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2008年3月 Archive
チベットに、自由を!
「ラダックでは今、中国政府に抗議するハンガーストライキとデモが行われているよ」
チャダルをともに旅した友人のパドマ・ドルジェ君から、こんなメールが届きました。
中国によるチベット武力弾圧への抗議活動の輪は、今や全世界に広がっています。3月22日(土)には東京の六本木で、チベット・サポート・ネットワーク・ジャパン(TSNJ)が主催する抗議デモが行われました。在日チベット人の方々をはじめ、「チベット問題を考える議員連盟」所属の国会議員の方々も参加した、日本でのチベット支援活動としては過去最大規模のものとなりました。
僕もこのデモに参加‥‥というか、主催者関係の知人から急遽頼まれて、デモの隊列が乱れて車道にはみ出たりしないようにする誘導係として働いていました。というわけで、デモの写真は撮るヒマもありませんでした‥‥。写真を期待していた方、ごめんなさい。せっかく参加してくれたのにろくに挨拶もできなかった友人の方々もごめんなさい。
マスメディアの報道では、900人だったり2000人だったり、参加者数にかなりの開きがありますが、それも無理はありません。というのも、13時から三河台公園で行われた集会に集まったのはおそらく700〜800人程度だったと思うのですが、14時にデモがスタートすると、みるみるうちに人が増えていったのです。たぶん、14時のデモ開始時間に合わせて六本木駅に着いた人たちが、「あっ、もうデモが始まってる!」という感じでそのまま合流したからだと思います。飛び入り参加の人もいたのかな? 僕も誘導しながら、「あれっ? こんなに多かったっけ?」と訝ったくらいだったので‥‥。
デモの列は本当に長くて、先頭が西麻布の交差点に差し掛かる頃、最後尾は六本木ヒルズよりはるか先、麻布警察署のあたりでした。なので、2000人とは言わないまでも、NHKが報道した1500人程度というのが妥当なところだと思います。‥‥まあ、個人的には1万人の動員を目指していたので、ちょっと残念ですが(笑)。
「チベットに、自由を! チベットに、平和を!」
澄み切った空にひるがえる、赤、青、黄、白のチベット国旗。家庭用プリンターで印刷した小さな国旗、手作りの横断幕、プラカード‥‥。そんな人々の列が、どこまでも、どこまでも、途切れることなく続いていました。抑圧に苦しむチベットの人々を、何とかして助けたい。一人ひとりからその思いが伝わってきて、見ていて胸が熱くなりました。
デモの様子は、以下のニュースサイトが詳しく報道してくれています。
Free TIBET! チベット弾圧に抗議するデモの現場(オーマイニュース)
http://www.ohmynews.co.jp/news/20080322/22415
「中国はチベット弾圧を止めよ」2千人が抗議のデモ(JanJan)
http://www.news.janjan.jp/world/0803/0803223377/1.php
同じことは、このブログの前のエントリーに寄せられた数多くのコメントにも言えます。読んでいただければわかると思うのですが、どのコメントにも、チベットの人々への心からの同情とやさしさが込められています。デモに参加できなくても、その思いは確実に届いていたはずです。
みなさん、本当にありがとうございました。
でも、これで終わりではありません。チベットのための抗議活動は、これからも根気よく続けていかなければ、何も変わらないまま終わってしまいます。
署名活動やデモなどの具体的なアクションについては、TSNJがサイトや専用のメーリングリストで告知していく予定だそうです。
チベット・サポート・ネットワーク・ジャパン
http://www.geocities.jp/t_s_n_j/index.html
チベット問題に関心のある方は、これらのアクションのほか、チベットに関するニュースや話題、気になったことなどを、一人でも多くの人に伝えてください。また、ブログなどでチベットについて思ったこと、感じたことを書けば、それは必ず誰かに伝わります。そういうクチコミでチベット問題への関心の輪を広げていくこと。それが今、僕たちにできる一番効果的な活動だと思います。
ただ、一つだけお願いしたいのは、決して中国の人々に憎しみをぶつけてはならないということです。怒りを爆発させて相手を蔑んだり口汚く罵ったりしても、自分自身を貶めるだけです。相手の非を冷静に指摘し、こうしたらいいのにと提案する。そのささやかな積み重ねこそが、多くの人々からの賛同を伴った動きに繋がっていくはずです。
すべては、チベットの人々の自由のために。
チベットのためにできること
チベットで騒乱が発生して以来、マスメディアは連日トップニュース扱いで事態の推移を報道しています。テレビや新聞やニュースサイトがこれだけチベット一色に染まるというのは、ちょっと記憶にありません。そうした報道を見ていると、僕はどうにもくやしくて、やりきれない思いにかられます。
あれだけの血や涙が流されなければ、チベットの人々は、ほかの国の人々に思い出してももらえなかったのだろうか? もっと以前から、もっと頑張って、自分たちがチベットの現状をほかの人に伝える努力をしていれば、もしかしたらこんな悲惨なことが起こるのを防げたのではないだろうか?
