそろそろ、雪が解けて、あたり一面がぬかるみになる頃だ。クマたちも、目を覚ましているかもしれない。

差別されて、わかること

ユナイテッド航空がアジア人の乗客をオーバーブッキングだからと機内から引きずり出した事件で、ずいぶんと世の中がかまびすしい。まあ、あれはほぼ間違いなく、アジア人に対する差別行為の一端だと思う。

僕は、今までそれなりに長い時間を旅に費やしてきたこともあって、異国で差別を受けた経験もそれなりにある。アメリカでも、ヨーロッパでも……欧米ばかりだな、あらためてふりかえってみると。つまり、日本人も、欧米諸国ではともすると、差別の対象になりうるということだ。

その時の状況にもよるが、差別をされると、想像以上に精神的に大きなダメージを受ける。差別をした側が想定しているより、それこそ何倍もきつい。だから、差別された時のつらさや痛みは、実際に差別される側に立ってみないと、本当にはわからない。

でも、旅をしていると、差別を受ける回数の何百倍も、心穏やかで優しい人々に出会う。対等な目線で向き合ってくれる人々の素晴らしさに気づくことができる。異国を旅することの一つの大きな意味が、そこにある。

平日の夜に映画

昼の間に原稿を書き進め、夕方、新宿へ。1週間、1日1回だけ上映されているテルグ映画「バーフバリ 伝説誕生」を観に行く。今回のは前編で、後編も近い将来国内で上映予定らしいので、レビューは全部観てからにしようと思うが……濃い。濃い濃い濃い。めっっっっちゃ濃い。これ以上濃い映画を作るのは不可能ではないかと思う。いや、ほめてるんだけど。

それにしても、平日の夜にふらっと映画館、というのも、なかなかいいものだなと思う。仕事の都合さえつけられれば平日も週末も関係ない、フリーランスならではの気楽さもあるが。観終わって映画館の外に出る時、夜がすっかり更けていて、ちょっとさみしかったりするところも。

さて、今夜はゆっくり寝て、明日からまたがんばろ。