Category: Diary

鉛筆をナイフで削る

僕の仕事机の上のペン立て(古い陶製のシェービング・カップに文具を詰め込んでいる)には、鉛筆が一本、刺さっている。いつ、どこで手に入れたのか忘れてしまったが、アンケートか何かを記入する時に手渡されて、「差し上げますよ」と言われて、そのまま持ち帰った鉛筆だと思う。

普段、仕事で使う筆記具はシャープペンかボールペンなのだが、ブロックメモにささっとメモを書く時(買い物リストや、家から取材先までの乗り継ぎ時刻など)には、その鉛筆をよく使っている。いつのまにか、少しずつ愛着も湧いてきている。

鉛筆なので、使っていると当然、芯がちびて丸くなってくる。鉛筆削り器は今うちにはないので、芯がちびてきたら、カッターナイフで削る。小学生の頃、鉛筆をナイフでうまく削れるようになりたくて、一時期ちょっとハマっていたことを思い出す。ひさしぶりでも指先は意外と覚えているのか、今でも意外ときれいに削れる。芯がぽきっと欠けないように、最後にちょっと用心深く仕上げたりして。

最近の小学生は、ナイフで鉛筆を削ったりしているのかな。してないのかな。楽しいよ、やってみると。自分で削った鉛筆を使うと、ほんのちょっと、勉強するのが楽しくなると思う。

清澄白河で深川めし

先週の土曜は、夜から渋谷で「タレンタイム」を観る前に、清澄白河のあたりを少し散歩した。

清澄白河の駅で降りたのは、たぶん初めてだと思う。まったく土地勘もイメージもなかったのだが、背の高い建物があまりなくて、空が広々と見えるなあ、というのが第一印象。昭和の頃の雰囲気を残す街並には、どこかしらモダンな香りも漂っている。少し前にオープンしたブルーボトルコーヒーは、清澄白河の名を世間に知らしめるきっかけになったが、それ以外にも感じのいいコーヒー豆の焙煎屋さんが、この街にはあちこちにある。ベーカリー、洋菓子店、ワイナリー、ビアバー。古い建物をうまく改装して造られた、新しめの店も結構多い。

映画を観る前の腹ごしらえに、たまたま通りがかった深川釜匠という店に入って、深川めしを食べる。深川めしには、アサリやネギを煮込んだものの汁かけごはんタイプのものと、アサリの炊き込みごはんタイプのものがあるそうだが、この日食べたのは炊き込みごはんタイプ。「うそっ?!」というくらい大量のアサリが混ぜ込まれている。ボリュームたっぷりだけど、あっさりしていて、とてもうまかった。卓上に無造作に置かれているサランラップの箱が謎だったのだが、聞くと、深川めしを食べ切れなかった人が、余った分をラップに包んで持ち帰れるようにしているそうだ。

知らない街を歩くのは、やっぱり面白い。今度来る時は、汁かけごはんタイプの深川めしも試してみたいな。

改正酒税法

いつのまにか、6月になっていた。

なんでも、世の中では今日から、いろんなものが値上がりするらしい。郵便料金の値上げは、書類や請求書を送るのに地味に響く。電気代やガス代ももちろん影響を受ける。バターとかはまあいいとして、ビール……ビールが値上がりだと?!

聞くと、改正酒税法とやらの施行で、ディスカウント店などでの安売りが規制され、その影響でスーパーなどでも底値が上がることになるらしい。今後の状況の推移にもよるが、1割くらいは高くなるのではないかと。……解せぬ。

まあ、今の日本の政府は、何から何まで解せぬことだらけで、もうつける薬も見当たらないけど。

アトレやディラよりも優先すべきこと

午後、八王子で大学案件の取材。駅からさらにバスで移動した場所だったので、何気に遠かった。帰りに煮干しラーメンを食べ、中央線で帰路につく。

武蔵小金井駅だったか、発車しかけた電車が急停止した。人身事故だろうか、と不穏な想像が頭をよぎったが、反対側の空のプラットフォームから誰かが線路に転落した、とのアナウンス。何が原因だったのかはわからないし、怪我されていたかもしれないが、とりあえず、ほっと安堵する。

ここ何年かの間に、中央線の各駅は、一つの設計図をコピー&ペーストしたかのように、どこもかしこも同じような佇まいになり、アトレやディラという名前の同じような商業施設がくっつく形になってきている。それはそれで別に悪くはない(かといって別に良くもない)が、そういう駅や商業施設の改装よりも先に、各駅のプラットフォームにホームドアを設置するのを優先すべきではないだろうか。中央線は昔から、人身事故や飛び込み自殺の多い路線だ。ホームドアがあるだけで、どれだけの命が失われるのを食い止められることか。

最近では、列車の1両あたりのドアの数が異なっても対応できるような新しいタイプのホームドアも登場しつつある。商業施設よりも何よりも、まずは人命を守ってほしい。

初夏の土曜日

昨日は梅雨っぽい天気だったが、今日は昼から晴れて、風も吹いて爽やかな日になった。

午後、広尾で昨日から始まった吉田亮人さんの写真展へ。今日は会場で吉田さんと石井ゆかりさんとの対談があるとのことで、すべり込みで拝見させてもらった。先日のKYOTOGRAPHIEで吉田さんが発表した「Falling Leaves」の制作過程の話も。写真家をやめようと思ったほど悩み抜いた末、写真家として、人としての原点と、これからの道を見出した吉田さん。大きな一歩を踏み出されたのだな、と思う。

その後、神保町に移動して、スヰートポーヅで餃子中皿定食をたいらげ、少し書店街をぶらつき、夕方から岩波ホールでチベット映画「草原の河」を観る。山あり谷ありの大感動作とかではないけれど、静かで、しみじみ、じんわりとくる映画だった。標高の高い場所が、少し恋しくなった。

……まあ、あと1カ月後には、行くんだけども。そう考えると、それはそれで、何だか茫然としてしまう。