これから先、チベットでは中国当局による粛正の嵐が吹き荒れるでしょう。徹底的な情報統制を行う一方で、刃向かうチベット人に対しては容赦ない弾圧を加え、すべてをダライ・ラマのせいにした後で、涼しい顔をして北京オリンピックを開催する。それが彼らの目論見です。
ミャンマーの騒乱の時は動いた国連も、常任理事国である中国に対しては、有効な策は何も打ち出せないと思います。日本政府に至っては、中国の機嫌を損ねるのが怖いのか、騒乱に対する遺憾の意はおろか、コメントすらろくに出していません。胡錦濤の来日も予定通り受け入れるようです。
正直、何もかもが絶望的な状況です。でも、だからといって、ここでチベットの人々を見捨てるわけにはいきません。僕たちには、まだチベットのためにできることがあります。
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あの写真の少年は誰?
ラダックのメインバザールの目抜き通りには、亡命チベット人が経営するチベタン食堂がたくさんあります。その店内に入ると、たいてい、この少年の写真を使ったポスターが貼られていることを覚えている人は多いのではないでしょうか。
「あの写真の男の子は誰なの? "返せ!"って書いてあるけど‥‥」
彼の名は、ゲンドゥン・チューキ・ニマ。1989年4月25日、チベットのナクチュ・ラリという地方に生まれました。お父さんはクンチョク・プンツォク、お母さんはデチェン・チュードゥンという名前だそうです。
1995年5月14日、6歳の時、ニマ少年は人生の大きな転機を迎えました。当時インドのダラムサラに亡命していたダライ・ラマ14世が、彼をパンチェン・ラマ11世と認定したからです。
パンチェン・ラマとは、チベットにおいてダライ・ラマに匹敵する重要な存在の高僧です。ダライ・ラマは観音菩薩の化身ですが、パンチェン・ラマは阿弥陀如来の化身とされています。輪廻転生が信じられているチベットでは、パンチェン・ラマもダライ・ラマと同様、先代が亡くなると、占いに基づく調査によって発見された転生者が次のパンチェン・ラマとして認定されるのがしきたりでした。そこで選ばれたのが、ニマ少年だったのです。
ところが、その3日後、ニマ少年とその両親は忽然と姿を消しました。ダライ・ラマ14世によって認定されたニマ少年=パンチェン・ラマ11世の存在が邪魔だった中国当局が、彼らを拉致してしまったのです。その一方で中国当局は、ギェンツェン・ノルブという6歳の少年が本当のパンチェン・ラマ11世であると一方的に発表。以来、ノルブ少年は中国当局の傀儡として、パンチェン・ラマとしての役割をあてがわれています。
中国当局がニマ少年の拘留を認めたのは、翌1996年のことでした。その理由は「ニマ少年はチベットの民族主義者によって誘拐される可能性があるから保護している」というものでした‥‥。以来、ニマ少年の消息はまったくつかめていません。
その存在が邪魔であれば、6歳の少年でも拉致してしまう。今年、北京オリンピックを開催する中国というのは、残念ながらそういう国なのです。
3月14日、チベットの首都ラサでは、政治犯として拘留されている僧侶の解放を求めた僧侶たちによるデモが武装警察によって鎮圧されたことをきっかけに、大規模な暴動が起き、多くの死傷者が出ました。現在北京に駐在している産經新聞の福島香織記者は、ラサの知人などから得た生々しい情報を自身のブログにアップされています。
国を奪われ、100万人以上の同胞が殺され、それから50年近くも占領され続けているということ。ダライ・ラマの写真を持っているだけで逮捕されてしまう社会で生きていかなければならないチベットの人々の悲痛な思いは、察するに余りあります。
僕たちにできることは、それほど多くはないのかもしれません。でも、一番よくないのは、こうした事実を聞いても「へー、大変だねー。でもまあしょうがないよねー」と、ものの10分で忘れ去ってしまうことです。もし、少しでも心にひっかかるものがあったなら、一人でもいい、誰かほかの人にこのことを伝えてあげてください。そうした一人ひとりの小さな積み重ねが、チベットの人々にとって力となるはずです。
いつの日か、メインバザールの食堂の壁から、あのポスターが剥がされる日が来ることを祈ります。
ラダックの音楽
- 2008年3月10日 02:03
- 雑記
そういえばこのブログでは、ラダックの人々が日頃どんな音楽を聴いているのかということについて、まだ書いたことがありませんでした。今回一時帰国する前に、レーの街で何枚かCDを買ってきたので、ここでご紹介したいと思います。

まずは「アリヤトレ」というアルバム。ラダックやザンスカールで歌い継がれてきた、素朴で懐かしいメロディの民謡が収録されています。伴奏は笛と太鼓だけという超シンプルな構成。ボーカルは男性と女性で、半分はデュエットソングです。
このアルバムで一番よく知られているのは、タイトル曲の「アリヤトレ」でしょう。ザンスカールに古くから伝わる曲だそうで、僕の手元にあるラダック語の教本に載っていた歌詞の英語訳によると、こんな感じの歌です(間違ってたらごめんなさい)。
夏の高い峠に広がる美しい草地
草とパルの花のかぐわしい匂いが満ちている
ヤクや山羊や羊たち、大きな群れ、小さな群れ
バター、ミルク、バターミルク、チーズ、日々の糧
おお、我が友よ、25頭の!
