夜、眠っている間に、夢を見る。
ものすごく鮮明でリアルな夢だなあ、と、夢を見ている間は感じているのだが、目が覚めた後、どんな夢だったのかは、全然思い出せない。ただ、夢を見ながら、「あ、これは、前に見た夢の続きじゃないか。同じ世界の地平から続いている夢だ」と、感じることはある。夢を見ている間だけ続いている、もう一つの世界が、どうやら自分の中にはあるらしい。
たぶんその世界では、僕はもう少し若くて、実際に若かった頃のいろんな逡巡や失敗をもう一度なぞるように、右往左往している。夢の中ではうまくいくこともある。夢の中でもやっぱり失敗することもある。そして目を覚まし、ああ、夢だったのかと我に返ると同時に、夢で見ていた世界はシューッと脳裏から消えていく。でも、別の夜に見る夢で、その世界はまた現れる。
そんな夢の切れはしを、パッチワークのように継ぎ合わせたら、どんな世界になるのだろう。もしかしたらありえたかもしれない、もう一つの僕の人生になるのだろうか。
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吉田亮人『しゃにむに写真家』読了。吉田さんを写真家たらしめているのは「誠実さ」なのだと、あらためて思った。被写体である相手に対してだけでなく、自分自身に対しても。その誠実さが、嘘偽りのないまごころを、吉田さんの写真に宿らせる。僕自身も、文章を書く時、写真を撮る時、できるだけそうありたいなあと思う。