午後、八丁堀で打ち合わせ。先日、出版が承認された新しい書籍についての打ち合わせ。
意気揚々と乗り込んだ僕の出鼻は、ものの見事に砕かれた。本の制作に割り当てられた予算が、思っていた以上に少ない。自分の取り分が少なくなるのはもともと覚悟していたが、今回はかなり大勢の方に協力してもらって中身を作っていく本なので、その方々や制作に関わるスタッフにお支払いする報酬が、本当に申し訳ない金額になってしまう。紙に印刷されたその無機質な数字を見て、顔から血の気が引いたのが自分でもわかるほど、がっくりきた。
この設定では、何人もの人に断られても仕方ないかもしれない。あれほど作りたいと思い続けてきた本が、描いていたイメージとかけ離れたものになってしまうかもしれない‥‥。
打ち合わせの席上、まずはデザインをお願いしようと考えていたデザイナーさんに、電話で連絡を取ることになった。正直、ちょっと怖かった。金額を伝えたら、スピーカーの向こうから落胆した声が聞こえてくるのではないかと思ったからだ。でも、ひさしぶりに電話でお話ししたその方は、間髪入れずに明るい声でこう言ってくれたのだ。
「ヤマタカさんの本なら、いくらであってもやりますよ!」
本当に、心の底から、ありがたいなあ、と思った。やるしかない、とも思った。きつい道程なのは、百も承知。それでも、がんばる。いい本を作る。そうすることでしか、僕には返せるものがない。