EUとはいったいどんな組織なのか

今日は、英国で行われた国民投票でEU離脱派が多数を占めるという、衝撃的なニュースが世界を駆け巡った一日だった。その一方で、そもそもEUとは何のための組織なのか、具体的に知っていて一言で説明できる人は、そんなに多くないのではないだろうか。今年の春、とある取材でたまたまEUについて研究している方にインタビューさせていただいたのだが、その時に伺った話がとてもわかりやすかったので、ここでかいつまんで紹介しようと思う。

コンビニで販売されているミネラルウォーター。それらの中でも、エビアンやボルヴィックなどフランスから輸入されているミネラルウォーターのラベルには、EUの厳しい基準の検査をクリアした商品であることが詳しく記載されている。具体的には、「殺菌処理などを一切行っていない自然のままのものであること」「採水地の環境が完全に保護されていること」といった基準だ。こうした基準を、文字通り、世の中のありとあらゆる分野で設けて規制を行うことが、EUの仕事の7割から8割にあたると言っても過言ではないという。

つまり、「膨大な量のルールだけを作って運用している組織」というのが、EUの本質にもっとも近い形容なのだそうだ。ちなみに、EUがありとあらゆる分野に設けた規制の資料を本棚に詰めて並べると、何百メートルもの長さになってしまうほどだとか。それらの中には、環境保護活動から死刑制度の撤廃といったことまで含まれる。ルールこそが、EUをEUたらしめている最大の要素なのだ。

EUに属する国々がこんな風にあらゆる分野に統一基準を設けて運用していることで、それらの基準に共同で取り組むことで利便性が向上したり、厳しい基準をクリアした商品の国際競争力が向上したりするというメリットは確かにある。もちろんその一方で、分野によっては特定の国に何かしらの課題が生まれる場合もあるかもしれない。

しかし、今回の国民投票の結果を受けて、英国が今になってEU離脱という選択をするとしたら、どう考えてもデメリットの方が大きいと僕は思う。というか、離脱してEUのルールに縛られなくなることによって享受できるメリットはどんなものでどのくらいの規模のものなのか、正直言って見当がつかない。取材した方も「離脱しても、英国で明らかに何かがよくなる結果にはつながらないと思います」という意味のことを話していた。

ともあれ、賽は投げられた。どうなることやら。

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