リトスタのミヤザキ店長のお母さんが、昨夜亡くなったという知らせを聞いた。まだ六十三歳だったという。
ミヤザキさんのお母さんとは二、三度お会いしたことがあるくらいで、ちゃんとした形で話をさせていただいたのは、去年の春、「リトルスターレストランのつくりかた。」の執筆中に一時間ほどインタビューさせてもらった時だけだったと思う。あのミヤザキさんのお母さんだからさらにパワフルな方なのかと思いきや、とても穏やかで、女性的なたおやかさを纏っている方だなあという印象。でも、その内に秘めた芯の強さのようなものは、話をしている時にも伝わってきた。
ちゃんとお会いしたのはその時だけだったのに、訃報を聞いた時、もっとずっと親しくしていた方が亡くなったような気分になったのは、お母さんについて、ミヤザキさんとokayanから本当にたくさんの話を聞いていたからだろうか。
ミヤザキさんが子供の頃から、お母さんは吉祥寺でパブの仕事を続けていた。昼夜逆転しているような生活でも、家事ではけっして手を抜かなかったという。とりわけ心を込めて作っていたのが料理で、ミヤザキさんが高校生になると、お母さんは毎日お弁当を用意していた。そのお弁当は本当においしかったそうで、クラスメイトに「厚焼き玉子、おいしそう!」「その唐揚げ、これと交換して!」とよく言われていたのだとか。
厚焼き玉子も、鶏の唐揚げも、リトスタの不動のレギュラーメニュー。リトスタで出される料理の味の基準は、初代料理長であるミヤザキさんのお母さんの料理だ。お母さんの料理がなければ、リトスタというお店自体が存在し得なかったかもしれない。
お母さんの料理の味は、娘であるミヤザキ店長と、お店のスタッフたちが受け継いでいく。この文章を読んでくださった方は、もし次にリトスタを訪れる機会があれば、ちらっとそんなことに思いを馳せていただければと思う。
謹んでご冥福をお祈り致します。