Tag: India

「K.G.F : CHAPTER 1 / CHAPTER 2」

先週、三日連続でインド映画を観に行った。最初の二本は、「K.G.F」の第一章と第二章。同じ日にまとめて観ることもできなくはなかったが、一本あたり三時間もあるし、日を分けた方が頭の中で情報を整理できるのでいい、というアドバイスももらったので。

ボンベイのスラムで生まれ育ったロッキーは、幼い頃に死別した母の言葉を胸に、裏社会で誰もが恐れる無敵の存在としてのし上がっていく。マフィアのボスは、謎多き存在である金鉱「K.G.F」への潜入と支配者の暗殺をロッキーに命じる。K.G.Fの覇権を巡って、国家をも巻き込んだ権謀術数入り乱れる争いが始まる……。

……凄い映画だった。本国で「RRR」よりヒットしたというのも頷ける。ほぼ全編、エグいほどのバイオレンス(「バイオレンス、ライクス、ミー」)で塗りつぶされているが、ロッキーの行動原理自体は、亡き母への思慕と、弱き者たちを虐げる存在への怒りとで満ち満ちている。生まれ育った環境によって、富と権力が極端に偏在し、それらが是正される機会も非常に少ないインド社会(程度の差こそあれ、他の国でも同じだと思うが)において、ロッキーのようにすべてを力づくで薙ぎ倒してぶっ飛ばしてくれるダークヒーローの物語は、常に待望されているものなのかもしれない。

できれば、映画館で観た方がいい作品。未見の方は、他の予定を後回しにしてでも、上映回のあるうちに、ぜひ。

剥がれる靴底

一カ月前、インドのラダックに赴くため、早朝から列車を乗り継いで、成田空港に向かっていた時のこと。

神田駅で中央線から山手線に乗り換える時、右足の靴底に、何か引っ掛かるような感触を感じた。足を持ち上げてみると、トレッキングシューズの二重構造になっている靴底の外側の一部が、ぺろりと剥がれかけていた。

いやいやいや。まずいまずい。これから一カ月もインドに行って、取材やら何やらで毎日歩き回らなきゃならないのに、靴底が剥がれてちゃ、話にならない。どうしよう? 時間帯的に、靴を修理してくれる店はまだ開いていない。接着剤を売ってるホームセンターも開いていない。そもそも、飛行機の搭乗に間に合うように成田空港まで行かなきゃならないので、どこかに寄り道できる時間もない。はてさて……。

思案した挙句、日暮里でスカイライナーに乗り換える直前に、駅構内のコンビニに立ち寄って、アロンアルファを購入。スカイライナーの車内で、ちまちまと靴底を接着。これで、一カ月ももつのか……どうなんだ……。

結論から言うと、旅の間に何度か接着し直したおかげで、トレッキングシューズはどうにかこうにか、最後まで持ちこたえた。とはいえ、さすがにボロボロなので、今回でお役御免ということになりそうだ。はー、しかし、あの時は本当に、どうなることかと思った。

ラダックの夏から、日本の夏へ

夏のラダックでの約一カ月の滞在を終え、昨日の昼過ぎ、西荻の自宅に戻ってきた。

帰りの飛行機は、レーからデリーまでは問題なかったものの、デリーから成田までは、出発は二時間遅れるわ、機内の全座席のモニタが故障で動作しないわ、ドリンクなどの冷蔵庫も壊れてたのか缶ビールが常温だわ、トイレも一室閉鎖されてるわで、いろいろ大丈夫なのかと心配なフライトでの帰還となった。地味にストレスの溜まる旅程だったが、とりあえず生きて戻れて、ほっとしている。

エアコンいらずで過ごせたラダックの夏から、デリーよりも灼熱の日本の夏にいきなり放り込まれたので、身体がまだびっくりして、なかなか順応できないでいる。これは、洒落にならない暑さだなあ……デチェンたちには「インドと違って、日本にはデング熱はないんだろ? だったらよっぽどましだよ」と慰められはしたが。

ラダック滞在での疲労は正直全然大丈夫なのだが、灼熱の日本の夏にアジャストすべく、しばらくはゆっくり身体を慣らしていこいうと思う。しかし、順応できるかな……はたして……。

「ブラフマーストラ」

最近のインド映画界では、「RRR」や「KGF」などヒンドゥー語圏以外で作られた作品が大ヒットして注目を集めているが、そんな中で去年、満を持して公開されて手堅くヒットを記録したボリウッド映画「ブラフマーストラ」。日本でも先月公開されたので、仕事の合間を縫って観に行ってきた。

古代から密かに継承されてきた、神々の武器「アストラ」。その中でも最強とされる「ブラフマーストラ」の争奪を巡って、善と悪の運命が交錯してゆく物語。宿命を背負って生まれた主人公シヴァに、ランビール・カプール。彼と運命的な出会いを果たすヒロインのイーシャは、今やランビールの妻でもあるアーリヤー・バット。ほかにも、アミターブ・バッチャンやシャー・ルク・カーンなどの豪華キャストが、それぞれ重要な役割を務めている。特に、序盤に登場するシャー・ルクの見せ場はすごくて、「えっ……主人公?」と思ってしまった(笑)。全編にわたってVFXが多用されているのだが、思いの外クオリティが高くて、違和感がない。

物語自体は、現代社会を舞台に神話的要素を組み込んだ、王道のヒロイック・ファンタジーという趣き。主人公が自身の宿命に目覚め、少しずつ能力をステップアップさせながら敵に立ち向かっていくという構図も、王道。逆に言えば、ある程度先が読めてしまう展開でもあるのだけれど、過去に遡るらしい続編(ディーピカー・パードゥコーンが本格的に登場するらしい。もう一人は……?)の展開は読めない部分もあるので、そのあたりは期待して待ちたい。

土曜と日曜

先週の土曜と日曜は、ひさしぶりに二日続けての完全な休日。最近、よみうりカルチャーでの講師の仕事があったりして、なかなか休めなかったのだ。

土曜は昼に代々木上原のhako galleryに出かけて、鮫島亜希子さんと谷口百代さんのインドのおべんとうイベントへ。ダッバーワーラーの仕事ぶりを追った写真展もよかったし、現地のレシピで作ったというターリーもおいしかった。夜はコノコネコノコでこれまたおいしいごはんをいただいて、すっかりはらぱんの一日。

日曜は、食材の買い出しに近所に出かけた以外は、ずっと家にいた。ラジオを聴いたり、本を読んだり、コーヒーをいれてフルーツケーキを食べたり、夕飯にベンガル風の魚と野菜のジョルを作ったり。ただそれだけだったのだけれど、何だかとても豊かな時間を過ごせたような気もする。

人生には、余裕が、休みが、必要だ。しかしまあ、今日からはまた働かねばである。