登れ登れ登れ、我が友よ
下れ下れ下れ、我が友よ
今ほど幸せな時はない、我が友よ
お前たちが幸せでなければ、人間も悲しむだろう
おおらかでほがらかで、今でも聴いてるとついつい「アリヤトレ〜」とサビを口ずさんでしまいます。ラダックの伝統的な歌のCDを買いたいと思っている方は、このアルバムを選べばまず間違いないでしょう。

では、今時のラダックの流行曲ではどんなCDがあるのかというと、以前このブログでも紹介したメイド・イン・ラダックの映画「ミクチュ」のサントラが人気のようです。演奏には電子楽器も使われていますが、メロディは優しくてのびやかで、とにかく耳に残る。ラダックでローカルバスに乗ると、このアルバムに収録されている曲が大音量でガンガン流れてくるので、完全に脳内に刷り込まれちゃうんですよね。だから、ラダックにしばらく滞在したことのある人なら、このアルバムを聴くだけでローカルバス気分が味わえます(笑)。
どちらのCDもアマゾンとかでは扱っていないので、現地で買うしかないと思いますが、もし機会があれば、ぜひレーのCDショップで探してみてください。ラダックのいい思い出になると思います。
旅人たち
- 2008年3月 6日 15:50
- 雑記
ラダックで冬に予定していた取材を終え、飛行機でデリーに飛んだ日のことです。
去年の秋、ラダックで知り合った友人のえみさんが僕とほぼ同じタイミングで帰国するということで、その日の夕刻にパハールガンジで落ち合って、最近日本人旅行者の間で人気のオクラ丼を食べに行きました。いや〜、まじでうまかった。
3カ月ぶりにたっぷりと野菜を食べて、フゥ〜ッと満足していると、近くの席に坐っていた日本人の男女が近づいてきて、
「もしかして‥‥山本さん?」「‥‥あぁ!」
僕が2002年の年末年始にモロッコに行った時、フェズからマラケシュまで道連れとなって一緒に旅した、ひとしさんとゆみさんのご夫婦でした。6年ぶりに、しかもインドで再会するとは‥‥。さらに驚いたことに、ひとしさんとゆみさんは、えみさんとも2年前にネパールで会っていたのです。ものすごい確率の遭遇でした。
モロッコで会った時、彼らは新婚旅行で世界一周の旅をしている最中でした。「また旅に出たんですか?」と聞くと、「いえ、あれからずっと続いてるんです‥‥」との返事。長っ! 間違いなく、世界最長の新婚旅行。モロッコでゆみさんは「ドラクエ8が出たら日本に帰ろうかな」とか言ってたけど、もうすぐ9が出ますよ‥‥(笑)。
1時間後にはデリーを離れなければならないという彼らと別れた後、えみさんは僕に「あの二人、すごくいい感じですよね〜!」と言いました。まったく同感。長い旅を続けていると、とかく疲れて無気力になってしまいがちなのですが、彼らには、少しも擦り切れている様子がありませんでした。120カ国以上を回っている経験を少しもひけらかすことなく、自然体で、のびのびと旅を楽しんでいる。モロッコで知り合った時よりも、さらにカッコイイ旅人になっていました。
振り返ってみると、去年から今年にかけてラダックで知り合った日本の旅人たちは、みんなカッコよかったなあと思います。忙しい仕事の合間を縫って旅している人、仕事を辞めて長い旅をしている人、バイトで金を貯めて旅している学生さん‥‥。それぞれがさまざまな思いを抱えながら、みんな、言葉も文化も価値観も何もかも違う異国の世界に、決して壁を作ることなく、自らの身を浸して任せることを心から楽しんでいました。ほかの国の旅行者と比べても、日本人にはそういう旅人が多かったと思います。
いつかまた、世界のどこかで、そんな彼らと再会することがあるかもしれない。僕もその時までに、擦り切れることなく自然体で旅を楽しめる人間になれたら、と思いました。
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