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夜型のロクデナシ

昨日に引き続き、今日も朝イチから、豊田で取材。首尾よく終えられて、午後の早い時間に自宅に戻れたものの、異様な眠気が‥‥。ぽんこつ状態を脱しきれず、夕方、二時間ほど仮眠。

日頃、特に外出の予定がなくて自宅作業の場合、僕は昼前に起きて夜中の2〜3時くらいまで起きている。典型的な夜型人間。教師一族で朝型人間揃いの岡山の実家の人間たちには、夜型というだけでロクデナシ扱いされている(苦笑)。ただ、そんなロクデナシの僕でも、いったん旅に出ると、完全に朝型に切り替わる。ラダックで暮らしてた時も、朝7時半起床、夜11時半就寝という異様に規則正しい生活で、トレッキングの時などは、朝5時半起床、夜9時半就寝とかだったりする。

ロクデナシでもやればできるのかもしれないけど、それでも今日は眠かった。日本では無理。

石塚元太良「氷河日記 プリンスウィリアムサウンド」

「氷河日記 プリンスウィリアムサウンド」以前、渋谷タワレコのブックショップをぶらついていた時、たまたま見かけて、手に取った本。後で知ったのだが、一年前に石川県で開催された写真展に合わせて刊行された、限定300部の本らしい。これも出会いなのだろう。

石塚元太良さんは、パイプラインや氷河など、特定のモチーフを追いかけて世界各地を旅して撮り続けている写真家だ。この「氷河日記」には、アラスカのプリンスウィリアムサウンドに点在する海岸氷河を、単身折りたたみ式カヤックで旅して撮影した時の模様が記録されている。同じようにしてカヤックでアラスカの氷河をめぐるなんてことは、たぶん僕には無理だから、とてもうらやましく思いながら読んだ。食料や装備の買い出し、野営の様子などは、すごく参考になった(何の?)。

読んでいて印象に残ったのは、「直接照りつける太陽光は氷河の撮影には要らない」という彼の言葉。晴天の下、太陽光で輝く氷河は確かにとても美しいだろうけれど、コントラストが強すぎて、大切な「青」が飛んでしまうのだという。曇天の方がそれをうまく捉えられるのだそうだ。そんな見方で雪や氷を眺めたことはなかったから、とても新鮮だったし、なるほどど頷かされた。

ゆらゆら揺れるカヤックで、大いなる自然の中に入っていく。その愉しさ。その心細さ。自分もいつか、何らかの形で、そういう気持を味わいたいと願う。

ひとり旅メシの愉しみ

異国を旅する時、僕の興味はだいたい二つのことに向けられる。写真を撮ることと、メシを食うこと。買い物とかにはあまり興味をそそられない方だ。そもそも、土産が入るほどバックパックが大きくない(笑)。

最近は、ガイドブックやネットから、どこの街のどこの店のどんなメニューがうまいとか、細かい情報がいくらでも手に入る。それを徹底的に調べて決め込んでから旅立つ人もいると思うが、僕はそういうのはあまり好きではない。その土地の名物は何なのか予習くらいはするが、どこで何を食べるのかは、結構、行き当たりばったり。でも、何となくふらっと入った店で、よくわからないままえいやっと注文して、うまいメシにありつけた時の嬉しさったらない。

当たる時もあれば、外れる時もある。昔、バンコクの街で地元民御用達の食堂に入り、前に並んでたすらっとしたお姉さんと同じガパオを注文したら、もうほんとに悶絶するほど辛かった(でも、そのお姉さんは平然と食ってた)とか。朝、ハノイの道端の露店でフォーを注文したら、よくわからないうちにドクダミの葉を投入されたりとか。「思ってたんとちゃう!」なんてことはいくらでもある。でも、それも、ひとり旅メシの愉しみなのだと思う。

ここ最近、ラダック界隈ばかりに行ってるからか、そういう一か八かの愉しみを、しばらく味わっていない気がする。そろそろ、どこかふらっと別の場所に行ってみるかな。

旅と写真とキャパと僕

昨日、横浜美術館で「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」展を見て、思い出したこと。

世界でもっとも有名な報道写真家、ロバート・キャパ。僕にとって彼は、その短い生涯と作品を通じて、「写真家」という存在を意識するようになるきっかけを与えてくれた人だった。いや、それだけではない。僕の中で、「旅」と「写真」という二つの行為が分ちがたく結びつくきっかけを与えてくれたのも、キャパだった。

1992年の春、生まれて初めての海外一人旅。ザックの中には父が送ってきたありふれたコンパクトカメラと、何気なく買った文庫本が一冊。当時はたいして写真に興味のなかった自分が、なぜその一冊にキャパの「ちょっとピンぼけ」を選んだのか、今もよくわからない。神戸から上海まで船で渡り、シベリア鉄道でロシアを横断し、夜行列車を宿代わりにしながらヨーロッパをほっつき歩いた数カ月の間、何度もこの本を読み返した。祖国を追われ、危険な戦場に身を投じて写真を撮り続けた日々のことを、キャパはユーモアと優しさと、時に悲しみを交えながら書いていた。彼の文章を読んだ後に自分の目で見る未知の世界には、何かが透けて見えるような気がした。それが何かはわからなかったけれど、その「何か」に向けて、僕はシャッターを切った。

世界を自分の目で見るということ。それを写真という形で誰かに伝えること。いつのまにかその行為は、僕にとって、旅と切っても切り離せないものになった。もし、あの最初の旅に持って行ったのがキャパの本でなかったら、そんな風に考えるようにはならなかっただろうし、今のように写真を仕事の一部にするようにもならなかっただろう。そう思うと、キャパの「ちょっとピンぼけ」は、僕の人生に一番大きな影響を与えた本なのかもしれない。

半世紀以上も前に撮られたキャパとゲルダの写真を眺めながら、僕は、あの旅で感じた気持を思い起こしていた。

鎌倉・横浜日帰り旅

今朝はちょっと早起きして、電車に乗って鎌倉へ。小町通りで旅音さんとマンブリーズさんが開催中のスーベニア・ワンダーランドに顔を出す。チビオト君も元気そうで何より(笑)。並んでる商品もすごく魅力的なのだが、文字通り早い者勝ちなので、気になる人は早めに行った方がいいと思う。

おひるはひさびさにディモンシュで、ムケッカと深煎りマンデリン。夏葉社さんの「冬の本」をぱらぱらと読む。今日の店内は、四、五人連れの高校生のグループがやけに多くて、全員揃ってオムライスをぱくついていた。ブラックコーヒーのうまさがわかる年頃になったら、もう一度この店に来るといいんじゃないかな(笑)。

再び電車に乗って、今度は横浜へ。横浜美術館で開催中の写真展「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」を、たっぷり二時間近くかけて鑑賞。‥‥すごい。展示点数も構成内容も、まさに圧巻。横浜美術館の本気を見た。キャパについてはいろいろ思い入れがあるので、明日またあらためて書こうと思う。

あたりがすっかり暗くなった頃、電車でひと駅移動して、横浜中華街へ。どこかで晩飯を食べようと、まったくのノープランでぶらぶら歩き回る。結局、きらびやかすぎず、うらぶれすぎずという感じの店に入り、カニ肉あんかけチャーハンとエビ蒸し餃子、ビールを注文。ちゃんとおいしかった。というか、あれだけライバル店がひしめいてたら、中途半端な味だとやっていけないだろうし。

丸一日、ずいぶんな移動距離になったけど、いろんな人に会えたり、見たかったものを見たり、おいしいものを食べたりで、いい休日になった。満足。