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「使いやすさ」の理由

最近あらためて気が付いたのだが、家の台所で使っている道具の中で、柳宗理さんがデザインした製品の割合が、かなり多い。やかん、片手鍋、包丁、レードル、ボウル、パンチングストレーナーなどなど。カトラリーを含めると、もっとある。

柳宗理さんデザインの台所道具は、見た目の不思議な美しさだけでなく、実際に使ってみた時に感じる「使いやすさ」が、他と比べても群を抜いているように思う(もちろん、プロの料理人の方から見れば、日々の現場での酷使に耐えるプロ仕様の調理器具の方が良いのだろうとは思うが)。調理の場面々々での扱いやすさ、頑丈さ、洗いやすさ、などなど……。たぶん、デザイナーのアイデアや持って生まれたセンスだけでは、そうした「使いやすさ」を実現することはできない。膨大な量の試行錯誤に裏打ちされた経験と知識がなければ、辿り着けない境地なのだろうと思う。

本や文章の「読みやすさ」にも、ある意味、似たようなところがあるかもしれない。パッと見で読みやすそうに思える文章は、ともすると、読み飛ばされてしまいやすい文章でもある。内容がぎゅっと詰まっていながらも、圧迫感を与えず、すっと読めて、伝えるべきことを伝えた上で、心に何かを残す。それが本当の意味での「読みやすさ」なのだと思うし、その境地に達するには、やはり、膨大な試行錯誤の末の経験が必要なのだろうとも思う。

そういう、本当の意味での良い文章を、書けたらいいなあ、と思うのだけれど……。難しいなあ(苦笑)

マキネッタで試行錯誤

相方の友人の方から、ペゼッティのマキネッタをいただいた。

マキネッタは、直火式のエスプレッソメーカー。イタリアではどこの家庭にもたいていあるものらしい。僕自身は自分でコーヒーをいれるようになってたぶん20年くらいになるが、もっぱらペーパードリップだったので、マキネッタではいったいどんなコーヒーをいれられるのか、興味津々だった。

マキネッタの構造はとても単純で、下のタンクに水を入れ、粉受けに細挽きのコーヒーを詰め、上半分をセットして直火にかける。すると、下で沸騰した水がコーヒーの粉を通過し、上半分にコーヒーが抽出されて溜まる。ペーパードリップやネルドリップに比べると、テクニックの類は何も必要ない。

とりあえず使ってみるかー、とほとんど下調べもせずに最初に試した時は、水が多すぎたのと、火加減が強すぎたのとで、ものの見事にコーヒーが噴きこぼれてしまった(苦笑)。調べてみると、水はタンクの横のバルブより下、火加減は弱火で、というのがマキネッタのセオリーらしい。それに従っていれてみると、2回目以降はおおむね良い感じのエスプレッソがいれられるようになった。水の量と粉の量、あとはコーヒー自体のチョイス(深煎りで細挽きがよさそう)で、ある程度の味の調整はできそうだ。

もちろん、高圧の蒸気でいれるエスプレッソマシンとは、クレマの有無など埋められない差があるのだが、マキネッタにはマキネッタの、手軽で素朴な味わいがある気がする。これからも仕事の合間に、楽しみながら使っていこうと思う。

スパイスカレーはじめました

自炊を始めて以来、家でカレーを作る時、ルウはジャワカレー辛口、一筋だった。それも固形のルウではなく、プライムジャワカレー辛口という粉末タイプのもの。二人前ずつ小分けにされているので、家で作るにはとても便利だったのだ。

ところが最近、この粉末タイプのルウを店頭で見かけなくなった。中辛はあるのだが、辛口がないのだ。ネットでも売り切れ状態。なので、中辛のルウにカレー粉を足したりしてみていたのだが、だったらいっそ、ルウを使わずにスパイスカレーを作ってしまえばいいのでは、と思い立った。

