インタビューに事前準備は必要か?

最近、自分のクライアントの担当者や同業者の知人から似たようなことを聞いたので、それについてつらつらと。

僕のようなライターが、仕事で誰かにインタビューをしてそれを文章にする時、取材前にはあらかじめ、相手についてある程度下調べをしたり、質問項目のリストを用意したりする。ところが最近は、そういう事前の下調べをあえてせず、アドリブの質問でインタビューをするライターの方も結構いるのだという。

個人的には、「事前準備もせずにインタビューするなんてありえない!」と頭ごなしに否定しようとは思わない。予定調和を排除してアドリブによるライブ感を重視したいインタビューなら、事前準備をしない方がいい場合もあるかもしれない。そのライターの方に卓越した実力(インタビュー術、文章力、その他もろもろ)があるなら、下調べなしのアドリブスタイルのインタビューをしてほしいという依頼も来るのかもしれない。ただ、僕自身のライターとしての今までの経験から言えるのは、世の中にあるインタビュー案件のうち、そういう類の仕事はほんのわずかだ。下調べをしていなければ相手はすぐ気付くし、気分を害する人も少なくない。ほとんどの場合、手抜きとしてしか受け取られないんじゃないかと思う。

じゃあ、とことん徹底的に前もって準備をして、インタビュー本番は計画通りに質問を重ねていけばいいのかというと、それもちょっと違う。あらかじめ決めた質問をするだけなら、誰にだって、機械にだってできる。大切なのは、自分は(あるいは依頼元は)なぜその人に会いたいのか、自分はその人に何を聞きたいのか、その2点をきちんと考えて、はっきりさせておくこと。それさえぶれなければ、予備知識や質問項目はいったんポケットに入れておいても構わない。インタビューでは相手の表情や言葉に全力で集中しながら、時には臨機応変に質問を変えたり、話の流れを微妙に調整したりして、自分が会いに来た理由を相手に伝え、自分が聞きたいことの核心を相手から引き出し、あわよくばプラスアルファの何かをつかみとることを目指す。それが良いインタビューの条件だと思う。

ちなみに、まだ駆け出しのライターの方は、事前準備はしすぎるくらいしておいた方がいい。その誠実さはきっと相手にも伝わるはずだし、たとえ途中でちょっとバタバタしたとしても、どこかで心の通じ合うやりとりはできるんじゃないかと思う。そういう経験を少しずつ重ねていけば、アドリブの質問なんて、そのうち意識しなくても自然にできるようになるはずだ。ぶっちゃけ、アドリブ自体は別にたいした技術でもないと思う。

あとは、ひたすら丁寧に原稿を書く。がんばりましょう、お互いに。

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