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原稿執筆ぼっち合宿 in 湯河原


今週月曜から木曜までの3泊4日で、一人で温泉旅館に籠もってひたすら原稿を書くという、原稿執筆ぼっち合宿を実行してきた。滞在地に選んだのは、湯河原。夏目漱石や芥川龍之介など、明治・大正期の文豪も、よくここの温泉宿に籠もって原稿を書いていたという。

今回のぼっち合宿では、The Ryokan Tokyo YUGAWARAという旅館の「大人の原稿執筆パック」というプランを利用した。朝・昼・晩の3食の食事付きで、通常の食事付きの宿泊よりも割安に泊まれるプランだ。部屋は畳敷きの和室で、外からは秋虫の鳴き声がかすかに響くだけで、とても静か。館内ではWi-Fiも利用できる(が、接続が時々切れる)。いやが上にも執筆が捗りそうな環境だ。

温泉旅館なので、館内にはもちろん大浴場があって、朝方と、夕方〜夜の時間帯に、自由に利用できる。自分の場合は、朝起きてすぐに温泉に入ってさっぱりし、8時に朝食。午前中に執筆を進め、12時に昼食。午後も引き続き執筆し、18時に夕食。その後また温泉に入って、23時頃まで執筆。冷蔵庫に入れておいたビールを飲んで就寝、というスケジュールで過ごした。

ぼっち合宿のたくらみ

先月の半ば頃から、原稿の執筆に取り組んでいる。来年出す予定の、ラダックについての新しい本の原稿。

書き始める前に、全体の構成や各部分のプロットはきっちり決め込んでおいたし、原稿自体もまずまずのペースで書き進めているのだが、何しろ、まるごと一冊書き下ろしなので、それなりに時間はかかる。この間試算してみたら、最後まで書き終わるのは来年の二月、推敲とリライトが終わるのは三月頃になりそう。長丁場である。

こういう長丁場の仕事は、日々淡々とマイペースで取り組み続けるしかないのだが、たまにはスカッと気分転換したいし、家とは違う環境で執筆に集中できるならなおいい。そこで、しばらく前から噂で聞いていた、温泉旅館での原稿執筆プランというものに申し込んでみることにした。このプラン、1日3食の食事付きで、朝と晩には温泉に入れて、それ以外の時間はずっと和室の客室で原稿に取り組めるというもの。無料オプションで原稿進捗の確認や読後の感想なども頼める(僕は頼まないけど、笑)。この原稿執筆プランを、来週明けから3日間ほど使ってみようと思う。

泊まるのは、超高級とまではいかないものの、それなりに良い旅館で、普段ならそう何泊もできないお値段なのだが、今回は例のGO TOなんちゃらで宿泊料金が35%オフになるのを利用することにした。あの一連の政策自体にはいまだにまったく賛成できないが、それの原資が自分の納めた税金からむしり取られてるのも事実なので、極力ほかの人に迷惑をかけない原稿執筆ぼっち合宿というやり方で、納めた分を取り戻そうと考えた次第。

まあ、自分の性格上、自腹を切って合宿したら、元を取るべくめちゃくちゃ集中して書くと思うので(笑)、いい形でスパートをかけられるよう、頑張ります。

航路を決める

来年出すことになった新しい本の制作に、本格的に取りかかっている。とはいえ、原稿はまだ1文字も書いていない。

今取り組んでいるのは、本の各部分のプロット作り。全体のおおよその構成を決めてから、各部分で書こうとしている内容やアイデア、キーワードを、箇条書きのメモのような形で書き出していく。細部を詰めていきつつ、全体的なバランスも都度見直して、より良い形になるように調整していく。地味だけど、妥協の許されない、とても大事な作業だ。

一冊の本を書くのは、小さな船で大海原に漕ぎ出すようなものだ。何も考えずに漕ぎ続けても、目的地には辿り着けない。思わぬ潮に流されて、そのうち力尽きてしまう。漕ぎ出す前に必要なのは、海図を広げて、航路を決めること。何を目印に進むか。期間内に辿り着けるか。そのために何が必要になるか。今取り組んでいるのは、その段階だ。

本というものは、企画と内容を固めた段階で4割、プロットを固めた段階で6割、出来上がっていると思う。実際に書く作業は(それはそれでしんどいが)残り4割のうち2割で、最後の2割が編集と校正。なので、はやる気持ちを抑えつつ、まずはプロットという航路をしっかり見定めようと思う。

ヨーイドン

午後、千石で打ち合わせ。来年出すことが決まった、新しい本について。

オンラインとかでなく、対面で仕事の打ち合わせをするのは、たぶん半年ぶりくらいだ。今回の打ち合わせも、「いつもなら小さめのミーティングスペースでやるんですが」と担当編集さんに案内されたのは、14、5人での会議もできるくらいの大きな会議室。ドアも開けて換気にも気を遣っていただいていて、ありがたいことだなと思う。

打ち合わせ自体は、とてもスムーズかつなごやかに進み、諸条件も特に問題なく合意し、つつがなく終えることができた。春先に企画を提案して以来、だいぶ時間がかかってしまったが、これで本格的に執筆に取りかかることができる。ヨーイドン、と自分で自分に声をかけたくなる気分だ。

……ぶっちゃけ、先方で検討してもらっている発売時期を考えると、そんなに悠長に構えてもいられなくなったので、実はちと焦っている(苦笑)。

次の本へ

四月下旬に『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』を雷鳥社から刊行したばかりだが、来年、別の出版社から、ラダックとその周辺についての新しい本を出すことが決まった。

本の企画を提出したのは四月、サンプル原稿を提出したのは五月だったから、決まるまでちょっと時間がかかったのだが、どうにか。具体的な刊行時期は、来年のうちに、という程度のおぼろげな状態。昨今のコロナ禍の影響で、どこの出版社も刊行スケジュールがいろいろ変更になっていて、てんやわんやなのだそうだ。それでもまあ、このご時世に、出版社から書き下ろしの新刊を出せることになったというだけでも、ありがたいことではある。

この本のために必要な材料はほぼ手元に揃っているので、これから半年くらいの間は、ひたすら家に籠もって原稿を書くことになる。考えてみると、去年の後半とほぼ同じ図式である。ただ、去年は十月に恒例のタイ取材が入ったことで執筆スケジュールが相当厳しかったのだが、今の状況だと、海外取材の仕事は来年春くらいまで入ってこないだろう。直近の収入源が減るのは確かに痛いが、その分、新刊の執筆に集中できると割り切って、ポジティブシンキングで取り組んでいこうと思う。

ああでも、楽しみだなあ。また一冊、本を作ることができる。今度もせいいっぱい頑張って、良い本にしよう。

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川内有緒著・中川彰撮影『バウルを探して〈完全版〉』読了。ベンガルの吟遊詩人バウルを追ってバングラデシュを旅した紀行で、七年前に刊行されたものが約100ページの写真とともに生まれ変わった。武田百合子の『犬が星見た ロシア旅行』をほんのり思い起こさせる軽やかな(でも時々ドライな)文体で、自分自身の内面を手探りしながらの旅の様子が誠実に描かれている。初版の刊行直前に亡くなった中川さんがフィルムで遺した旅の写真と、その中川さんに宛てて書かれた川内さんの「手紙」が、刊行から月日を経たこの本を、文字通りの「完全版」にしている。作られるべくして作られた一冊だったのだな、と思う。