「亀時間 鎌倉の宿から生まれるつながりの環」

「亀時間 鎌倉の宿から生まれるつながりの環」鎌倉の材木座にある古民家ゲストハウス「亀時間」。僕はまだ泊まらせてもらったことはないのだが、今までに二度、足を運んでいる。それは、この場所で年に一度開催されている「旅人バザール」というフリマイベントの時。そのうち最初の訪問では、僕自身がそのフリマの出展者という立場だった。

その時の僕は、歴史のある建物に隅々まで丁寧に手を入れて心地いい空間を作り上げたオーナーのマサさんやスタッフの方々の誠実さと、材木座の街並や人々、海や山や空など、周囲を取り巻くすべてがこの「亀時間」を作り上げているのだな、という印象を持ったのを憶えている。この素晴らしい場所に根ざし、ゆったりとした時間の中でゲストハウスを営むという生き方が、うらやましくも思えた。

このゲストハウスについての本を作りたいという話は、ずっと前に旅音さんから聞いていたのだが、企画が通るまでの紆余曲折と、制作に入ってからの苦労話もいろいろ伝え聞いていたので、それが「亀時間 鎌倉の宿から生まれるつながりの環」として一つの形になったことは、うれしかったし、ほっとした。世の中には、読まれていくべき本というものがあると思うから。

マサさんが長旅の中でムビラという生き甲斐の一つを見つけ、それを続けるための仕事と生活を自ら作り出すという発想の転換から、鎌倉でゲストハウスを開業するまでの日々と思いが、この本では「亀時間」そのもののように誠実な筆致で綴られている。特に、材木座で放置されていた古民家と運命的にめぐり会い、仲間と悪戦苦闘しながらゲストハウスを作り上げていくまでの過程が、生き生きと語られていて面白い。「亀時間」という場所が、たくさんの仲間や地元の人々に支えられながら生まれてきたことが、あらためてよくわかった。

会社員時代の安定した収入と引き換えに得たものは、地域の人々と助け合える関係と、その中で好きな仕事ができる喜び、そして家族とゆっくり過ごせる時間。マサさんが「亀時間」を通じて選び取ったその生き方は、きっと多くの人にとって何かのヒントになるんじゃないかと思う。

初めての店

終日、部屋で原稿を書く。週末とは思えないくらい、仕事のメールが頻繁に届く。忙しいのはどこも同じらしい。

夕方、晩飯を食べに外へ。最近、夜はあまり自炊できないでいるせいか、近所でよく行く何軒かの店に入るのは、間隔が短すぎてちょっと気が向かない感じ。だったらいっそ、初めての店に行ってやれ、と、駅前の通り沿いにある古びた中華料理屋へ。三鷹に住みはじめた頃からずっとあった店なのだが、なぜか今まで一度も入ったことがなかったのだ。

入口を開けると、中には誰もいない。奥から店のおじいさんが出てきて、甲高い声で席をすすめてくれる。700円の唐揚げ定食を注文。ほどなくしておじいさんが運んできてくれた定食は、大きな唐揚げが山盛りに、カボチャの煮付けの小鉢までついてる。ほうほう、と思いながら食べはじめる。味は‥‥普通。とてつもなくうまいわけではないけど、何というか、おうちで出てきそうな味。でも、こういう味だからこそ、この店はずっと地元の人に支えられて、淡々と続いてきたのかもしれない。

また、ふっと気が向いて、食べに来たくなる時があるかもしれないな。

GWが待ち遠しい

昨日は午後遅めの時間から、赤坂で取材。出かけるまでに家で仕事を進めておこうと思ったのだが、朝はなかなか起きられず、起きても身体が異様にだるくて、家では何もできないまま、取材だけはかろうじて遂行したというていたらくだった。バングラから戻ってきて以来の仕事ラッシュで、たまっていた疲労が噴き出したのかもしれない。

今日はひさしぶりに丸一日、家にいられる。頻繁に着弾する仕事メールに返信しつつ、今週取材した分の大学案件の原稿を書き進める。昨日の夜、四ッ谷でうまいカキフライを食べ、前後不覚にぐっすり寝たからか、だいぶ体調が戻ってきた。自宅である程度まとまった時間が取れれば、あとは自分次第で何とかできるから、気も楽になる。

あー、早くゴールデンウイークが来ないかな。そうしたら、外から何にも邪魔されずに、ひたすら原稿に没頭できるのに! という願望を抱いてしまうのは、人として何か間違ってるような気もする(苦笑)。

写真のプリント

昨日は、昼に千駄ヶ谷で打ち合わせを一件こなした後、再びナロさん宅を訪問。目的はねこぱんちを受け止めるためではなく(笑)、プリンタをお借りして、写真のプリントをさせてもらうため。

来年の今頃くらいを目標に、今までラダックで撮影してきた写真の集大成となるような写真展の開催を計画しているのだが、会場候補として考えているギャラリーの年二回の公募受付期間が、来月から始まるのだ。ただ、そこでは、応募用の写真見本をインクジェットプリンタでプリントしたものに限定している。普段の仕事でもめったに必要にならないプロ仕様のプリンタを、そのためだけに買うのは難しい。どうしようかなと悩んでいたところ、たかしまさん宅でプリンタを使わせていただけることになり、ありがたくご好意に甘えさせていただくことにしたのだ。

昼過ぎに開始して、A4サイズの写真を計45枚プリントするのに、約4時間。乾燥待ちの間に近くの焼き鳥屋で軽く飲んだりして、結果的にずいぶん長い時間お邪魔してしまい、何だか申し訳なかった。それにしても、最近のプロ仕様のプリンタで、一番いい写真用紙にプリントすると、恐ろしいくらいに綺麗に刷り上がるのには、本当にびっくりした。日本のメーカーの技術力というのは、つくづくすさまじい‥‥。さんざん見慣れたはずの写真なのに、ファイリングしたものをあらためてしげしげと眺めてしまう。

さて、公募、どうなるか。承認されるといいな。ちなみにナロさんは、昨日はほぼずっとおねむだった(笑)。

女子大で待ち合わせ

今日は朝から夕方まで、計三件の取材。収録場所は五反田にある某女子大。

朝、大学の正門前で15分前に待ち合わせということだったので、ちょっとだけ余裕を持って到着。iPhoneをいじりながら依頼元の担当さんが来るのを待つが、来ない‥‥来ない‥‥何となく不安になる。女子大の正門の前に、朝から何をするでもなく所在なげに立ち尽くすおっさん一人。正門脇の詰め所にいる守衛さんからすれば、これはもう不審者にしか見えない。

5分前になってようやく姿を現した担当さんを見つけた時は、ほっとした。いや、別に遅刻したわけじゃないけど、こういう場所で待つ身としては、ちょっとね(苦笑)。