Category: Diary

時計の乾電池

少し前から、家の中で使っている時計が、立て続けに止まった。壁に架けている大きめの時計と、台所で冷蔵庫にマグネットで貼っている、小さめの時計。どちらも故障ではなく、入れてあった乾電池の寿命によるもので、交換すると、それぞれ、すぐに動きはじめた。

どちらの時計も、使いはじめたのは、僕が西荻窪のこのマンションに引っ越してきてからだ。二人暮らしに移行して、かれこれ五年と数カ月になる。それだけの歳月が過ぎていれば、乾電池が寿命を迎えるのも、納得ではある。

西荻窪で、これまで過ごしてきた五年間。続けて何カ月も海外取材に行っていた時期もあった一方で、コロナ禍によってまったくどこにも行けなくなり、ひたすら机に向かって原稿を書いていた時期もあった。五年の間に、仕事の面では、取引先が変わったり、紀行文学賞をいただいたりと、いろいろ変化はあったが、生活の面では、何だかんだで穏やかに過ごせているような気がする。

次の五年間も、仕事ではせいいっぱい頑張りつつ、生活では引き続き穏やかに暮らしていければ、と思う。

アイスからホットへ

残暑があまりにも長引きすぎて、まだまだ夏なのかなと思っていたが、気がつけば、もう十月。昨日あたりから暑さもようやく一段落したようで、日もずいぶん短くなってきた。

昨日から、朝のコーヒーを、アイスからホットに切り替えた。夏の間は、ぐっしょり寝汗をかいて目覚めた朝に、前の晩にいれて冷蔵庫で冷やしておいたアイスコーヒーを飲むと、ひからびた身体に沁みわたるようで、それはそれで旨かった。でも、朝、仕事机に座ってMacを立ち上げ、メールやら何やらに目を通しはじめる時間帯、傍らに置いて飲むのは、やっぱりホットコーヒーの方がいい。いれたての香りとともにカフェインが、ぐいん、と頭の隅々に行きわたる感じがするし、気分も落ち着くし。

自炊のメニューも、煮物とか八宝菜とか、季節の旬に応じて、だんだん切り替えていこうかなと思う。夏はもう、しばらくはいいや(笑)。

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日野剛広『本屋なんか好きじゃなかった』読了。ときわ書房志津ステーションビル店の店長として、出版業界でも有名な日野さんの初の著書なのだが、優しく飾らない人柄が行間にじんわりと滲み出ていて、とてもよかった。

実をいうと書くことは苦手である。いやお前、今こうして書いてるだろ、と突っ込まれようが、苦手なものは苦手なのである。<中略>ならば書くのをやめたらどうか? しかし、書きたいのだ。書くことが苦手なのに、好きだということに気づいてしまったのだ。

この一文が、とりわけ印象に残った。プロとして文筆を生業とする人の中には、「書くことは得意だけど、好きではない」という人も少なくないように感じるが、本来は日野さんのように「好きだから書く」というスタンスであるべきなのでは、と思う。自分自身も含めて。

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煎本孝・山田孝子『ラダックを知るための60章』読了。明石書店の有名なエリア・スタディーズのシリーズ200冊目が、なんとラダック。今となっては入手困難な膨大な史料を基に書かれているようで、ラダックの歴史や社会構造、伝統文化などの資料として、持っておいて損はない一冊だと思う。ただ、ざっと通読したところ、疑問に感じる記述もいくつか見受けられた。たとえば食文化の項では、モモについて「蒸し餃子はラダックの一般家庭では見られず、レーにある食堂で出される料理である」という明らかに間違った記述があった。これは著者のお二人だけでなく、編集や校正担当の方々による事実確認に漏れがあったからだろう。なので、この本を参照してラダックについて何か書く時は、ほかの資料とも照合して確認する必要はあると思う。

プリータムのライブ

昨日の夜は、有明の東京ガーデンシアターへ、プリータムのライブを観に行った。インド食材の輸入販売会社のアンビカコーポレーションが、創立25周年を記念して企画したライブだ。アンビカのアプリで応募すれば無料で観覧できるという、とんでもない太っ腹の企画で、これは行かねば、と応募したのだった。

