
木楽舎から刊行されている月刊誌「ソトコト」2013年11月号
に、写真紀行「ラダックとスピティ 2つのリトル・チベットをつなぐ道」を寄稿しました。巻頭のカラーグラビアで8ページにわたって掲載されています。記事の内容は、昨年と今年にラダックとスピティで行った取材の成果を中心に構成したもので、特にスピティについては、ほとんどの写真が未発表のものです。機会があれば、書店で手に取ってみていただけるとうれしいです。
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南国への旅
朝起きて、コンビニのサンドイッチをかじりつつ、ベッドシーツなどの大物を洗濯し、近所のコインランドリーで乾燥機にかける。チェックリストを見ながらの荷造りは、あっという間に仕上がった。いつにも増して、荷物が小さくて軽い。防寒着のいらない南国への旅だし、撮影機材も望遠レンズや超広角レンズは今回不要というのもあるけれど、それにしても、ちょっと不安になるくらい、荷物が軽い(笑)。
夜、リトスタで恒例の最後の晩餐。揚げかぼちゃのスパイスサラダ、ブリのカルパッチョ、新さんまの竜田揚げなどをもふもふ食べる。南国は南国で、きっとうまい食べ物があるだろうけど、今回はとにかく忙しいので、楽しむ余裕があるかどうか。まずは、暑さと疲労で体調を崩さないように気をつけつつ、最低限必要な仕事をきっちりこなすように心がけよう。
というわけで、明日から約四週間、取材の仕事でタイに行ってきます。帰国は10月17日(木)の予定。それまでブログの更新はお休みしますので、よしなに。
旅の準備
今日は雑誌記事のゲラチェックに充てるつもりだったのだが、ゲラの到着が遅れていて、手持ち無沙汰。来週からのタイ取材の準備や問い合わせ作業をちまちまとやる。
約四週間のタイ取材、出発するのは来週末なのだが、準備にはそろそろ取りかからねばならない。といっても、荷造りとかを始めるのではなく、家を留守にする準備の方だ。冷蔵庫の中にある野菜や牛乳や卵、それからコーヒー豆などを出発までに使い切れるように考えておかねばならないし、ゴミを出す日を確認しておくとか、ベッドシーツなどの洗濯をするタイミングを見計らうとか、まあ、いろいろ。今に始まったことでもないので、慣れてはいるのだが。
この間帰ってきたと思ったら、またしても旅の空の下。これも仕事だし、粛々とやるしかないか。
「絶景」に思う
しばらく前から、「絶景」や「秘境」といったキーワードを謳い文句にした書籍やテレビ番組が人気を集めている。書籍の場合、その一冊のためだけにカメラマンを世界中に派遣したりすることは予算的にまず無理だから、ストックフォトエージェンシーに借りた写真で作っている本がほとんどだ。中には、Flickrなどから写真を持ってきてる、使用許諾の面などでかなり強引でアヤシイ作り方をしてる本もあるようだが。
旅の目的は人それぞれだし、ある「絶景」を見たいがために旅に出ても、それはまったく構わないと思う。ただ、自分の場合はどうかというと、「絶景」として見せられたイメージが旅に出る動機に繋がったことは、実は一度もない。最近人気のラダックのパンゴン・ツォでさえ、僕は最初に現地に行くまで、カラー写真すら見たことがなかった。旅の魅力は風景だけでなく、そこで生きる人々とその暮らしぶりなど、いろんな物事との出会いをまるっと含めた体験の中にあると思うし。
最近は、「絶景」と呼ばれる場所の地名をグーグルで画像検索すれば、そこの写真がわんさか出てくるから、便利な反面、ちょっと興を削がれる面もある。もちろん、自分自身の目で見届けるのが一番いい体験になるのは当然だけど、できれば事前にあまり予習しすぎないようにして(笑)、その「絶景」だけでなく、そこまでの道程で出会った人たちとのやりとりまで含めて、ゆったりと旅を楽しむのがいいんじゃないかなと思う。超効率的な弾丸ツアーで「絶景」だけがつがつ見に行っても、何だか味気ない旅になってしまうだろうから。
‥‥とまあ、自分で旅行記やらガイドブックやらを散々出しといて、何を言ってるんだという気もするけど(苦笑)。
つながりっぱなしの旅
学生時代に生まれて初めて海外で一人旅をした頃、旅先で出会った人たちと交換するのは、住所と電話番号だった。旅の続きで訪れた街で買った絵ハガキを互いに送り合ったりして、帰国後、郵便受けにそんなハガキが届いていると、何だかすごく嬉しかったのを憶えている。
それから十年もしないうちに、世界中の観光地にはインターネットが使えるパソコンを置くサイバーカフェが林立するようになり、旅人たちが交換するのは、Hotmailのメールアドレスに変わった。それはやがてGmailになり、それからTwitterやFacebookやLINEのアカウントになった。
そして最近、観光地ではサイバーカフェがどんどん減り、代わりにWi-Fiフリーのホテルやレストラン、カフェが急増している。旅人たちはみなスマートフォンやタブレットを持ち歩き、ホテルや交通機関の予約、地図や現地情報の確認など、旅に必要なことの大半をそれらでまかなう。旅先で撮った写真はリアルタイムでブログやTwitterやFacebookにアップされ、日本にいる友達はそれにすぐ反応してコメントを返す。いつのまにか旅は、ずっと誰かとつながりっぱなしなのが、当たり前になった。
つながりっぱなしの旅。それはそれで、楽しい面もたくさんあると思う。でも、住所と電話番号を交換するようなオールド・スタイルの旅をしていた身としては、そんなに四六時中つながりっぱなしだと、ちょっとつまらなくない?とも感じる。知らない国の知らない街で、右も左もわからず途方に暮れて、その日の寝床と食事にありつくためにうろうろする。あの孤独と不安に苛まれるような感覚があるからこそ、一人旅は俄然面白くなるのではないだろうか。
旅先でスマホやタブレットを活用するのは、大いに結構。でも、せっかく旅に出るのなら、周囲と何のつながりのない世界に一人身を置くことの愉しみも、味わってみてほしいなと思う。