「ボンベイ・ベルベット」

ありがたいことに年末年始の恒例となりつつある、キネカ大森でのインド映画特集上映。毎年10月に開催されるIFFJには、僕はタイ取材と重なる関係で参加できないので、大森方面には足を向けて寝られない(笑)。今回はまず、ランビール・カプールとアヌシュカー・シャルマが出演したギャング映画「ボンベイ・ベルベット」を観た。

物語の舞台は、独立後まだ間もないインドの魔都、ボンベイ。貧しい娼婦に育てられたチンピラのジョニーは、仲間のチマンとともに、スリや賭けボクシングでその日暮らしの日々を送っていた。ジョニーが酒場で一目惚れした歌手のロージーは、左翼系新聞社を経営するジミーの愛人となってしまう。「大物になる」ことを目指すジョニーたちは、裏社会に通じる資産家のカンバーターの手下となり、彼の野望の邪魔となる人物を次々と排除していく。殺したり、スキャンダルを盗撮したり、誘拐したり……。それらの見返りに、ジョニーはカンバーターの経営する高級クラブ「ボンベイ・ベルベット」のマネージャーとなる。そんな彼の前に、ジミーからカンバーター側へのスパイの役目を背負わされたロージーが現れる。ジョニーに雇われ、瞬く間に「ボンベイ・ベルベット」の花形歌手となったロージー。二人の関係、そして運命は……。

まるでアメリカのギャング映画を観ているような錯覚に陥るほど、細部まで凝った造りのスタイリッシュな映像と、ロージーの歌を中心としたジャジーな音楽。そういう要素は観ていてかなり楽しめたのだが、その一方で、ジョニーやロージーをはじめとする登場人物たちの内面描写が乏しい印象で、感情移入できる部分がなかなか見当たらず、「まあ、そういう末路を辿るのも仕方ないよね……」と思ってるうちに終わってしまった感がある。もうちょっと、何とかなったんじゃないかな、という。いろんな意味で惜しい映画だった。

ちなみにこの作品、インド国内では興行的にまったくふるわなかったそうだ。そこまでひどい出来とは感じなかったのだが、やっぱりかの国では、シンプルでわかりやすい映画が受け入れられやすいのかな、と思う。

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