三時間のうち最初の一時間はアンビカ創立記念関連のセレモニーだったのだが、後の二時間は、何というか……超絶幸福空間というか……凄かった。プリータムの作品でおなじみのプレイバックシンガーたちが勢揃いして、圧倒的な歌唱力で名曲の数々を歌い上げていく。多彩な楽器を奏でるバンドメンバーの技術も素晴らしくて、もう、ただただ圧倒された。昔から好きでよく聴いていた「Balam Pichkari」や「Dilliwaali Girlfriend」が、本家の生演奏で聴けるなんて、ほんと夢のようだった……プリータムありがとう……アンビカありがとう……。

……さっそく今日、アンビカ新大久保店で、バスマティ米とジャスミン米とシナモンを買わせてもらった(笑)。

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アーシュラ・K・ル・グィン『世界の誕生日』読了。文庫版で600ページ近い、分厚い短篇集。最初の六篇は、ル・グィンが創出したハイニッシュ・ユニバースに含まれる幾つかの惑星を舞台にしたもの。いずれも地球とはかなりかけ離れた設定でのジェンダーや恋愛のありようを巡る物語で、多分に実験的な要素を含んでいる印象だった。表題作の『世界の誕生日』はインカ帝国をモチーフにしたクラシックなファンタジーで、最後の中編『失われた楽園』は、世代交代型の巨大宇宙移民船での物語。個人的には最後の二篇がとりわけ心に残った。

三年ぶりの機種変

iPhoneを機種変した。12 miniから15 Plusに。ほぼ三年ぶりの買い替えになる。

画面が小型の機種から大型のものに一足飛びに替えた理由は、現行モデルでは小型の機種がないこともあるが、ひとえに、老眼の進行によるものだ(苦笑)。ほんの三年の間に、ずいぶん見えづらくなってしまって……。大型画面の機種は以前しばらく使っていたのだが、ひさしぶりに手にしてみると、あらまあ見やすい(苦笑)。なんだかそれだけでほっとしてしまう。

今日の午前中に届いたので、環境移行をした後、銀行系のアプリなど、認証の必要なアプリを一つずつ確認してセットアップ。昔に比べると格段にラクになったが、それでもそれなりに手間はかかる。夕方頃までに、どうにか完了。最新機種だけあって、さくさくきびきび、快適に動く。

今まで常に装着していたアップル純正のレザーケースが、環境負荷削減のためとかで廃番になってしまったので、時流に抗うレザー愛好家として(苦笑)、NOMADのModern Leather Caseを購入。かっちりした安心感のある造りで、とても気に入った。この後、国立商店さんのレザースリーブが出たらそれも併用する予定。

ささやかなことではあるけれど、ひさしぶりの機種変、やっぱり気分が上がる。

原稿執筆ぼっち合宿 2023


先週の月曜から土曜まで、安曇野に行っていた。原稿執筆ぼっち合宿、約一年ぶりの実施。

合宿の目的は、先月から始まった金子書房のnoteでの連載「流離人(さすらいびと)のノート」の次回以降の原稿を書きためるため。年末に出る予定の新刊の編集作業がこれから本格化するのと、それ以外の仕事もいろいろ予測できないタイミングで入ってきそう(実際、合宿中に複数の相談メールが入ってきた)なので、少し余裕のあるうちにまとまった時間を作って、集中できる環境で、何篇か書き溜めておきたかったのだ。

到着日の月曜と出立日の土曜を除くと、完全に執筆に集中できたのは火、水、木、金曜の四日間だったのだが、一日一篇のペースで書き上げていくことができたのは、我ながら頑張った方だと思う。日に日に疲労がたまっていくのは実感していて、帰京した昨日の夜は、ほっとしたのか、前後不覚に十時間以上も爆睡してしまった。

先週は台風などの影響で雨の降った日が多かったし、晴れたら晴れたで日射しがめちゃめちゃ暑くて、自転車を乗り回すのもしんどかったので、滞在中は近所のコンビニまで一日一往復する以外、まったくどこにも行かなかった。それでもまあ、山に近いだけあって、朝晩は涼しかったし、日中も窓を網戸にして扇風機を回せば、どうにかしのげる程度だった。食事は普段ほとんど食べないインスタント食品やレトルトカレーばかりだったが、それはそれで気分が変わって新鮮だったので、楽しくはあった。

今年のうちにあと数回分は書き溜めておくとして、その後、連載終了までの間に……たぶんまた、どこかのタイミングで、合宿せざるを得なくなりそうな予感はする。来年の春以降かな。さて。