ラダックの本を読んでくれた方から、こんなことをよく訊かれるようになった。
「どの人も、すごくいい表情で笑ってますね! どうやって撮ったんですか?」
僕自身は、特別なことは何もしていない。使っているカメラやレンズも、撮影時のセッティングも、ごく普通のものだ。被写体になってくれたラダックの人々が、自分からいい表情をしてくれたから、たまたま撮らせてもらえただけだと思う。
あえて言うなら‥‥どんな場面でも、できるだけ相手とラダック語でコミュニケーションを取ってから撮影させてもらった、ということだろうか。
写真を撮る時は、いきなり相手にレンズを向けるのではなく、まず挨拶をして、自己紹介をして、ちょっと話をして‥‥それから「写真を撮ってもいいですか?」と訊く。「いいよ」と言ってもらったら撮らせてもらい、断られたらおとなしく引き下がる。ラダックにいる間、僕はそのルールをできるだけ守るように心がけていた。
いい写真を撮ろうとしてひたすらシャッターチャンスにこだわると、こうしたルールは守れない。でも僕は、相手に嫌な思いをさせてまで写真を撮ろうとは思わなかった。撮らせてもらえなかったら、それは仕方ない。それよりも、相手と言葉を交わしたことで残る記憶の方が大事だ。写真だけが旅の記憶ではないのだから。
あとは、写真を撮る時は自分も笑顔になること。これは自分ではまったく意識していなかったのだが、思い返してみると、相手が子供だろうが老人だろうが、いつも笑って言葉を交わしながら、写真を撮らせてもらっていたような気がする。自分が笑顔になれば、きっと相手も笑顔になってくれる。変に画作りやタイミングにこだわった写真より、相手と笑顔を交わしながら撮った写真の方が、いい写真になるのではないだろうか。


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