ネットでいくつかのレシピを調べてみると、凝りすぎなければ、そこまで難しくもないことがわかった。スパイスはクミン、コリアンダー、ターメリック、レッドチリの4種類。そのほかの材料は、鶏もも肉、タマネギ、ニンニクと生姜、トマトかトマトペースト、生のコリアンダー、塩、少量の砂糖、オリーブオイル。これだけあれば、とりあえずOKらしい。

作る時のコツ(というほど難しくもないが)は、みじん切りにしたタマネギをじっくり炒めて飴色のペースト状にしていく時のやり方だろうか。炒めはじめる時に軽く塩を振るとタマネギから水分を出やすくなることと、ある程度焦げ色がついてきたところで差し水をすると一気にペースト化が進むということを押さえておけばOK。そこにニンニクと生姜のすりおろし、トマトペースト、スパイス4種と塩を投入し、カレーのペーストに仕上げ、肉を炒め合わせてから、水(今回は野菜だしのスープを使った)を加えて煮る。今回はスーパーで生のコリアンダーが売り切れてたので、カルディで売ってるフリーズドライのコリアンダーを最後に放り込んで仕上げた。

初めて作ったスパイスカレー、我ながらまずまずいい感じの味になったと思う。あと、何というか、達成感というか(笑)。もちろん、カレールウで作るカレーも依然として好きなので、これからは気が向いた時に、気が向いた方のカレーを作ろうかなと思う。

夜更けのジントニック

先週の土曜日、九品仏のD&DEPARTMENTで、新しいグラスを買った。背高で縁の薄い、ビールとかを飲むのによさそうなタンブラーだ。もちろんビールを飲む時にも使おうと思っているが、うちでの主な用途は、ジントニック。先々月に手に入れたアイル・オブ・ハリスジンがたいそう気に入ったので、よりおいしく飲めそうなグラスを探していたという次第。

アイル・オブ・ハリスジンは、スコットランドのハリス島にある蒸溜所で造られているジンで、ボタニカルの一つにシュガーケルプという昆布を使っている。飲んでみると、味がするのだ、昆布の。氷を入れた背高グラスにハリスジンを注ぎ、その2、3倍の量の炭酸水を注ぐ。口に含むと、爽やかなのに、ほのかな甘みと旨みがある。グラスの形や縁の薄さも、ずいぶん味や気分を左右するものだなと思う。

夜更けに背高グラスで飲む、ジントニック。ささやかな愉しみが、一つ増えた。

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ブルース・チャトウィン「ソングライン」(新訳版)読了。いつか文庫化されたら買って旅先で読もう、と思い続けていたのだが、なかなか文庫化されないのでハードカバーを買った。紀行本というより、旅の時間、過去の記憶、古今東西の文献に記された言葉など、無数の断片を虚実ない交ぜに繋ぎ合わせて、人はなぜ旅をするのか、その理由を追い求めた、彼の思索の書だと思う。個人的には、以前読んだ「パタゴニア」の方が、より破天荒で自由自在な印象があって、好みかも。いつの日か「ソングライン」が文庫化されたら買い足して、旅先で暇を持て余した時に、またゆっくり読み耽りたい。

たたききゅうり

最近、晩飯の副菜に、たたききゅうりをよく作るようになった。

きゅうりを適当な鈍器でたたいて全体に割れ目を入れ、食べやすい大きさに割き、おろし生姜、黒酢、醤油、塩、ごま油で和え、冷蔵庫で冷やす。火も使わずに作れるお手軽メニューなので、夏の暑いこの時期には重宝している。

ただ、最初にたたききゅうりを作ろうとした時、何を使ってたたけばいいんだろう? とちょっと戸惑った。というのも、うちには、すりこぎのような適当な棒や鈍器がなかったのだ。

あれこれ試行錯誤の末に辿り着いたのは、かどやのごま油の瓶。空き瓶があればベストだが、ない場合は中身が噴出しないように口の部分をしっかり手で押さえて、底の方でボクボクたたく。今のところ、うちにある鈍器ではこれがベストだ。

……ここまで自分で書いといて何だが、もんのすごくどうでもいいことだな、これ(苦笑)。