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ちっぽけな思いから

最初に、自分一人だけで一冊の本を書こう、と思い立った時、心に決めていたのは、自分という人間の存在ができるだけ表に出ないようにしよう、ということだった。

自分の目の前で起こる出来事の一つひとつを丹念に見定めて、文章と写真で、それらをできるだけ忠実に描写する。個人的な感傷や思い入れで邪魔しないように気を配りながら、言葉を選ぶ。自分という人間が何者なのか、読者にはまったく気にされなくて構わない。そう思いながら、本を書き上げた。

そうして完成した本を読んだ僕の知り合いの何人かは、異口同音にこう言った。この本は、まぎれもなく、あなたの本だ。この本には、あなたの思い入れが、これ以上ないほどあふれている、と。そんな感想が返ってくるとは想像もしていなかったので、僕はすっかり面食らってしまった。

世界のとある場所とそこで暮らす人々のことを、徹底的に追いかけて、ただひたすらにそれを伝えようとしていたら、そこに立ち現れたのは、僕という一人のちっぽけな人間の姿だったのだ。

だったら、その逆は、あるのだろうか。

僕という一人の人間の、本当に個人的な、ちっぽけな思いから、遥か彼方への旅を始めたら、その先は、どこにつながっていくのだろうか。この世界の、底の見えない深淵につながっていくのだろうか。何かの理が、目の前に現れたりするのだろうか。

その旅は、もう始まっている。

「地上」2018年1月号 「極奥物語 第七話」


12月1日(金)発売のJA(農協)グループ刊行の雑誌「地上」2018年1月号のカラーグラフに隔月で掲載されているシリーズ「極奥物語」に、ザンスカールについての写真紀行「苛烈の谷の安息」を寄稿しました。

この雑誌は一般の書店では販売されていませんが、下記のページから申し込めば、単月号を1部から購入できます。必要事項をフォームに記入して申し込むと、雑誌と請求書兼払込用紙が送られてくるとのことです。

「地上」購読申し込み|地上|雑誌|一般社団法人家の光協会

写真は1枚を除いてすべて今年の夏に撮影したもので、文章も書き下ろしです。よかったらぜひご一読ください。

胸突き八丁

ここ半月ほどの間、新しい本の執筆・編集作業にひたすら没頭していた。一時はかなり焦っていたのだが、どうにか遅れを取り戻し、今日までに、約8割のページの準備作業が終わった。8割……ページ数だけで言えば。

ここから先、残りの数十ページは、半分以上が新規の書き下ろしで、残り半分もかなり手間のかかる作業が絡んでくる。文字通り、胸突き八丁。しんどい日々が続くのは間違いない。それもまあ、楽しいのだけども。

他にもタイ案件や大学案件もこれから作業や取材が入ってくるし、うっかり風邪とか引いたらそれこそスケジュール的に大変なので、いろいろ油断しないように、ぼちぼち、やっていきます。

Days in Ladakh

ラオスへ

タイからの帰国早々、仕事がいろいろ崖っぷち状態なのには、いくつか理由がある。そのうちの一つが、来年の年明け早々、半月ほどラオスに行く予定を入れてしまったことだ。

もともとラオスは、いつか旅してみたいと何年も前から思っていた国だった。タイ取材の時にはラオスとの国境の近くにある街も取材するから、文字通り、ラオスの目の前までは何度も行ったことがある。ただ、実際に訪れるチャンスはなかなかなくて、僕の場合、どうしてもラダックやアラスカの方が取材の優先順位が高くなってしまうから、このままだとラオスにはずっと行きそびれたままになってしまうのでは、と思っていた。

そんな折、スターアライアンスのマイルがそこそこ貯まってきて、時期さえ選べば、東南アジア方面までならタダで往復できる状況になった。1月は東南アジアでは乾季のオンシーズン。ここで使わなければマイルの一部の有効期限も切れてしまう。なので、関係各所に頭を下げて、ラオスに行く計画を進めることにした。個人的な旅ではあるけれど、現地で体験したことは写真と文章にまとめて、「BE-PAL」のWeb連載などで発表するつもりだ。

正直、灼熱のタイ取材から戻ってきたばかりの今の時点では、また東南アジアか……と思わなくもないのだが(苦笑)、未知の国を旅することを想像すると、やっぱり気持が昂まってくる。しかしまあ、その前に、日本での仕事だな。まじで何とかせねば。