Days in Ladakh

「オロ」という映画

チベット人の少年を主人公にした、岩佐寿弥監督の映画「オロ」が、6月30日(土)の渋谷ユーロスペースを皮切りに、全国で順次上映されるそうです。マスコミ向け試写会のご案内をいただいたので、ひと足先にこの映画を観てきました。

現在のチベットをテーマにした映画というと、時に見るのが辛くなるほどの硬派なドキュメンタリーなのでは‥‥というイメージを持つ人もいるかもしれません。でも、この「オロ」は、そういったドキュメンタリーとは少し、いや、かなり違います。純粋なドキュメンタリーというわけではなく、しかしフィクションでもなく‥‥。あえて言うなら、一人の老監督が、チベット人の少年を主人公にした映画を撮る、という物語の映画でしょうか。こればかりは、実際に観てもらわないとなかなか伝わらないのですが。

六歳の時に家族と別れ、チベットからヒマラヤを越えてインドに亡命した少年、オロ。今はダラムサラにあるチベット子供村(TCV)で、同じチベット人の子供たちと暮らしながら勉強しています。奇を衒った演出やカメラワークは何もなく、スクリーンには淡々と、オロとその周囲を取り巻く人々の穏やかな日常が映し出されていきます。それなのに‥‥なぜか、時にうるっとしてしまうんですよね。何気ない台詞や、笑顔や、まなざしに。

スクリーンに登場するチベットの人々は、一人ひとりが、辛い過去や癒されぬ悲しみを抱えています。チベットで決死の覚悟でドキュメンタリー撮影を試みて投獄された夫の帰りを待つ、妻と幼い姉妹。一度は亡命に失敗して中国警察に捕まった友達の少年。オロ自身も、亡命の時にひどい目にあった記憶を抱えています。それでも彼らは、朗らかに笑いながら、そして互いに支え合いながら、それぞれの日常を生きている。その「生き抜く力」の強さが、ずしんと心に響きました。

今までチベットのことをあまり知らなかったり、何となく見聞きはしていたけど深く知ろうとはしなかった人に、チベットの人々の穏やかさ、あたたかさ、そして強さを知ってもらうには、とてもいい映画なのではないかと思います。また、チベット問題にずっと関心を持ち続けてきた人にも、自分自身のスタンスをあらためて確認する、いい機会になるのではないかと思います。

この映画の公開に先駆けて、6月16日(土)から22日(金)にかけて、「オロを知るためのチベット映画特集」という特集上映もオーディトリウム渋谷で開催されるそうです。「オロ」と併せて、みなさんの心の中に、チベットの人々のことが残るきっかけになるといいですね。

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