「PATHAAN/パターン」

仕事がほんの少し落ち着いたので、公開初日の「PATHAAN/パターン」を観に行った。インド本土では2023年1月の共和国記念日に公開された話題作で、ボリウッド発の作品としては乾坤一擲の大ヒットを記録した。主演はシャー・ルク・カーン、ヒロインはディーピカー・パードゥコーン、敵役はジョン・エイブラハム。「YRFスパイ・ユニバース」の作品ということで、YRFの以前のヒット作「タイガー 伝説のスパイ」で主演を務めたサルマン・カーンもカメオ出演する(「タイガー」や「ウォー」の次回作にシャー・ルクが出演する可能性も、大いにありそうだ)。

物語は、2019年のインドのジャンムー・カシミール州解体に反発したパキスタンの将軍の一人が、国際テロ組織にインドへの報復を依頼し、その企みに対してシャー・ルク演じるパターンが立ち向かっていく……という、スパイアクションものの王道路線。贅沢かつ丁寧に作り込まれた迫力の映像とサウンドを、最初から最後までどっぷりと堪能できる。シャー・ルク・カーンという唯一無二の存在の魅力と強みを監督やスタッフが熟知していることがありありと伝わってくる、シンプルに面白い作品だった。

「パターン」(パシュトーン人)という主人公のコードネームは、かつてアフガニスタンでの作戦中、身を挺して現地の人々を救った出来事に由来していると劇中では語られている。その一方で、この物語の発端に位置付けられているジャンムー・カシミール州の解体の際には、スリナガルを中心に多くのイスラーム教徒がインド政府によって弾圧されている。娯楽大作にこのような話を結びつけるのは野暮なのだろうが、カシミールに暮らすイスラーム教徒たちに対し、パターンはどう感じているのか、個人的には知りたいと思う。

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